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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
推理は挽歌を奏で
49/78

2―15

いつもありがとうございます!

side:榊原 真由合


あれから1時間程が立って、美鈴の瞼が動いたわ。やっと、お目覚めね、眠り姫の。もっとも、やんごとなき血を引く美鈴は、世が世なら、確実に名家のお嬢様として、暮らしていたかもしれないから、姫というのも、あながち嘘ではないのよね。

因みに、寝る時に、あたしが美鈴の眼鏡を取って、三つ編みもほどいたわ。ちょっと、ほどけていたから。


「美鈴っ!」


雅さまが身を乗り出した、まさにその時。美鈴は、パチッと目を覚ましたと同時に、勢いよく起き出したの。勿論、そこには雅さまが身を乗り出して居る訳で・・・・。


ーーーーーゴッチン!


見事なまでの、音が鳴り響いたわ・・・。


「っ~~~~~~~~~!?!?」


「う~~~~~~~~~~!?」


何を漫才してるのよ、雅さま、美鈴。呆れてしまったのは、仕方ないでしょ?

ぶつけた張本人の美鈴は、頭を押さえて、布団に倒れ込むし、雅さまも、額を両手で押さえて、うずくまっているし。はぁ、見ていて飽きないわ、本当に。


「大丈夫ですか? お二人とも・・・」


心配そうに二人に問う清流院さんも、突然の事にオロオロしてるし。滅多に見せない情けない顔に、こっちが驚いたわ。


「すいません・・・一体何が・・・?」


寝起きでよく分かっていないらしい美鈴は、突っ伏していた体を起き上がらせつつも、やっぱり痛いのか、右手で頭をしっかりと押さえている。長い髪の隙間から、涙目の美鈴の綺麗な顔が出てきて、同性のあたしでさえ、ちょっと、ドキッとしたわ。無理矢理、視線を雅さまに向ければ、案の定かしら? 顔を真っ赤にして、固まっている、雅さまが。まぁ、両手で額を押さえているから、ちょっと、間抜けだけど。

・・・・・寝起きで、涙目で潤んだ瞳。更には、寝かせる為に、あたしがほどいた、さらさらした長い髪が、妙な色気を見せていて。あらやだ、変な扉でも開きそうだわ・・・。

ふと、やけに静かだと思って、チラリと清流院さんを見れば、ん? 妙な体制で固まっていたわ。美鈴を見たまま。正座のまま立とうとして、立ち膝で、手も中途半端にさ迷わせたままで、固まってるわね。

美鈴の美少女っぷりは、伊達ではないわね(笑)

とはいえ、このままというのも、不味いのよ。美鈴は、眼鏡を外してるから、人を直接見るのは、大変危険なのよ。今は動転して気づいてないみたいだけど、本来の美鈴の目は、見えすぎてしまう。それこそ、大気の流れや、霊力の流れ、体に至るものまで、かなりの物が見えてしまう。

ーーーーーそれこそ、本人が気絶するまで。


「美鈴、痛いのは分かるけど、眼鏡を着けなさい」


あたしに指摘されて、ようやく気付いたみたいで、美鈴は慌てたように、眼鏡を探してるわ。直ぐに、枕元に見つけたようで、下を向いて手慣れたように眼鏡をかける。まぁ、これで大丈夫でしょう。いきなり気絶されたら、こっちが大変だもの。

そんなこんなが落ち着く頃には、清流院さんがやっと我に返ったみたいね。


「お二人とも、良ければこちらへ」


キョトンとした美鈴と雅さまが、彼を見ていたわ。同じ表情で(笑) 彼は二人に近付くと、二人の額に手を当てる。何をするつもりかしら? まぁ、危ない事はしないでしょうし、そこは安心してるから、任せられるんだけど。


『痛いの痛いの、飛んで行け~』


「ブッ・・・」


ごめんなさい、予想外のものだったから、吹いちゃったわ(笑) でも、効果は抜群だったはずよ。力が動いた気配がしたから。


「・・・痛くない?」


「もしかして、言霊ですか?」


驚いている雅さまは、気付いてないみたいね。美鈴は流石というべきかしら?(笑)


「えぇ、直ぐに痛みは引きますよ」


穏やかに答えてるけど、神道の彼が、痛いの痛いの、飛んで行けって・・・・! 端から見てる側のあたしには、ツボになりそうよ! 真面目な顔で、言うんだもの。まぁ、効果は確かだものね。ギャップが凄いけれども。


「さて、美鈴、貴方の夢の話、そろそろいいかしら?」


話を戻さないとね。美鈴が居なくなってから、起きるまでに見た、夢を話してもらわないと。大体、美鈴の夢にヒントがあるから。バカに出来ないのよ、夢は。


「あ、そうでした!」


まぁ、起きたらいきなり衝撃が走ったんだから、仕方ないかもしれないけれど。雅さまも、清流院さんも、勿論あたしも、美鈴の話を聞く姿勢である。


「えっと、確か皆さんと居た後、私だけが違う場所に呼ばれたんです、そこには椿の精霊さん達が沢山いて、私に教えてくれたんですーーーーーあれは警告だと」


美鈴の口から出た言葉が、予想以上に深刻なもので、この場の空気が自ずとピンと張りつめたものになっていく。


「警告とは、穏やかではないですね」


清流院さんがスッと目を細める。なまじ、普段が穏やかだけに、それだけでも妙な迫力があるわね。


「でも、お寺の方へ向けた訳ではないみたいです、ここには見える人がいませんから」


えっ、それって・・・・・。


「私達へ向けての警告でした、椿の精霊さんが言ってました、『夜姫に気を付けて』って、怯えながら」


美鈴からの言葉。けれども、この場では、あり得ない程の威力を持つ、その、気を付けての警告。あたしの顔が、一瞬で強ばったのが分かる。向かい側にいる、清流院さんも、あたし同様に、顔が強ばっていたわ。この場で知らないのは、雅さまと、美鈴だけ・・・。

二人にはまだ、早い話だわ。術者の中にも、知らない人が多いくらい、でも、知ってる人は、知ってる話。まさか、美鈴の口から聞くとは、思いもしなかったわ。


「夜姫・・・? 椿の精霊が怯える程の存在かぁ」


雅さま、申し訳ありませんが、この話は長くしない方がいいでしょう。夜姫の名は、力を持ちます。何度も語るなんて、もっての他!


「じゃあ、色が変わっていたのは、警告なのね? 何かが起きるとか、天変地異の前触れとか、違うのね?」


「はい、椿の精霊さん達が、そう言ってました、あの場では、私が呼びやすかったみたいで」


苦笑いしてるのを見ると、あっちで何かあったわね??


「他に夢は見た?」


何ともなしに聞いた、ただ、話題を反らす為の会話。なのに、何でかしら? 何か、ざわざわするわ。何か、不安があるような、そんな。あたしの内心も知らず、美鈴は素直に考えていたわ。


「うーん? えっと、曖昧なんですけど、雅くんの夢を見ました」


「・・・えっ? 僕の?」


「「・・・・・」」


あぁ、胸のざわめきは、これだったんだわ。清流院さんも、多分、気付いていて黙ってるわね。あたしが、話題を反らした事に。まぁ、その結果、更に変な方向に行っちゃったけど。


お読み頂きまして、ありがとうございます。読了お疲れ様でした!

霊感探偵で、大事な事がやっとこさ、繋がったお話です。

前々から出ていた、夜姫様がようやく登場!


これからも宜しくお願い致します!

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