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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
推理は挽歌を奏で
46/78

2―12

side:神戸 美鈴


あの不思議な空間で、椿の精霊様達と話していたら、いつの間にか意識が遠退いて、何故か私は知らない場所を歩いていました。どこまでも、どこまでも続く、雪の道を。

寒いはずなのに、それすらも感じる事なく、ただ、歩いているのです。

夢、なのでしょう。間違いなく。

私は知らぬ間に、どうやら何かに触れてしまったのかもしれません。

過去にも似た経験があり、家族に大変心配された経験があります。あの時は、3日程、意識が戻りませんでした。無事に戻った時は、家族が号泣していました。


「ここ、どこでしょう?」


気付けば、いつの間にか、知らないお宅の前に居ました。夢だからか、少しぼやけている気がしますが、立派な日本家屋のお屋敷です。


すばる~! かわいぃ!』


何やら、聞き覚えのある声ですが、残念ながら、こんなに明るい音色では聞いた事がありません。


「雅・・・くん・・・?」


声がした方に足を進めたら、明らかに、見た事がある、顔立ちの子供がいました。私が知ってる姿よりも、更に幼いですが、間違いなく雅くんです。揺りかごには、多分、雅くんの弟か、妹が入ってるのでしょう。揺りかごを覗き込みながら、上機嫌で揺りかごを揺らしています。


『おかぁしゃん! 昴、かわいぃよ!』


『そう、良かったわね』


優しい音色の、女性の声がしました。雅くんに気をとられて、もう一人居たことに、気付かなかったみたいです。女性は、母親なんでしょう。顔立ちは見えませんでしたが、黄色のスカートが見えました。

外では雪が降っているのに、雅くんたちは半袖などの服装から、恐らく、中の季節は夏なのかもしれません。


「雅くんの過去に来ちゃったのかしら?」


何故、外が雪なのかは、分からないけれど、間違いなく、家の中は幸せで穏やかな空気が流れていて。今の雅くんに、重ならない、過去の雅くん。


「・・・・・幸せそう」


笑顔で溢れた雅くんと、家族の団欒だんらんがそこにはありました。お父さんは、顔が見えないけれど、雅くんが大切な事は、端々に見えているし、本当に楽しそうです。

なのに、それに相対するかのように、外には雪が降っています。空を見ても、しんしんと降る、真っ白い雪は、止む気配を見せません。辺りを全て、白く染めあげていきます。


「何で、雪なのかしら・・・?」


分からないけど、雪は何かのキーワードなのかもしれません。気付けば、家の中の皆さんの服装も、いつしか夏から冬へと変わっています。その頃は、不思議と雅くんは一人で居る事が増えていました。


『昴、大丈夫・・・?』


多分、昴という子が体調を崩したんでしょう。雅くんは、心配そうに、部屋を見ていました。でも、母親の様子も、何だかおかしく感じました。優しい声音に変わりはないのですが、何と言うか、雅くんを避けているような・・・・・。


『・・・・・居なかったら』


え・・・?

ふいに聞こえた声に、ゾッとしました。背筋が冷えました。間違いなく、雅くんの母親の声だったのですから。そこにあるのは、優しさや愛しさではなく、暗い、憎しみや妬み、そんな感情でしたから。母親が息子に向ける感情では、ないでしょう。


『昴が・・・・・を継げるのに』


それを聞いて、気付きました。あぁ、この人は、昴さんの母親ではあっても、雅くんの母親ではないんだなぁと。こう思うのは、多分、雅くんへ向けての、彼女の感情が、余りにも暗いものだったからかもしれません。

と、急に、場面が変わりました。

まだ、空からは雪がしんしんと降り続いています。辺りを白く、白く、染め上げる雪。私の手に降った雪は、体温であっさりと雪の結晶は溶けて、水滴になります。

ぼんやりと空を見ていたら、家が騒がしい事に気付きました。何人もの人の、慌ただしい声に混じって、雅くんの名が聞こえました。


「えっ? 雅くん・・・!?」


そこは、この家の庭なんでしょう。雪で白く染まった庭に、黒い塊がありました。いえ、それが雅くんだと、すぐに分かりました。赤い、何かが、辺りに散らばっているのも・・・・・。大人たちが、悲鳴を上げながら、雅くんを助けようと、動いていました。雅くんは、意識がないようで、血混じりの咳をしています。

私の目は、雅くんに黒い何かが覆い尽くそうとするかのように見えます。そして、その黒い何かは、家の中から、漂って来ていました。


「・・・・もしかして、呪い・・・なの?」


何て黒く、禍々しいのでしょう。こんなのを、子供に向けるなんて!! 憤りと、何も出来ない悔しさで、手を握りしめます。ここは夢、これは過去に起きた事で、私は干渉する事が出来ません。分かってはいても、それでも、思わず手を伸ばしてしまいます。


「雅くんっ!!」


大人の人に抱えられ、家の中に入る雅くん。その辺りから、雪が激しくなり、前が見えにくくなっていきます。途切れ途切れに、彼の姿と、そして僅かに、女性の金切り声が聞こえました。恐らくは、何かがあったのでしょうが、吹雪となりつつある今は、何も見えません。

雪は更に激しくなり、足元すらはっきりしません。拒絶されたのかもしれません。前にも、弾き出された事があります。ここは夢、夢だからこそ、持ち主の気持ちが反映されてしまいます。

多分、夢なので、起きると忘れてしまうのでしょうが、とにかく今は何とかしないといけません。吹雪は更に、激しさを増しています。


「一体・・・」


どこにいるのか、既に自分でも分からない状態です。はて、困りました・・・。



◇◇◇◇◇


side:竜前寺 雅



気を失った美鈴を、まさかそのままという訳にはいかないから、お寺の一室をお借りして、僕らは美鈴が目を覚ますのを待っていた。


「雅さま、美鈴なら大丈夫ですわ」


僕を安心させるように、真由合さんは言ってくれるけど、流石に安心は出来ないよ。ご厚意で、お布団を敷いて頂き、美鈴は今、そこに横になっているけど、起きる気配はない。


「起きるよね、美鈴」


不安になって、美鈴の手をギュッと握りしめる。お願いだから、早く起きて、美鈴! 不安で不安で、落ち着かない。


「落ち着いて下さい、雅くん、君も本調子ではないんですから」


清流院さんが、僕をたしなめるようにいうけど、一言余計だった。


「ーーーーーそれはどういう意味かしら?」


真由合さんの右の眉がピクリと動いた。せっかく気付かないように、話題をふらないようにしてたのに! 真由合さんは、過保護なんだよ!? もしバレたら、どうなるかは、押してしかるべし。


「えっとね? 真由合さん、これはその・・・」


何とも言えず、視線をさ迷わせる僕に、益々、真由合さんの視線が厳しいものになる。言い訳も出てこない・・・・。


「見れば分かりますよ、雅さま・・・発作が起きたのですね、しばらく祓いをしていませんでしたから」


不味い、物凄く不味い・・・。真由合さん、怒ってる。


「真由合さん・・・」


あまりに怖くて、名前を呼ぶと、何故か真由合さんは、どこか諦めたような、そんな顔だった。あれ? 怒ってるはずじゃ?


「最近は、美鈴がいたことで、我々も気を抜いてしまったのです」


確かに、僕は美鈴の側に居たからか、最近は体調が良くなっていたし、体も軽く感じてた。だから、忘れていたのは、本当で。

でも、真由合さん、思い詰めるというか、自分を責める必要はない。


「大丈夫だよ、僕なら、大丈夫」


「雅さま・・・」


だって、美鈴に出会えた。これが運命ならば、きっと。



ーーーーー希望があるって、思えるじゃないか。



読了お疲れ様でした。

最近は、この霊感が書きやすいのか、スラスラいきます。調子がいいのかも?

他にも書いてるんですが、中々進まないのが、ネックですね。スランプなんでしょうか?


よし、次回も頑張ります!

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