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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
推理は挽歌を奏で
44/78

2―10

長らくお待たせ致しましたー(スライディング土下座

今週から再開します。


side:榊原 真由合



あの、ビックリ発言の後、御住職は仕事を真面目にしていると聞いて安心したらしい。あたしは未だに、驚きが抜けないけどね!

白木聖樹と、御住職が祖父と孫の関係って。世界は狭すぎるわ。なら、なおのこと。今回の騒動には、孫ならくるもんじゃないの?


「あの子は、ここには来ませんからなぁ」


ポツリと、寂しげに語る和尚様。あら? もしかして、顔に出ていたかしら・・・?


「あの子の母親は、聖樹が小学生の頃に亡くなりましてな・・・墓は訳あって此方にあるんですよ」


えっ? 普通は、嫁いだ以上、聖樹の実家に埋葬されるんじゃないのかしら?


「・・・・・聖樹には、見える力があるでしょう? 最初は、ご主人も彼方に埋葬する予定だったそうなのですが、まだ幼いあの子は、霊になった母に必死に話しかけていた・・・父親としては、やるせなかったでしょうなぁ」


死者は、あの世に行く事が決められているわ。長く現世に留まれば、曖昧な存在になってしまう。それこそ、闇に囚われてしまうかもしれない。


「だから、此方に埋葬したんです、ここには聖樹が一人で来る事は叶いませんからな」


英断かといえば、そうは言えないだろう。母親を奪ってしまった罪悪感は、父親達に残ってしまったのだから。


「まだ、聖樹は子供です、母親は必要でした・・・しかし、再婚となったときは、聖樹も年頃になっておりましてなぁ、念願の弟妹が出来ても、複雑だったようですが」


・・・・・かなり、ナイーブなお話になってきているのだが、あたしはどうすべきなのかしら? 下手な口出しは出来ないわよ!?


「・・・聖樹が大学生になったとき、あの子がフラりと来ましてな、お墓で長い時間、娘と話していましたよ・・・・・お別れを、したんだと言っていました、恐らく、成仏したんでしょうな、娘は」


こちらからは、背中しか見えないけど、きっと和尚様は憂いを持った顔をしていることだろう。言葉が、あたしは見つからなかった・・・。


「それから、聖樹は少し変わりました、継母である女性とも上手くやっているようですし、弟妹も可愛がっていましたし・・・父親とは、まぁ、それなりにはやっているようです、何より、貴殿方の勤める場所に行ってからは、楽しそうで安心したんですよ」


それは・・・・・。理由を察し、微妙に生暖かい視線になった。そりゃあ、楽しいだろう。女の子が居る場所、なんだから。聖樹は、女の子が大好きな御仁だもの、ね。特に最近は、美鈴に御執心だもんねー。まーったく、これっぽっちも! 相手にされてないし、気付かれてすらないゆえに、あたし達も手を出す必要はないから、生暖かい目で、見守れるんだけど。


「これからも、聖樹を宜しくお願い致しますね」


「・・・・えぇ、勿論です」


少しだけ、答える時に間があったのは、仕方ないとも思うの。ここ、山道なのよ。息がきれるのよ、本当に! ちょっとだけ、間があったのは、偶然よ、偶然!


「おぉ、付きましたよーーーーーあれが、この寺で二番目に古いと言われる、椿の古木ですよ」


ご住職が見上げた先に、それはあった。

見上げる程の大木がそびえたっていた。椿の花が満開に咲き誇り、爽やかな風が吹き抜けていく。風には椿の香りが乗り、華やかな印象を受けたわ。


「これが・・・」


圧倒されて、しばらく動けなかったわ。見上げたそこには、太陽の光を枝に受けて、木漏れ日が優しく差し込んできていて、本当に綺麗だわ。赤い椿の花が、幻想的な空間に見せているの。


「凄いでしょう? 倒れた木は、既に半分ほどが枯れていましたからな・・・ですから、この木が元気で、私共も安心しているんですよ」


どこか穏やかに語る和尚様の言葉も、どこかぼんやりと聞いていると、辺りが急に静かになる。先程まで聞こえていた、風に揺れる音が、全て聞こえない。


「何?」


思わず身構えると、気付いていない和尚様が不思議そうに、あたしを見ていた。


「どうされました?」


力の無い和尚様には、感じ取れない何かが、起きたのは分かったけど。こういう時、龍崎がいたらと思ってしまう。彼は今、本家に呼ばれての仕事中。無い物ねだりは駄目よね。


「いえ、気配が変わったものですから、つい癖で構えてしまったのです」


「気配、ですか・・・?」


不思議そうな和尚様に、安心させるように、笑顔で答える。彼は力が無い只人。心配させる必要はないだろう。


「危険なものではありませんわ、ご安心下さい」


穏やかに会話が終わったその時、空気が揺れた。激しい物ではなく、静かな部類に入る、僅かな振動。思わず、辺りを見回した私は、とある一点で、目を見開いたわ。


「えっ・・・美鈴・・・?」


椿の大木、この空間で、現存する一番古い椿は、やはり只の古木でふ、無かったらしい。いきなり上空から、少女が横たわった状態で、ゆっくりと降りてきたんだからーーーーー。最初は透けていたのに、地面に近付くにつれて、ハッキリと見えてくるのだから、もしかしたら、別の場所に居たのかもしれないわね。何だか、光と相まって、美しい光景だったわ。

ただ、この場には、和尚様も居るわけで・・・・・。突然表れた少女に、固まっていたわ。だ、大丈夫かしら?


「これは、一体・・・」


唖然としてる和尚様には悪いけど、美鈴をそのままにしておけないのよ。地面に横たわった美鈴は、一見しただけなら、無傷。変な奴を連れてきた訳でもないし、ただただ、気を失って眠っている状態。思わず、肩から力が抜けたわ。

無事で良かったわ~・・・。この子に何かあったら、間違いなく、この子の血縁者全員が何らかの行動を起こしそうで怖いわ。只でさえ、警察一族の血縁者だし、おばあ様は、あの旧家で厄介な神楽院の出身。どちらもバカに出来ない権力者の一族よ? これで普通に暮らせているんだから、意味が分からないわよ。

いや、力があるから、普通ではないわね・・・・・。でも、危険に合うと分かっていながら、美鈴はうちの事務所に所属しているのよね。


「和尚様、美鈴を連れて戻りますので、また案内をお願いできますか? この子は、あたしが背負いますわ」


「わ、分かりました・・・あの、お嬢さんは大丈夫なのですか?」


「えぇ、大丈夫ですわ、気を失っているだけです、休ませれば直ぐに元気に目を覚ますはずですわ」


華奢な美鈴なら、あたしでも背負う事は可能だし、反則技だけど、式神に支えてもらうつもりよ? あたしも女性ですからね? はぁ、つくづく、龍崎がこの場に居ればと思っちゃうわ。まぁ、下に行けば清流院さんがいるから、バトンタッチするつもりよ。雅さまが不機嫌になりそうだけど、見た目10才の子供に、高校生の少女が背負える訳がないもの。


「そうですか、分かりました、帰りはゆっくりと参りましょう」


和尚様を先頭に、あたし達は無事に美鈴を回収し、元の場所へ戻る為に歩き始めたのだった。さてさて、美鈴は一体”何“を話してくれるかしら? 今から楽しみだわ。



◇◇◇◇◇


side:夜姫



暇じゃ。とにかく暇じゃ。

最近は仕事は単調なものばかりで、詰まらない。野彦も、忙しいのか、頻繁に側を離れていく。

うん、暇じゃ。


「ん?」


何かが感覚を伝わってくる。あまり良い物では、ないようじゃのぅ。こういう時の勘とは、よく当たるもの。


「はて? 邪魔が入ったかのぅ? これは、ふむ」


あまり強くは邪魔できないが、良い暇潰しになる。あそこは、地の力が強い場所故に、出来る事は限られるのが痛い。しかし、我が名を呼んだ者がいるからこそ、道が繋がったみたいじゃ。名を呼ぶ行為は、力があればあるほど、慎重になるもの。悪きモノを呼んでしまうかもしれないからじゃ。


「あそこの精は代替わりをしておったのぅ・・・しかし、あまり触るとわらわの方が痛手を被りそうじゃのぅ」


まぁ、暇潰しゆえの事。出来る範囲でやればよい。


「野彦め、もう少し顔を出さぬか・・・」


また、暇になってしまうではないか。はぁ、暇じゃ。退屈じゃ。何か面白い事はないものかのぅ?


長らくお待たせ致しました。

作者の秋月煉です。

夏の忙しさも、ようやく落ち着きました。ホットしました。やっと、やっと! 書けます!

ゆっくりペースですが、これからも宜しくお願いします!

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