4
次回は只今、必死で筆者中です!
目を覚ました時、辺りはまだ暗く、携帯の時計を見たら、朝の4時過ぎで、起きるには早い時間でした。私は、見慣れない天井を見ながら、先程の夢を思い返していました。
私が視たのは、恐らく何かを占める暗示でしょう。神様が出て来た時には、流石にヒヤリとしました。
―――――――神様に嘘はつけませんから。
左右に寝ている二人が起きたら、説明しなくてはいけないでしょうね………………。質問責めにされそうで、今から心配です。
そういえば、今日は雅くんと龍崎さん、和葉さんが山に入るそうです。そこは、途中まで道があるそうですが、残りは山道だとか。大人二人はまだしも、雅くんは大丈夫なんでしょうか? 子供にはキツいと聞いていますが……………。
「目が冴えてしまいましたか…………」
考え事をしていたら、見事に目が冴えてしまいました。二度寝は無理ですね。時間は5時をようやく過ぎた頃。仕方ありません、起きてしまいましょうか。
起きて直ぐに、日課の眼鏡を掛けようとして、私の目が、ソレを映します。
―――――――血走った眼と、視線がかち合います。
目を見開いて、悲鳴を上げようとして、けれど声が絡まったように出ませんでした。
「―――――っ!」
確かここには、和葉さんの結界があったはずです。なのに、なんでここに…………!!?
「っ……ま……」
お二人を呼ぼうにも、怖過ぎて上手く口が動きません。ソレが居るのは、私達が寝ている場所の、足元です。ロフトへ続く階段の手すり、そこに絡まるように居ます。
右手を必死に伸ばして、真由合さんを揺すります。体が恐怖でガチガチに固まっていますが、今はそれどころではありません。アレは、危険過ぎます。あまりにも、危険なモノです!
「…ん?……何よぉ?……………今、何時だと…………っ!? 美鈴!? ちょっ、どうなってるのよ、これ!?」
「……っなの、知りませんよ!!!」
真由合さんの剣幕に、今まで出なかった声が思いっきり出ました。なんでしょう、かじかんでいた体が動きます。
「和葉おこしなさい!!」
「は、はい!」
凄い剣幕の真由合さんに、背筋がピンと伸びました。朝は真由合さんが弱いので、不機嫌の度合いはいつも以上であると、こんな危機的状況下なのに、思ってしまいました。
「ったく、結界張ったって言ったじゃないのよ!」
黒い影のようなソレは、ただじっと私を見ています。まるで、真由合さんが目に入って無いように感じます。真由合さんのお陰で、私は無理矢理、ソレから視線を反らす事が出来ました。御守りが無い私は、見入られたら動けませんから。視る事に特化した私は、護身程度の力しか持っていません。すんなり起きてくれた真由合さんには、本当に感謝しかありません。あのままでは、命の危機でした。
「あたしを無視とか、随分なヤツねっ!! 吹っ飛ばそうかしら?」
起こそうと動いた私は、背中に聞こえた物騒な発言に、思わず感謝の言葉が飛んで行きそうになりました。彼女が味方で、本当に良かったです。広範囲殲滅型が得意な真由合さん、まさかここで、それを使いませんよね!?
「和葉さんっ、起きて下さいっっっ!!」
必死に揺すりますが、中々起きない和葉さん。熟睡し過ぎです! 寝付きはよいと聞いてましたが、いくらなんでも緊急事態には、素直に起きて下さい。泣きたくなって来ました……………。
「和葉さんっ、和葉さんてばっ! お願いですから、起きて下さい!!」
先程よりも強く揺すって、ようやく、和葉さんの意識が浮上してきました。後少しです!
「……んにゅ?…………みしゅじゅちゃ……?…………はう?」
「寝呆けてる場合じゃ無いですっ!! 緊急事態ですぅぅぅ―――――!!!」
可愛らしい寝呆けた姿に、頭がこんがらがって来ました。真由合さんが足止めしてくれていても、アレは本当に危険なんです! お願いですから、和葉さんも早く起きて下さい!!
「きんきゅう…………? はえ? 緊急!? え、美鈴ちゃん!?」
ようやく起きてくれた和葉さん、これなら大丈夫でしょう。アレ相手では、私はお荷物決定なので、少しでも邪魔にならないように、後ろに下がります。
「結界張ったのよね!? 何でこんなやつが居るのよ、和葉っ!」
「え!? 私にも分かりませんよ!! 結界は今も張られてますし、異常は無いんですよ!?」
お二人もパニック状態ですが、流石というべきか、プロの二人は、すぐに体制を整えます。
『臨、兵、闘、者、皆、陣、裂、在、前!』
真由合さんが、素早く早九字を切ります。黒い影のソレに、九字が直撃した瞬間、この世のモノとは思えない、地の底から響き渡るような、そんな絶叫が迸ります。思わず耳を塞いだ私は、片隅で震えている事しか出来ません。
更に、今まで感じなかった、肉が腐ったかのような臭いまで、漂い始めます。口元を袖口で押さえ、喉に上がる物を必死で我慢します。気持ち悪いです。
『消臭』
咄嗟に、和葉さんが臭いを消してくれなかったら、危うくリバースするところでした。悪臭が漂う時点で、コレが危険であると分かりますが。
「ありがとう、和葉、本当に便利よね〜」
「どういたしまして、ところでコレはどうします? 浄化には、かなりの力を使いますよ?」
「そうよね〜………美鈴、あんたコレの弱点か何か、分からないの?」
いきなり真由合さんに問われ、仕方なしにソレを視ますが、モヤモヤした霧状のソレ。目だけが、血走った人間のモノです。改めて視ると、本当に怖いです。
「……………“目”だけが、実体に近いようです」
力の流れは、目が一番強く、核の役割のようです。アレを壊せば、実体を取れなくなるでしょう。
「なら、壊すわよ? 和葉」
「了解です、真由合さん―――――美鈴ちゃんは、下がっててね」
和葉さんに言われなくても、そうするつもりです。お二人は、私の事情を知ってますから、私を戦わせる事はありません。戦えない事が、大変申し訳ないのですが、事情により戦えないので、こればかりは仕方ないです。今の私に出来るのは、ただ大人しく、邪魔にならない事ですから………………。
「早九字が効かないとなると、和葉、あの目を狙える?」
「行けますけど、お宅に被害が出そうで………………」
二人が渋っているのは、力の余波の事でしょう。霊を退治する退魔法は、確かに霊にしか効きませんが、大きな力を使えば、仕方なしに余波が出て来るのです。例えばそう、力の余波を狙って、悪質な霊が寄って来る場合があるのです。昔、教えて下さった方が、気をつけるようにと、口を酸っぱくして言っていたので、覚えていました。
「一時的に結界を張っては?」
逃げられる事も、余波が行く事もありませんから。私の言葉に、真由合さんはパチンと指を鳴らしました。
「ナイスアイディア! 美鈴、あんたはそこに居なさいよ?」
「あれは私達で、何とかしますから」
お二人共、大変格好良いのですが……………パジャマ姿である事、忘れてますね。でも今は、そんなお二人が、頼もしく感じます。
『錬成、木石』
強い霊力が、和葉さんから迸ります。それは和葉さんの右手に集まると、親指サイズの、丸い緑色の石になります。
「相変わらず、不思議な力よね〜」
感心してる真由合さんも、すぐに行動します。柏手と共に、印を組むと、凛とした口調で、唱え始めます。とはいえ、残念ながら、私には真由合さんの唱えている呪文は、聞き取れませんでしたが……………。
「皆さんっ、ご無事ですか!?」
「美鈴っ! 真由合さん、和葉さん! 大丈夫!?」
階段下から、声がします。残念ながら、私からは見えませんが、階段下の近くに、龍崎さんと、雅くんが来てるようです。
「龍崎っ! こいつ倒すから、そっちに逃げないようにして!」
「っ…………分かりました」
少し間がありましたが、声は真面目な響きです。恐らく、現状を把握されたのでしょう。雅くんが、心配になりますが、仮にも陰陽師。心配は失礼でしょう。
『―――――禁制し奉る!』
真由合さんの言葉と同時に、この辺りに不可視の結界が張られます。かなりの強度が、私の目で視ると分かります。
『木石よ、力を放ち、彼のモノを絡み取れ!』
次は和葉さん。先程作った石が、ヤツの眉間の辺りに、突き刺さります。と、同時に、緑色の光がヤツの体を包み込み、すっぽりと覆い隠してしまいました。とはいえ、この世の物とは思えない、悲鳴のような声だけは、辺りに響いています。もう此方は、震えが止まりません! この声だけで、心臓が弱い人は死んでしまうような、そんな不気味な悲鳴が、未だにあがっています。
「ちょっと、ここで倒すのは無理みたいなので、石に封印します」
和葉さんは、そのままヤツの所を見ると、ただ一言。
『封印』
一瞬で、緑色に光っていたヤツの姿は消え、代わりにそこには、黒く光る石が一つ、ポツンと落ちていました。皮肉にも、ちょうどそこに、朝日がキラキラと顔を出したのでした。
「終わりましたよ、これは私が預かっておきますね」
石をハンカチに包み、しまい込んだ和葉さんの行動で、ようやく、ホッとしました。気付けば、恐怖で体が固まっていたようで、ホッと力が抜けてた拍子に、足から力が抜けてしまいました。
怖かった…………ただ、その一言に尽きる、朝からハードな恐怖体験でした。
お読み頂き、本当にありがとうございますm(__)m
ちょっとはヒヤリとか、来ましたか? 色々と起きて来ましたので、謎は深まったはず?です。
次回は、只今、必死で執筆中ですので、もう少しお待ち下さいませm(__)m
勿論、感想はいつでもお待ちしております!