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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
前奏曲は怪異と共に
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やっと終わりが見えてきました!!

次回は誠意執筆中です。何卒、見捨てるのだけは、ご容赦下さいませ!

Side:竜前寺 雅


和葉さんの言った事は、僕の目の前にあった思考の霧を、見事に晴らしてくれたんだ。

ずっと違和感を感じていた。でも、それが何なのかが、分からなかったんだけど、指摘されてようやく分かった。

”種”だ。

あれは、瘴気等の力を吸収し、満腹になると発芽する。とても特別な物だ。今、育成しているのは、日本では早乙女さんの家のみだ。海外には、未だに数家の家で保存、育成がされているそうだが、詳しくは知らない。そんな貴重な物をここに持ってきてる彼女には、驚きしかないけれど、それで助かっているのも事実なのだ。

それが、吸わない、目の前の怪物。それがまさか、張りぼての囮とは思わなかった。力を別の所から送られているんだから、本体は別にあり、そして、和葉さんが見つけた小さな祠。間違いなく、何か曰くがあるはず。


「さっさと、終わらせましょう・・・?」


そう呟く和葉さんの顔は、笑っていても術者の顔だった。妙に迫力も感じたしね。という事は、彼女はこの場の終息の仕方に気付いたという事。石霊師の力を持つからこそ、なのかもしれない。


「囮には、そのまま皆さんで足止めをしてもらいましょう」


「えっ? 僕らでするんですか?!」


流石に、顔が引きつった僕に、彼女は意味ありげに笑う。にっこりと。


「あら、早乙女さんにお願いするんですよ? そのまま吸ってもらいましょう、本体を・・・・・足止めには、彼らだけで十分ですもの」


それは実力を認めているからこその、自信なんだと思う。いくらなんでも、普通だったら絶対にやらないとさえ思う。僕だって、言われて気付いたくらいだしね。


「あら、面白そうな会話してるじゃない?」


・・・・・いつから聞いてたんだろう。直前まで気配とかしなかったのに。それに、なまじ美人なだけに、目が笑っていない笑顔は、とてつもなく怖い。つくづく、彼女たちが見方で良かったと思う。敵にだけはなりたくない。


「ウフフ、流石、早乙女先輩! さあ、この案件に幕引きしましょう?」


「ええ、勿論よ!」


笑顔である。笑顔での会話なのに、薄ら寒いものを感じてしまうのは、気のせいではないはずだ。僕は貝になろう。ここでは、今だけこれが正解のはずだから。


「美鈴さんは・・・、柊君がいるから大丈夫ね」


ちらりと美鈴と柊さんを見て、あっさりと信じた。信頼関係が強いんだと思うけど、多分、本当に大丈夫なんだと思う。美鈴の周りには、強固な結界が張られてるしね。柊さんの腕は確かなんだ。


「さてと、雑談はこれくらいにしておいて、本体には我らの種の餌になってもらいましょう?」


にこりと微笑む姿に、一瞬にして、僕の本能とも呼べる場所が、警鐘を鳴らす。背筋にじわっと汗が浮かんだ。何度でも言おう。この人が味方で本当に良かった!!


「さあ、魔法樹の種よ、そなたの力となる目の前の物を喰らいなさい!」


早乙女さんの合図と共に、先程から瘴気の霧を吸い込んでいた種は、その威力を一気に増し、空気中に漂っていた瘴気は、あっという間に薄くなっていく。それに、これにより瘴気がどこから湧いていたのかも、ようやく分かった。あの化け物がいた場所を囲むように掘られていた溝。そこからだった。そして、もう一か所。


「あら、やっぱりあっちは囮だったのね?」


早乙女さんが、目をスッと細める。それだけで、僕はいいようのない恐怖を感じた。味方とはいえ、迫力が違う。


「石霊師くらいでしょうね、これに気が付くのは」


和葉さんの言葉には、色々と込められてるけど・・・・・、視線が怖い。なまじ、二人とも系統の違う美女なだけに、迫力がある。睨まれてるのは、例の小さな祠。そして、瘴気のもう一か所の出所。恐らくだけど、こちらの瘴気を隠すために、あちらにも大がかりに瘴気を放出したんじゃなかろうか。まさに原理は、木を隠すには森の中・・・だと思う。

種は瘴気だけでは満足しなかったようで、祠に狙いを定めたのか、そこから何かを引きずり出そうとしているみたいだ。まるで種が意思を持っているかのように、極上の餌を逃がすまいと、先程よりも更に力を吸い込む力が高くなる。

と、祠の石が、ピシッピシッと音を立て始め、更には無数の亀裂が入っていく。まるで逃げ出そうと足掻くかのように、持ちこたえようとする祠だが、次の瞬間。一瞬にして全ての場所に亀裂が入り、中から何か黒い丸いモノが飛び出してくる! 僕が慌てて印を組もうとしたけど、それは和葉さんに止められた。


「大丈夫ですよ、これで終わりです、本当に」


そう優しくすらある言葉に、先程の黒い丸いボールみたいな物を見る。そこから動かないように見えるが、実際は種が吸い込もうとしているのに抗っているように見える。でも、それも長くは続かなくて、種は容赦う黒いモノを吸い込んでいく・・・・・。


「これはいい餌が手に入ったわね♪」


どことなく嬉しそうな早乙女さんはともかくとして。未だに喰らい続ける種は、一体どれほどの食欲を見せるのか。最後の黒いモノを、チュポンという音と共に、喰らいつくした種は、次の餌を決めたらしく、早乙女さんと共に、未だに音が重なる場へと向かっていく。とりあえず、これで終わりかと、ようやく肩の力が抜けた。あちらは囮とはいえ、それなりに力はあるようなので、種もそれなりに満足してくれるだろう。

あれを吸い込めば、本当に終わりなのだから。

とはいえーーーーー。


「まだ、かかるかな?」


なんせ、囮となった化け物は、未だに動いているのだ。恐らくは、どちらかがダメになっても、大丈夫なようになってるんだろう。囮よりも先に、本体が倒されるパターンはあまりないと思うけど。囮は未だに、抵抗を続けていて、三人とも、本気でやってるからこそ、こちらには気付いてすらいないんじゃないかな?

だとしたら、早乙女さんの動きに、三人ともが付いていけない訳で・・・・・うん?

あの特殊な場となってる場所に、囮は分かる。一番奥で、人間の心理的に、あれがラスボスに見えるだろう。まあ、実際は、囮なんだけど。で、本体が消えたら普通は消えるはずの囮が、未だに元気に動いているのは多分、誰かがそうなるようにしていたんだと思う。

それまではいい、それまでは。

つまり、本体が倒されても、実は囮が本体になる、とか??

・・・・・まぁ、囮だろうが、本体だろうが、関係ないだろうし。何せ今は、早乙女さんが嬉しそうに敵に向かっているんだから。

勿論、種にとってのご馳走という意味で。


「何か、嬉しそうなんだよなー・・・」


思わず腰が引けるくらいには、僕は近寄りたいとは思わない。それに、美鈴や柊さんに何かあったら困る! 護衛は必要だよね? あっちは皆さんに任せようと思う。未熟な僕では役に立たないだろう。立派な理由がある以上、近寄らなくとも済む。

・・・・・あぁ、お日様が懐かしい。



◇◇◇◇◇


Said:椎名 和葉


驚きました。まさか、あの本体をあっさり吸い込んでしまうなんて。

それほどに、この種は強い力を秘めているってことですから。私たちは、とんでもない方を味方に引き込んだようです。

本体を吸い込んだ種が次に選んだご飯・・・もとい獲物は、囮となっていた化け物でした。驚きました、だって、先程は一切、吸い込もうとすらしていなかったんですから。


「面白い仕掛けだと思わない? 和葉」


早乙女さんの問いかけにも、私は頷く事すらできませんでした。先程から、三人の一流の術者が、反響を使った術を展開しているのに、まったく化け物には効いていなかったのですから。


「ウフフ、流石に囮ともなれば、ここの特殊な場を使う術に対して、対策されていてもしかたないわよね?」


あっ・・・・・だから、この術が効いてない?

本当に昔、ここを使っていた術者は、優秀ではあったんでしょうが・・・・・未来の事まで考えて居なかったんでしょう。

私達、術者として生きる者は、先々の事も考えて行動するように、教育されます。あの日まで、術者としての道を歩んで居なかった私でさえ、祖父や両親から、そうあるように教育されていました。気づいたのは、最近ですけれど。

今だから分かります。昔の術者さん達の自分勝手な負の遺産です、これは。それが何の因果か、今に生きる私達が対処することになったのです。

後は早乙女さんが、最後の幕を下ろすだけです。

ふと、視界の端に、祈りを捧げる美鈴ちゃんの姿が映りました。彼処だけが、何だかこの場で、一番神聖な場所に見えました。それに、柊さんの舞は、久方ぶりに見ましたが、相変わらず美しくて。

もうすぐ終わる今回の事件に、そっと胸を撫で下ろしました。無事に終わると。

どうも、秋月煉です。

いつもこの作品を読んで頂きまして、本当にありがとうございます!

ようやく終わりが見えてきました!

もう少しですが、宜しくお付き合い下さい。

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