表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
前奏曲は怪異と共に
31/78

31

お待たせしました!

え? 待ってない!? ・・・み、見捨てないで~

地下洞窟で、ようやく私たちは、元凶の元へたどり着きました。

それは、凄まじいまでの瘴気を身にまといながら、石で出来た石室から、ゆっくりと姿を現しました。まるで久方ぶりの外を謳歌するかのように。


「あら、随分と力を持ってるわね・・・」


先程まで、余裕があったはずの皆さんの顔が強ばって、真剣なまでに敵に集中しているのが分かります。眼鏡をかけてない私には、まるで地獄の門番が起き上がった気がしました。それだけ、纏う瘴気、放出する瘴気、気配、全てが今まで出会った何よりも異質なまでに、強力だったのですから!


「雅様、美鈴の側に・・・申し訳ありませんが、我々では守れないとご了承下さい」


今まで、私を支えてくれた手が、すり抜けて行きます。その顔にあるのは、覚悟を決めた、術者の顔でした・・・。


「護衛は、私が致しましょう、前衛は無理ですから」


「・・・お願い致しますわ」


穏やかに、護衛をかって出たのは、柊さんでした。儀式の帰りだからでしょう。神主さんが来ている、白い着物に青い袴姿でした。恐らく着替えなかったのでしょう。こういう衣装もまた、力を持つことがあるそうですから。


「お前ら、気、抜くんじゃねーぞ」


あれほどまでに、強気でやる気だった龍ヶ崎さんでさえ、敵から目を離してしません。恐らく、私が一番のお荷物でしょう。私が居なければ、その分の力を皆さんは使えるんですから。


「美鈴、不安なのは分かるよ・・・・だから、祈ってて、皆が無事であるように、そして無事に倒せるように」


雅君の言葉に、正直、落胆したのは本当です。私は足手まといなんだと、改めて突き付けられた気がしましたから。-----祈るしか出来ないのなら、全力で行いましょう。それしか、私には出来ないのですから・・・・・。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇


Side:竜前寺 雅



正直、ここで出会うとは思わなかった。蠱毒とは、多くの霊を閉じ込めて競わせて、初めてそこで術を展開し、方向性を与えるもの、だから。

これは、最後の部分が違う。最初から術を与えて、蠱毒に仕立て上げたもの。だからこそ、永遠ともよべる、長い時間を、ずっと競わせる事ができる。これは、外には出れないが、外からは入り込むことが出来る。つまり、外から新たな餌がくれば、それと戦い、取り込み、更に強くできるのだ。-----永遠に。

まったく、過去のこの一族は、何がしたかったのやら。これを使って、この地を守ろうとした・・・・・は、流石に無理がある。逆にこれに、此方が喰われるだろう、すべてを。これはそんなものである。


「美鈴、不安なのはわかるよ・・・・だから、祈ってて、皆が無事であるように、そして無事に倒せるように」


真由合が、支えていた美鈴の手を放して、前へと進んだ。それは、覚悟を持ってのことだと思う。コレと戦うなんて、例えるなら、しょっぱなからラスボスにいきなり立ち向かうようなものだと思う。

でも、多分だけど、龍ヶ崎さんは、美鈴のアレを知ってるから、わざわざ来たんじゃないかな? こんな危険と呼べるような、そんな場所に。

視線を美鈴に向けると、不安そうな顔が、覚悟を決めたような意思のあるものに変わった。この場所の境界線である、溝の手前に向かうと膝をついて、願いを込めるように、一心不乱に祈り始める。多分、本人だけが気付いてない。目を閉じて、一生懸命に祈っているから。

先程まで、ほんの僅かにしか流れてなかった霊脈の力が、一気に活性化し始める。こちら側の皆さんが驚いてるけど、美鈴の姿を見て、納得できてしまったあたり、皆、美鈴の事、理解してる証拠だと思う。

アレは気付いてないみたいだけど、この場所はアレを出さない為の特別な地形の場所。閉じ込める為の檻だ。

これを作った理由は知らないが、こんなものがここにあると困るのは、おそらく次に来る霊脈を動かす為に派遣される者たちだろう。お国が抱える術者たち。彼らは公務員でありながら、此方の力を扱う者たちだ。国がバックにいる以上、下手をしたら僕らよりも権力を持ってる場合が多い。正直、仲は良くないかな。あそこは、色んな一族の者達が所属してるから、一族での団結はないかわり、協力体制はできてる。個人的な依頼は、どちらにも出来るけど、国に関わる事には申請が必要なんだよね。今回の霊脈のように。

しかし、ここで出会うとは、思わなかった。

こんな、正真正銘の化け物、怪物に。正直、美鈴に祈るように言って正解だったと思う。こんなのを長時間見てたら、普通の感覚を持つ美鈴には耐えられないだろう。

一言で言えば、腐乱死体。肉が残ってる死体・・・が、一番、近いんじゃないだろうか。僕や柊さん、美鈴よりも前に居る大人たちは、皆一様に顔をしかめているし。


「さて、まどろっこしいのは、苦手でね・・・先手はもらうぜ!」


先に仕掛けたのは、龍ヶ崎さん。異様な怪物に対し、萎縮することなく、お札を指に挟むと、何か呪文を唱えていく。残念ながら、ここまで聞こえなかったから、何を唱えたのかは分からないけれど。


『・・・悪鬼を燃やせ、急急如律令!!』


気合と共に、札を放つと、札は怪物に見事に命中し、怪物は火に包まれていく。流石、といえる、先手だ。が、怪物は微動だにしないどころか、燃えてすらいない・・・?? これには、龍ヶ崎さんも眉間に皺がよった。


「火がダメなら、こういうのはいかがです?」


次は和葉さん。彼女が掲げたのは、透明よりも、やや黄色みを帯びた親指サイズの宝石。


『光明、この場の悪鬼に対し、聖なる光を与え給まえ!』


石霊師は言霊を操るのを得意とする一族。更には、和葉さんは、その中でも最強と言われる石を扱う術者だ。力も何もかもかもが、規格外の強さを持っている。

実際に、和葉さんの手元から放たれた光は、辺りの瘴気を一瞬で浄化して、化け物へと向かっていく。かなりの威力である。


『グギャァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーー』


この世のものとは思えない、瘴気が含まれた声は、和葉さんの放った力のほとんどを消し去り、僅かな光が届いただけ。それも、この化け物には、まったく効いていなかった。これには、龍ヶ崎さんの舌打ちが聞こえた。その声は、僕らの方にまで、影響があったけど、届く前に何かに衝突して終わった。

僕が出来るのは、美鈴の護衛だけ。いくら成長して、力が増えても、未だに未熟な僕が入るには、ここは危険すぎることくらい、僕だって知ってる。柊さんが、静かに、場を観察していたけど、ちゃんとここに、僕らの為の結界が張られている。これくらいは、彼には朝飯前だろう。神道の血を色濃く継いだ秀才なんだから。


「あれ?」


でも、今の攻撃を防いだってことは、この攻撃は有効なのかも。多分、前で戦っている彼らも、違和感に気付いたはずだ。彼らの目に、闘志が感じられたから。


「巫女の祈りは場を癒す、ですか・・・ふむ、神子舞でもしましょうか・・・雅さん、結界は張ったままにしますから、護衛をお願いしても?」


唐突な柊さんの言葉に、ついつい、目前の戦いから視線を逸らしてしまう。


「えっ? 分かりました?」


とはいえ、和葉さんの攻撃で、どういった攻撃が効くかは分かったのだろう。前衛の者達は、連携をしつつ、攻撃を始めている。そして、疑問符ながら頷いた僕の後ろ、それなりの広さのある場所で、柊さんはどこからともなく、神子舞に使う榊を取り出し、手に握られていた。曲のない、ただ舞うだけの神子舞。

それでも、これには意味があるんだと、見ていて気付いた。


「龍脈が・・・」


美鈴の祈りで活性化した龍脈、それがどういった意味を持つのか、分からなかったけど、やっと気づいた。これは、結界としてだけでなく、この場の術者に力を与えてることに、巫女舞は、それらに方向性を持たせていたのだ。そして、美鈴にも。


「敵わないや・・・」


成長しても、やっぱり遠い。僕に出来る事は、とても少ないのに、これから先、出来るようにならないといけないものが沢山あるんだ。


「皆・・・」


その後に続く言葉は、声にすらならなかった。



◇◇◇◇◇



一心不乱に祈っていたら、何だか、声が聞こえた気がしました。とても小さくて、とても、儚い・・・そんな声。何を言ってるのか、どうしても気になりましたが、私の優先は祈る事。

それでどれだけ力になれるのかは分かりませんが、この場の力が、私の祈りと共に、寄り添うように力を増していくのが分かりました。

あの小さな声は、いつの間にか消えていたけれど、代わりに近いところから、応援されているような、そんな暖かい力を感じて。それがとても気持ちよくて、益々一生懸命にみんなの為に、祈ります。


・・・・・それにしても、あの小さな声。誰かの声に似ていたような?

お読み頂きありがとうございます!

ようやくここまで来ました。ラストへ向けて、前進していきますが、果たしてこの化け物は倒せるのでしょうか??

秋月の全力で挑む所存です。皆様を恐怖の世界へお招きしたく。

次回も宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ