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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
前奏曲は怪異と共に
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次回は誠意執筆中です。


「おかえり…………え、美鈴!? どうしたの!?」


悲鳴みたいな雅くんの声に、朦朧とした意識が、少し浮上します。拠点としているログハウスに戻った頃には、私は一人では歩けない程になっていました。面目無いのですが、恐らく力の使いすぎによる、反動みたいな物でしょう。


「申し訳ありません、雅様、少し目を離した隙に、無茶をしたようで………………」


丁寧に謝る真由合さんは、先程の粗雑さ等、微塵も伺えません。仕える相手を前に、きちんと部下としての姿で居ます。


「とにかく中へ…………龍崎! 美鈴を運んで!」


確かに、体格的に私一人を支えられても、運ぶ迄は女性の彼女には無理でしょう。なんて、考えていたら、ふわりと体が浮かびました。


「きゃっ!」


驚いた拍子に、小さな悲鳴が口から漏れます。腕に抱えられたこの姿勢は、まさかの乙女の憧れ、お姫様抱っこです……………。違う意味で、意識が遠退いたのは、仕方ないはずです! だってお相手は、冷たい印象ながらも、大人の男性であり、尚且つ美形な訳で……………頭が恥ずかしさで、沸騰しそうです。具合が悪いため、暴れられないのが辛いです。泣いていいでしょうか?


「龍崎さん、待って下さい…………」


落ち着きを取り戻した場は、椎名和葉さんの固い一言で、再び緊迫感のある空気に戻ります。


「どうしたの? 和葉、貴方がそんな声で止めるなんて………」


真由合さんも驚いたような、戸惑ったような、そんな声です。


「美鈴ちゃんの御守りに、穢れが見えます、このまま中へ入るのは、中に穢れを入れる事になりますから、御守りは外して下さい、私が処理しますから、念のために美鈴ちゃんにはお祓いを」


その言葉に、ヒヤリとしました。反射的に、左手に着けたブレスレットを見ます。今の私は、眼鏡をかけているので、全く気付きませんでした。普段なら気付くでしょうが、残念ながら今は、何も感じません。


「確かに、僅かに穢れを感じますね……………あまりに弱い為に、気付くのが遅れました」


龍崎さんでさえ、手で触れて気付いた程の僅かな穢れ。それを気付いたのですから、石霊師である彼女もまた、一流の術者なのです。

私の御守りは、あっさり和葉さんの手によって外され、私は真由合さんによって祓いを受けました。……………荒々しかったのは、ご愛顧でしょう。私はその後、ロフトスペースまで運ばれ、早々と休む事になりました。


◇◇◇◇◇


Side:椎名和葉


美鈴ちゃんが、家に入ったのを確認し、私は彼女から預かった御守りを、近くにあった一抱えある石の上に、そっと置きます。


「何か、良くないモノを、宿してしまいましたか」


美鈴ちゃんは、相当危険な事をしたのでしょう。僅かと言えど、随分濃い穢れです。私達、石霊師は、石に関する物に、とても敏感です。美しい石に宿すのは、強い力。私達、石霊師は生まれながらに、自分の石を宿します。私は、宿す石の中でも、もっとも強い力を宿す、(はく)を持って生まれました。

とはいえ、レントゲンに映る訳ではありません。初めて出した石で、力は決まるのです。昔は色々ありましたが、それも過ぎた事。先輩方は既に、一人前として方々で活躍しています。私も先輩方の顔を潰せませんからね! 頑張りますよ。

さて、言葉に力を込めます。


『石よ、聖石よ、その中に宿りし穢れを現し給え!』


本来、石霊師には、呪文は存在しません。なので、言葉に力を込めて、言霊にして使います。

私の言霊に反応し、石に取り憑いたモノが、ゆらりゆらりと陽炎のように昇りながら、姿を現します。


「…………っ」


喉に逆流しそうな物を、我慢します。

現れたのは――――――人の生首。

恐らく、かなり昔の霊でしょう。既に肉は腐り始めていますし、何より、頭のちょんまげが、何時の時代かを雄弁に語っています。


「申し訳ありませんが、お引き取り願いますね」


霊は、此方に気付くと、威嚇のようにシャーッと声らしき物を上げます。まあ、馴れてしまうと、全く怖く無いのですが…………。いえ、普通の方は怖いでしょう。

想像してみて下さい。

―――――ボサボサに伸びたざんばらな髪は、一部に結っていた後が残っており、血走った窪んだギラギラした目、切られたであろう首からは、ダラダラした赤黒い血がとめどなく流れ出る……………。肉は腐り始めていて、黄ばんだ歯は牙のように尖り、異様さを見せています。

私は悪霊を睨み付けつつ、鼻で息を吸い込みます。自分で作り上げた石を構え、言霊を放ちます。


浄化(きよめ)!』


言葉と同時に投げた石は、意志を持つかのように、悪霊の額に命中し食い込みます。と同時に、悪霊がこの世の者とは思えない絶叫が迸ります。


遮音(しょうおん)!』


あまりの声の高さに、私は直ぐに音を消します。石は色々と使えますから、便利ではありますが。


「小物相手に、石を大量に使いたくないのですよね〜」


なんて言っているうちに、浄化は完了しました。石に触れた場所から、白い砂のように崩れ、光に変わっていきます。うるさかった音も、消えていました。さて、場を浄化して、私も中で休みましょうか。御守りは朝日に当たる場所に置いておけば、大丈夫でしょう。一番の浄化方法ですからね。


◇◇◇◇◇


Side:榊原真由合


全く………、美鈴はやらかしてくれたわ。お陰で収穫もあったけど、あたしの背筋が本気で冷えたわ。今は、女性陣が泊まる場所に決まった、ロフトスペースで一足早く寝ているわ。明日には回復するでしょう。力の使い過ぎでしょうから。でもこの家、本当に広いわね。ロフトスペースなのに、3人寝ても余裕があるくらい広いんだもの。


「雅様、申し訳ありません、私が付いていながら…………」


これは私のミス。でも、あのお嬢様には、いい経験になったはずよ。視る事に特化した一族だからこそ、それ以外は弱い美鈴……………。本当に、無事で良かったわ。


「今回は、美鈴のミスであって、真由合さんの所為じゃないよ――――――とはいえ、屋敷の中に悪霊が大量発生って、偶然じゃないよね」


雅様は、前半は私に向けて優しく、後半は考え込むように下を向いてしまう。既にこの方に仕えて、何年も経ったけれど、雅様に関わる問題は、まだ解けてさえいない。歯がゆいのは仕方ないでしょう。どれだけ努力しても、どうにもならない事が、この目の前にいる小さな方に、起きてしまったんだから。


「雅様、実は………あの屋敷の外には、一切の悪霊が居ないのです、弱いのも、浮遊するモノも、一切いませんでした」


「え? そんな事、あるの? 普通、山中なら、それなりに居るはずだよね?」


雅様の言うとおり、この場所のように、森の中にあるならば、多少の霊がいるはず。でも、ここにはまったく居ないの。まるで………、まるでそう…………。


「あの屋敷に、呼ばれてる…………?」


私の呟きに、雅様は難しい表情で考え込んでしまったわ。と、扉が開く音がして、和葉が入って来た。彼女が来たと言う事は、無事に祓い終わったんでしょう。ふんわりしてても、彼女は強いもの。この若さで一流って呼ばれてる一人なんだから。


「明日、やっぱり源流を調べに行こう……………残りのメンバーは、カメラの確認をお願いします、美鈴は明日は安静にさせてね、絶対に無茶するだろうから」


最後、美鈴の話になったら、どこか楽しそうに見える雅様の姿に、ホッとする私が居たわ。雅様は、あの日から、笑顔を忘れてしまったから……………。


「今日は解散しよう、明日は忙しいからね」


こうして、かなり濃い一日は、終わりを告げました。


◇◇◇◇◇


とても、とても深い霧が、辺りを覆っていて、私は真っ白以外、何も見えません。


「ここ、どこでしょう………?」


私は、確かロフトスペースに寝ていたはずですが、いつの間に、外に出たのでしょうか? まったく覚えがありません。


「あら、あれは…………?」


濃い霧の視界の中に、何故かポッカリと見えるそれは、巨大な岩のようです。大人5人が手を繋いで、一周出来る程の幅があります。残念ながら、高さは霧の所為で、ハッキリとは分かりません。でも大切に祭られているのか、岩にはしめ縄が付けられています。そして、下には水が流れていました。そういえば私、いつの間に裸足になったんでしょうか?


「黒い……水…?」


岩の下を流れる水は、何故か黒いまま流れて行きます。でも、湧き初めは、綺麗なまま。途中で、黒く変わっているのです。

そこを、変わり目となる場所を、よく見ようとした瞬間、ゾワリと背筋が粟立ちます。自分の中の力が、視てはいけないと言うかのように、体が強ばります。


『―――――娘、そこに長く居るのは良く無い』


と、何も無い所から声がして、そちらに反射的に、顔を向けます。そこには、不思議な光が、漂っていました。


「今の声は、貴方様ですか?」


その光は、とても優しくて、何だか恐れ多い気がするのです。悪いモノとは、真逆の、そう。聖なる力。


『我は、ここに祭られている、地する神じゃ、夢とは言え、話せる者が来た事、我は嬉しく思うぞ』


「お、お会い出来て光栄です、神様」


優しい光に、慌てて頭を下げました。神様は、大切にしなければいけないのです。尊い方々ですから、彼らは。


『ふむ、今時、珍しく行儀の良い娘だ……………そなた、アレをどうみる?』


アレ、とは、あの境目にいるモノの事でしょう。気が付けば、私は光の神様と一緒に、空を飛んでいました。霧は、ポッカリと穴が開くように、そこにはありません。まるで、この霧自体が、そこを厭うように、避けているように見えます。


『安心するがよい、我は今、気分が良い、久方ぶりの客人くらい、アレから護ってやろうぞ』


………………とても寛大な神様のようです。神様の気分は変わりやすいので、どうやら私は、アレを視る必要があるのでしょう。神様からの“依頼”ですから。


「アレは………」


ヒヤリとする背筋を、何とか我慢して、私はソレを視ます。

第一に視えたのは、黒い影。ボンヤリした姿で、目に当たる部分が、まがまがしい迄に赤く見えます。ソレがいる場所を流れた水は、まるでインクに染まるように、黒くなって流れて行くのです。


『視えたか? アレは人の怨念だ……………それが忌々しい事に、水を汚しておる』


「何で人の怨念が、この場所に…………?」


ここは、雅くんが言っていた、水の源流なんだと思います。つまり、山の中なんです。山の中には、浮遊する霊等が溜まる、吹き溜まりになる場所があります。けれど、これは違います。


『―――――我には分からぬ、少し前にフラリと現れてな、あそこから離れないのだ……………人の子よ、アレをどうにか出来るか?』


恐らく、明日、雅くん達が行くでしょうし、何より、今回の依頼の原因かもしれません。

でもそれ以前に。


「私には力がありません、けれど、仲間が気付いて、対処してきれるはずです、すぐには無理でも近いうちに」


『そうか………期待しよう』


その会話を最後に、私の意識は、現実世界へと戻されていました。


こんにちは〜(・∀・)ノ

読了お疲れ様でした! 今日は………恐かったですか? 頑張ってみました☆


皆さんは、どんなシーンが怖いと思いますか? 秋月も色々と考えているんですが、ね…………。難しいです。


さて、今日のピースで、この怪異の原因は推理出来ましたか? これからも少しずつ出して行きますので、お楽しみに☆


では、またお会いしましょう!

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