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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
前奏曲は怪異と共に
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長らくお待たせ致しました。まだ不定期が続きますが、宜しくお願いします。



Side:榊原 真由合



まさか、あたしがこの方々と肩を並べて、一緒に戦う日がくるなんて、人生、何があるか分からないわね。

あたしが初めて彼らと会ったのは、雅さまの護衛を始めてからだったわ。あたしは榊原家の血を引いていたけど、分家なの。でも先祖返りらしく、本家並の力を持って産まれたわ。家では待望の女の子、さらには先祖返りと言う事で、かなり甘やかされて育ったと思うけど。でも、先祖返りのあたしでも尚、手が届かない人達が居た事が、あたしを更に強くした。

それに、雅さまを本当に守りたいと、心からお仕えするようになったわ。

この方は、その小さい背中で、あまりに沢山の事を背負っているんだから。あたしで代われる物があるなら、少しでも負担が減るならばと、努力してきたわ。主に少しでも、笑って欲しくって。中々上手くいかなかったけど、やっと希望がみえたの。

それに、今はあの囚われのお姫様も、助けないとね? あの子は、雅さまにとっても、勿論、あたしにとっても、大切な子よ。こんなヤツに、渡すつもりはないわ!


「龍崎、全力で行くわよ」


「お前こそ、ここが地下であることを、忘れるなよ………………生き埋めはごめんだ」


あら、失礼な奴ね。あたしだって、それくらいは考慮するわよ? ちゃんと気を付けるもの。狭いこの場所で、広範囲に効果がある術は、ものによって危険になるもの。


「フォローは、頼んだわよ?」


「あぁ、それくらい任せろ」


頼もしい言葉に、あたしの口が笑みを形作る。久しぶりに、ヒリヒリするような、そんな緊張感と高揚感。事態が進んだ今、この目の前の化け物を退治すれば、だいたいは丸く収まるんだから。それに、龍ヶ崎様が早乙女様から受け取った”アレ”は、明らかに門外不出の品のはず。それを用意したってことは、それだけこの化け物に危機感を抱いたということ。まあ、囚われのお姫様もいることだし、備えはいくらあってもいいものね。


「榊原さん、龍崎、こいつをコレに封印する、姫を救出したら協力頼んだぞ」


あら、龍ヶ崎様ったら、ちゃんと計画立てているんじゃない。こんな非常事態に、のんきに言わないでほしいわ。目の前の化け物は、数百年生きて、更に悪霊をこれでもかと取り込んだ、正真正銘の化け物よ? 命がけなんだから、余裕を少しは分けて欲しいものだわ。


「了解よ、とにかく美鈴を引き離さない事には、迂闊に動けないわ」


本当に、どうしようかしら。あの化け物のすぐ傍にいたんじゃ、手が出せないじゃない! モヤモヤしたまま、動けずにいると、早乙女先輩が一歩前に出る。って、まさかこの人、このまま突っ込む気!?


「早くしないと、あの子にどんどん浄化されちゃうわね、いいわ、囮はあたしがしてあげる」


妖艶なまでの微笑みなのに、ゾクッとしたわ。きっと、目が笑ってないから、かしらね? その手にいつの間にか握られた、美しい彫刻の掘られた杖。サイズ何てそれほど大きくないのに、先に飾られたオレンジ色の親指大の宝石が、美しく輝いて、この場を仄かに照らし出しているの。思わず、魅入られそうになるほどに。


「その子のフォローは頼んだわよ? お二人さん」


あぁ、何て煌びやかな人なのかしら。美味しいところを、全部もっていったわね。でも、雅様がやる気を出してるんだもの。絶対にやるわ、あたしと龍崎で、この人達に見せないとね。

目の前では、足元に巨大な魔法陣を出現させた一人の魔女。何かを召喚し、おとりとなってくれるらしい。中々に、派手なパフォーマンスに、俄然やる気がでたわ。力の放出に、彼女の服や髪が、風にふわりと揺れる。


『我汝に願う、古の盟約を前に、新たなる契約を結ぼう、深淵に輝く永遠の輝き宿すモノ、汝、汝の意思により我が前に顕現せし事を、今盟約の時、いでよ! 不死に輝く黄金の魔鳥、フェニックス!!』


って、いきなりとんでもないモノを召喚してるし!? これがおとり!? いやいや、明らかにおとりじゃなくて、本命よね!?

そして次の瞬間、暗闇に慣れた目には大変眩しい、黄金の炎をまとった不死鳥が顕現する。あまりの眩しさに、腕で目を保護したけど、まだチカチカするわ。まったく、こっちの事もかんがえてよね。でも、大きさは思ったよりは小ぶりで、ちょっとホッとしたのは秘密よ。それでもゆうに二階建ての建物くらいはあるけれど。


「これが囮とか、気前良すぎでしょう…………」


思わず引きつりそうになる顔を無理やり、微笑みに変えて、あたしは雅様へ笑顔を向けた。大丈夫、貴方の邪魔は、絶対にさせませんから。


「さあ、雅様、お姫様へ向かって下さいな、邪魔なモノは、我々にお任せください」


ああ、何て気分がいいんだろう。色んな人の力を借りているけど、あの方の欠片を手に出来るうえに、色んな表情を見れるんだから。此方に頷いて、信じて走って行く幼い姿に、思わずクスリと笑みが零れる。やっと、あなたの肩に乗った重い物を一つ、取り除いてあげられるわ。長年、見守り続けたかいがあったわ。


「行くわよ、龍崎!」


「あぁ、行け!」


二人同時に、式神を放つ。あたしのは鳥の式神。赤く優美な姿をしてるけど、強さは本物よ? 龍崎のは、まあ、見事な鬼神ね。絵巻物に出てくるような、迫力のある姿。腕に構える槍は、雅様に迫りくる髪を、バッサリと切っていく。あら、案外綺麗に切れるのね? うちの式神も、火を噴いて迫りくる髪を焼き払っていく。

まるで、見掛け倒しね? これだけの瘴気を身にまといながら、使い方を知らないみたいな……………。


「あら、後れをとったかしら? ならば此方も参りましょう? -----フェニックス! 焼き払いなさい!」


早乙女様から命令を受けたフェニックスは、その灼熱の炎で、場に広がる髪を焼き払っていく。

クスリと妖艶にほほ笑えむその姿に、此方がゾクリとするような、そんな姿に思わず、そう、胸の内に、僅かに悔しいと感じてしまう。これが、流派を超えてもなお存在する、本家と、分家の実力差。

負けたくないわ、あたしは榊原家の娘、真由合。負けず嫌いなのよ!

ーーーーーふう、ダメね。集中しないと。嫉妬も羨望も、後からいくらでも出来るわ。


「ふぅ、しっかりしないと、──────雅様の御身、必ずやこの真由合が御守りいたしましょう」


本気のあたし、見せてやるんだから。駆ける幼い姿の背を見ながら、更に式神をもう一体、召喚する。勿論、雅様を守るためよ。守りは多い方がいいわ。同じく鳥の式神よ。

それに、思ったより髪の量が多いの。使い方を知らないような、違和感だらけのこの化け物。一体全体、どうなっているのかしら。あたし達は、もしかしたら何かを見逃しているのかもしれない。

でも、今はとにかく、あの子を助けないとね。


「うわあ!?」


って、少し目を離したすきに、まさかの雅様の悲鳴。思わず身構えて、よろけたわ。おそらく、他の皆様も内心は同じだと思いたい。いや、同じはずよ。

だって、だって!!


こんな地下に、何で大きなクマのぬいぐるみがあるのよ!?


特になんの変哲もない、布で出来た、可愛らしいクマのぬいぐるみ。サイズは子供が抱える程度のもの。ぽつんと、隅の方に置かれたそれは、明らかに場違いな物。なのに、目が離せなかった。すぐに気づく。

ーーーーーーーーーーそこから感じる、巨大な何かが、あまりにも恐ろしくて。

陰陽師の自分が、こんなものを見逃すなんて。いや、誰も気づけなかった。雅様が見つけるまで。

魔は魔を呼ぶ。もしかしたら、なんて、考えてしまうけど、とにかく雅様を美鈴のもとへ。


「仕方ない、それは俺がやる、お前らは雅のサポートと、護身をしててくれ、あれまで背負わせるのは、悪いからな」


にやりと笑った龍ヶ崎様から、一気に霊力が迸る。近くにいた、あたしと龍崎に強風が叩き付けられる。勿論、踏ん張ったわよ? 早乙女様は、けろりとしていて、服が少し揺れたくらい。どんな実力なのよ、本当に。


「てめーの相手は俺だ、いい加減に姿見せろや」


いいとこのお坊ちゃんの口から、信じられない暴言が出たけど、まさかね? 思わず固まったあたしだけど、すぐに現状を思い出す。雅様はクマの登場に戸惑っていたみたいだけど、龍ヶ崎様の言葉でそのまま走り出していく。それでいい、あたし達の相手は、この目の前にいる、女の姿を取る危険な化け物なんだから。


「そちらは任せましたわ、龍ヶ崎様」


きっと、我々には手に終えないでしょうから。

お読み頂き、ありがとうございます。読了、お疲れ様でした。

真由合さんの視点は、難産でした。もう、中々降りてくれなくて!

終わりまではストーリーは出来ているんですが、視点が難しいです。もう少し練るべきでしょうか?

まだまだ不定期が続きますが、これからも宜しくお願いします。

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