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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
前奏曲は怪異と共に
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次回は誠意執筆中です!


Side:竜前寺 雅



和葉さんと日暮さんから、僕等は少し離れて、様子を伺っていたんだけど……………、二人とも、何をしてるんだろうか? 和葉さんが何かを指示すると、日暮さんが其方へ行って、バランスを崩した和葉さんを、日暮さんが精霊を使って助けて………………。

何かのラブロマンス、いや、恋愛小説みたいな一場面だった。隣に居た真由合なんて、こういう話が好きだから、目がキラキラしてたよ。


「開きます」


それほど大きくないのに、ここまで聞こえた日暮さんの声。

もうすぐ、もうすぐ美鈴のところに行ける。今すぐにでも行きたいけど、それを理性を総動員して、我慢する。

痛いくらいに握り締めた右手の拳が、僕の本心なんだと思う。行きたいけど、行けない。このままでは、――――――行けない。

冷静沈着、それを体現している龍ヶ崎さんや、龍崎が羨ましい。僕の心は、こんなにも乱れているから………………。

足手まといは、嫌だ。危険な場所に行くんだから、僕だって、しっかりしないといけないんだ。美鈴を助ける為に。


「開いたな―――――行くぞ」


龍ヶ崎さんの合図で、僕等は足を進めるんだけど、日暮さんが作った道は、人が通れるように、階段になっていた。やや緩やかに出来た階段に、日暮さんの気遣いを感じた。

でも、そこで気付いたんだ。この地下は、川の流れている場所よりも、高い場所なんだと。もしかしたら、その所為で空間が閉じてしまい、淀んだ気がいつまでも続く閉鎖空間が出来たのかもしれない。

一段一段、慎重に上がるのは、あの依頼の家で感じた以上の、瘴気を感じるからだ。


「濃いわね」


嫌そうに、真由合が呟く。確かに、濃い。濃密な瘴気に、呼吸が苦しいくらいだ。柏手を何時か繰り返しながら、僕達は進んでいた。それほど長い通路でもないのに、永遠に続く回路に、迷い込んだような気になる。


―――――――ドックン


「………ッ!」


突然、胸に嫌な脈動を感じて、無意識に息を止め、胸に手を当て、握りしめた。無意識だったけど、常に僕を見ている二人には、何故か………いや、当たり前にばれた。

だけど僕は、胸に来る歪な脈動に気を取られていた。そして気付いてしまったんだ――――――――その意味を。

勿論、僕の異変に気付いた二人だって、気付いたはずだ。何年も一緒に居て、気付かない訳がない。

僕が、探偵として、働いている理由。それが、コレなんだから……………。


「雅さま………もしや」


龍崎の問いには、短く頷くだけだったけど、これで通じた。真由合も気付いたみたい。

―――――――この発作の理由を。

二人の表情が、更に険しくなる。勿論、美鈴の救出と、原因の闇を何とかして……………更についでに、僕の発作の原因も、二人には僕の家との契約があるから、やらなくちゃいけない。

勿論、そんな僕等の会話を、周りだって聞いているから、問うような視線を受けてしまった。特に龍ヶ崎さんからの視線が痛い。


「どうかしたか?」


「いえ………、大丈夫です」


龍ヶ崎さんや皆に、何だか申し訳なくて、でも足手まといになりそうで、不安定な心が悲鳴を上げるけど、優先はあくまでも美鈴だ。

私用である嫌な脈動を気にしつつ、けれども余計な雑念に蓋をして。

でもまさか、ここで出会えるとは、思ってもいなかった。やっと、また一つ、見つける事が出来た。


「そろそろ着くぞ……………気を引き締めろよっ!」


龍ヶ崎さんの顔が、獲物を見つけた狩人のように、迫力あるものになっている。あまりの迫力に、真由合が引いた程。多分、龍ヶ崎さん自身は、無意識でやってると思うけど。


「これは……………」


誰が呟いたのかも分からなかった。

――――――そこは、真っ暗なポッカリと開いた場所だった。天井から、光が漏れる事も無く、僕等とて先程の場所からの、あまりの違いに、一瞬、呑まれた程。広いが、視界の効かないここは、最悪の戦場とさえ言える。


「……………?」


でも、違和感を感じた。僕等は、全員が見鬼だ。只の暗闇ならばまだしも、ここは瘴気の濃密な場所。それならば、瘴気が視えないはずはない。

勿論、只の暗闇ならば、僕等は何も視えないんだけど………………。

ここには、霊が居るはずなのだ。それを一体も視ないのは、おかしい。


「気を付けろ! 何か居るぞ!」


龍ヶ崎さんの険しい声に、皆が身構えるけど。やはり、何も見えない。


「ん? これ、黒い布?」


日暮さんの呟きに、一瞬で理解した。ここ、その物が、ヤツの手中の中なんだと!


「龍ヶ崎さん、ここは既にヤツの中だ!」


僕の叫びと同時に、視界が一気に開かれる。スルリスルリと動いているのは、よく見れば、黒い衣だ。描かれているであろうリアルな赤い蝶は、今にも動きそうな気がする。だが、これはヤツの一部なんだろう。自在に動き、僕らの視界はすっかり奪われていたんだから………………。

衣が動いてすぐに、薄暗い中でも、瘴気の僅かな紫色の灯りで、周りが視えた。そこに、一つの光景が浮かび上がる。


「美鈴っ!?」


「美鈴ちゃんっ!」


名を呼ぶ二人の悲鳴じみた声が上がる。恐らく、真由合と和葉さんだ。僕も、出していたかもしれないけど、先に二人が上げてくれたおかげで、逆に冷静になり、あげずに済んだ。


「酷いっ! 早く助けないとっ……」


和葉さんは、この光景に耐えられないようで、怒りと、恐らくは悔しさで、全身を震わせていた。他の皆も、この光景には、思う事があるだろう。皆、険しい顔をしている。

ある意味、効果的だろう。冷静さを失わせるという意味ならば、確かに効果を発揮したんだから。

敵は、この場に似つかわしくない程に、艶やかで美しい女だった。漆黒の着物が、女の白い肌を浮き彫りにさせ、長く伸びた髪さえも、女の妖艶さを際立たせる。漆黒の着物は長く伸び、先は意志を持つかのように波打ち、その先では新たに現れた悪霊を捕らえ、一瞬の後に光に変えた。

そして、その傍らには、光の球体に守られた美鈴が居た。グッタリした様子で、球体に寄りかかるようにして、倒れている。その球体には、あの黒い着物が絡みついている。恐らく、あの光は和葉さんの作った、御守りの結界だ。あれが美鈴を、この場に巣食う闇から守っているんだ。


「こりゃあ、とんでもない大物を引き当てちまったなぁ…………、雅、お前は捕らわれのお姫さんを、助ける事だけ考えろ、いいな?」


「――――うん、分かった」


龍ヶ崎さんの言う事は、この場では正しい。僕は、この場では一番足手まといだし、何よりも全力で行う術の行使に、足手まといは居ない方がいい。

後方に下がった僕に、龍ヶ崎さんと、早乙女さんの会話が耳に入る。


「ひさの、わりーな、久方ぶりの討伐がこんなので」


「あら、龍ヶ崎ったら、いつの間にそんなに感傷的になったのかしら? あたしとしては最高の餌が手に入るだけでも、結構助かるのよ?」


「そうかい…………こえーな、相変わらず魔女は」


「あら、何の事かしら?」


場にそぐわない程、楽しそうに話しているのに、会話の内容が色々と凄い。早乙女さんの会話に出た、目の前の化け物を見ながら、堂々と言った“餌”の言葉。恐らく、二人に余裕があるのは、何か勝利への鍵があるからだろう。


「和葉、雅様をお願いね?」


真百合も龍崎も、前の二人に続くようだ。果たして、この四人相手で、あの化け物は無事なんだろうか?


「おい、日暮………お前も前線だぜ? サポートがサボったりしないよな?」


和葉さんの横に居た日暮さんは、顔を引きつらせていた。ん?


「サポートって、先輩達の………ひっ! 何でもないです! 喜んでさせて頂きます!」


「頼んだぜ?」


よく分からないけど、今、悲鳴が聞こえた気がする。まぁ、本人がいいなら、いいんだろう。きっと、深く考えない方がいいんだと思うから。

五人がそれぞれ構える中、和葉さんはようやく回復し始めたばかりで、まだ本調子じゃない。本来なら、入らない方が良かったんだと思う。でも、今は一緒が安全なんだから、皮肉としかいいようがないよね。


「和葉さん、僕らはここに居た方が安全だよ、あの四人の全力、更に日暮さんのサポートがつくんだよ? あの中に入るなんて、僕は絶対に遠慮するよ」


あの中に入るのは、罰ゲームだろうね。いや、罰としかいいようがない。それだけ凄い、一流の術者達なんだ。………………周りの被害は、果たしてどれ程の物になるのか。


「勿論、私も遠慮します…………回復中ですし、私は階段に居れば大丈夫ですから」


あ、そっか。階段は外に通じているし、この場に漂う闇も、霊脈の流れの余波を受け、今は流れが出来てる。最初よりも闇は、薄くなってるんだ。もうここは、閉鎖空間じゃない!

なんて、普通に僕らが会話しているうちに、向こうでは戦いの火蓋がきって落とされた。


お読み頂き、ありがとうございます。

ようやく、何とか出来ました!

次回はバトルになりますが、あの四人の暴走を、果たして秋月は書ききれるのか、ちょっと心配です。

こちらに出ている、龍ヶ崎さん、早乙女さんは、『舞台の上にようこそ』に登場している方々です。なお、日暮さんと和葉さんは、この二人の後輩なんですよ。

時間が出来たら、和葉さんの過去も書きたいなぁ。美鈴ちゃんとは別に、彼女にも辛い過去があります。だからこそ、美鈴ちゃんを妹のように可愛がっているんですが。

次回も宜しくお願いしますm(__)m

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