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い、一ヶ月ぶりになりました…………。次回は誠意執筆中です!
Side:美鈴
気付けば私は、辺り一面を霧に覆われた場所に立っていました。前と違うのは、何だか怖い気配が、下から感じ取れると言う事でしょうか。
「…………………!」
「…………!?」
「…っ!」
そして、聞き取れないけれど、沢山の怒号と悲鳴が、下から聞こえる事です。
「………なに?」
そう呟いた瞬間、一気に霧が晴れ渡り、そこには―――――まさに地獄絵図が広がっていました…………。目を見開いて、固まる私には、風と共に運ばれる熱風が、まさに大地を焼いているように見えました。
恐怖のあまり、自分で自分を抱え込むように、私は小さく縮こまり、見ないように時間が経つのを待つしかありませんでした。
……………どれ程、経ったか分からない頃、あの赤く、紅く、空を焼いた色々は消えていて、そこには青く染まる空と、風に揺れる草原が広がっていました。
「あれは………」
ふと、視界に人が居る事に、気付きました。古の衣装を着た、数十人の人達が、そこで何かをしていました。
「儀式かしら?」
ただ、詳しく見る前に、まるでテレビを早回ししたかのように、目まぐるしい早さで過ぎてしまい、気付けばそこには、立派な家屋、いえ、格式高い豪邸が建っていました。
そこでは毎日のように、祈りを捧げ、そして、浄化を施していきます。ここに来て漸く、私も分かりました。ここに居るのが、神官一族なのだと。戦の後始末である事は、私も見ていて分かりました。
永い永い年月を、何代にも渡り、土地を守り続けた一族。……………けれど、それは起きました。
早送りが何故か、ピタリと止まります。まるでそこは、大切な箇所だとでも言うように…………。
『何故、今になって!』
『もう数百年も経ったのに!』
『―――が産まれるなんて!』
悲痛な叫びでした。一部屋で、親族達が険しい顔で話し合いをしています。彼等の中心に居たのは、驚いた事に、産まれたばかりの赤子でした。
「赤ちゃん? 何で………」
何やら決定したようで、赤子は下働きの女性に抱えられ、部屋の外へ連れて行かれます。
赤子を見送る彼等の目に、思わずゾッとします……………。誰もが、憎しみや嫌悪等の、負の感情しか出していなかったのです。
そのシーンが終わったと思った瞬間、またテレビの早回しが始まりました。
それからも、日常は変わらず続いていたように思えました。けれど、時が経つにつれ、何だか時々、違和感を覚えました。
一番は儀式、でしょうか。あれ程格式高い儀式をしていたのに、あの赤子の誕生以降、能力の無い子供が多く生まれ、昔のようには出来なくなっていたのです。私が気付いたきっかけは、廊下に居た霊への反応でした。昔は子供が悲鳴をあげたりしていたのに、最近は一部を除き、皆が見えていない反応をしていたのです。
ちょうど、時代は明治へ変わるぐらいでしょうか。とうとう、力のある者が居らず、一族は没落していきました……………。見ていて、本当に気分が悪いです。
でも、それからこの地は、何度か持ち主が変わり、そして、ようやく今の持ち主に変わったのです。
そう、依頼人たる水島さん達です。前の持ち主は、水島さんのお父さんのようで、遺産相続で相続したようです。見ていて気付いたのですが、この時点で既に怪しい気配がしています。リフォームした後が、あの危険なまでの霊の気配が更にしています。井戸に何かあるのでしょうか? 日に日に、家の中に危険な気配が増えて行くのが分かります。
――――――何か見逃した?
特に気になる話はありませんでした。没落した彼等から、持ち主は変わって行きました。あれも何か意味があるのでしょうか?
やはり、最初の推理通り、井戸が淀み、故に大きな歪みとなって、あの家を襲っているのかもしれません。しかし、そうすると、もう一つの別宅まで霊が居るのは、不自然……………いえ、あの裏の穴、美しくも恐い霊脈に乗って、別宅へ入って来たのかもしれません。しかし、和葉さんの結界があったはずです。未だにどうやって入って来たのかは、謎しかありません。
そこまで考えて、私はハタと気付きます。――――――もしかしたら、私は思い違いをしていたのかもしれません。
だとしたら………………、今まで見てきた物、伝え聞いた物、この夢で視た長い歴史………………。長い刻をかけて、浄化し、祭り上げた地――――――。
そんな場所が、祭られる事なく、逆に穢れを溜め込んで、少しずつ、少しずつ、歪んでいたとしたら? もしも、力ある人が来た事が、更なるきっかけとなっていたら? もしも、水が永きに渡り、流れる事なく、穢れていたら?
その考えに、背筋がゾッとします。
「え、あれは…………?」
そこには、現在、つまり、今の時間が映し出されていました。雅くん、龍崎さん、真由合さん、和葉さんが居て、更に知らない4人の男女が居ました。もしかしたら、これから除霊が始まるのかもしれません。
「えっ、待って!!」
今はダメです。あそこにある原因が、今の状態を招いたとしたら……………、力ある彼等を中に入れての浄化は、危険過ぎます!
「止めないとっ」
私は、我知らず、手を伸ばしていました………………。自分が、夢の中に居る事すら忘れて。
『雅くん、ダメェェェ――――――!!!』
私は、叫んでいました。全身全霊で。
◇◇◇◇◇
Side:竜前寺 雅
とりあえず、中に入っての浄化をする事で、僕達は方針を決めた。いつまでも、ぐずぐずと外で相談する訳にはいかないだろうしね。
龍崎が、玄関の扉に触れた、まさにその時。
……―――――――ぇぇぇ――……………!!
「…………え? 美鈴?」
僕の驚きを込めた呟きは、案外響いたようで、皆の視線が僕に集中した。
「雅さま? 美鈴が何か………?」
ギリギリまで、美鈴をみていた真由合は、心配からか、普段の姿にはない、戸惑いがみられる。和葉さんも、不安そうに僕を見ていた。
「今、美鈴に呼ばれた気がしたんだけど……………」
僕の中では、あれは美鈴だと、確信を持てる。けど、理由が分からない。美鈴は今、無理が原因で、深い眠りについているし、しばらく起きないだろうと、異変が起きても分かるように、和葉さんに結界を張って貰ったんだから。
「気のせいでは? ここに、その方は居ない訳ですし」
やんわりと、柊さんに不定をされたが、間違いないと僕は思っている。自分の感だから、こういう時、間違いないと確信できるんだ。
「中に入るのは、一旦、やめましょう」
僕の突然とも言える言葉に、当然だが、龍ヶ崎さん達から困惑した感じになってしまう。険しい顔色の龍ヶ崎さんが、口を開いた。
「確かに、時間は朝8時…………まだ時間はある、だが何に気になった? その美鈴とか言う子の、声だけじゃないだろ?」
どこか確信めいた言い方をする龍ヶ崎さんに、僕は改めて彼を苦手に感じてしまう。僕の僅かな動作や、感情の揺れ………それらから、僕の内面やら、考えている事を察してしまう。お陰で昔から、からかわれて、すっかり苦手意識がついてしまった。
「上手くは言えないけど、美鈴の声は静止を込めたものだった、それに、何だか胸騒ぎがするんだ、このまま入ったら、不味い事になるような…………そんな、警告、みたいな」
僕の言葉に、感を信じる陰陽師である、龍ヶ崎さん、龍崎、真由合は納得してくれたけど、和葉さんは戸惑ってるし、早乙女さんは、険しい顔をしているし、柊さんは困った様子だし、日暮さんは…………納得していた。ん?
僕と同じく、気付いたらしい早乙女さんは、日暮さんに戸惑ったみたい。
「日暮くんは、納得しているのね、何故? あたしは感だけじゃ、納得しかねるんだけど」
魔女だけあって、妙な迫力がある早乙女さん。真由合とは別の、色香を含んだそれは、毒があるように感じるのは、気のせいだろうか?
「え、だって精霊達が嫌がるんですよ、中に入るの、…………言おうとしたら、先に坊っちゃんが言ってしまったので」
けろりと言われた内容に、流石に唖然としたよ、久し振りにね。
「プッ、坊っちゃんか!」
ほら! 龍ヶ崎さんが反応した! 僕をからかうの、いい加減にしてくれないかな!? 今、大事な仕事中だよね!?
「フフッ、それなら納得だわ、精霊は特定の理由がある場所は、近寄らないもの、…………プフッ」
………………僕、泣いていいだろうか?
と、急に早乙女さんが、別宅の方に視線を向けた。釣られて僕等も其方を見る。空は晴天、その中に不釣り合いな、フクロウの姿がある。そのフクロウは、魔女の使い魔の印として、足に星のマークが付いた、タリスマンというチャームの御守りを付けていた。
「一度、美鈴さんの元へ行った方がいいかもしれないわね」
何故か、早乙女さんの言葉が、その時の僕には、悪い未来を告げているようにしか、感じられなかった………………。
あちらで、何が起きているんだ?
―――――――美鈴、無事でいて!!
まずは、お読み頂きまして、本当にありがとうございます!
そして皆様、謎は解けましたか!?
原因は、もう皆様は分かりましたよね?? 次回も頑張りますね☆
……………早くしないと、夏が終わってしまう。
さて、夏のホラー企画が始まりましたね☆ 本当は、これを出したかったのですが、無理でした…………。一応、続編も考えています。そちらは、ガチガチの推理、おまけで怪異となる予定です。
さあ、推理好きな皆様に気に入って貰えるように、頑張ります!
では、次回にお会いしましょう!




