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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
前奏曲は怪異と共に
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次回は誠意執筆中です。

なお、ヒントはこのお話で、終わりになります。

次回から解決編になります。


Side:竜前寺 雅



「それじゃあ、次は僕からですね」


ニッコリ微笑むと、更に幼く感じる青年、日暮 那緒斗さん。本当にスーツが似合ってない。着せられている感が凄い。


「僕からの報告は二つ、一つ目は、この地の歴史について、二つ目は、依頼人の家系について」


僕が頼んだ事は、後半だ。最初に頼んだのは、歴史。まれに場所が関係したりするため、これは基本的に必ずお願いする事だ。


「一つ目からいきますね、この地の歴史はかなり古くて、遡るのに苦労しましたが、幾つか興味深い事実を見付けました、―――――まず今から800年程前、この地が戦場になった事…………そしてこの地に住み始めた、とある一族により、ここの歴史はスタートしたみたいです」


800年程前、合戦場となったこの場は、後に忌み地として忘れ去られた土地となった。それから数十年程して、当時の朝廷からこの地を任された、宮司一族は塚を立て、自分達も住みながら、この地を浄化していったようだ。


「しかし、江戸まで盛えたものの、明治に入ってからは、かなり厳しい状態となり、この地を離れてしまったんです、そしてここからが二つ目と関わりがあるんですが、依頼人の奥様は、その宮司の末裔に当たるようです、皆さんがお会いになった、神主さんも宮司の血を引いているようですね」


これには、驚きの声が上がった。まさかそんな事態になっているとは思わなかったからだ。

因みに、宮司とは神社の最高位の神官を表し、祭主の次席の位を持つ。神主とは神に仕え祭る人を示し、神官とも呼ばれる。また、長としても呼ばれる場合がある。


「さて、そこでなんですが、井戸は今から400年位前に掘られた古い物のようで、宮司一族がずっと使っていたようですが、200年前にこの井戸で人が亡くなったようで、井戸は閉鎖されました」


つまりあの見つかった井戸は、曰く付きと言う訳だ。しかし何故、半分しか埋めなかったのか。


「半分しか埋めなかったのは、井戸の位置に問題があったようですよ? 半分埋めた事で、霊脈に影響があると分かったようで、そのままにされたようですね」


それを今回、きっちり埋めた事で、このような大変な事態となったと。


「はた迷惑な事態だこと」


真由合さん、眉間にシワが。剣呑な視線がいと恐ろしい。なまじ、きつめの美人なだけに、迫力が違う。


「ここが戦場で、血筋も分かった……………霊脈はどうなの? ここに霊脈があるなんて、僕等も聞いてなかったんだけど」


真百合さんを見ないようにしつつ、質問した僕に、日暮さんは偉いとばかりに頭を撫でてきた。こいつ、子供扱いしやがって!


「まぁね、この辺りに神官一族を遣わした理由が、それだったみたいだよ、細いながらも霊脈があった場所に、戦なんてやらかしたから、後始末だね〜、きっと」


戦で血が流れた場所は、忌み地とされる。そんな場所に、霊脈が流れていたら、朝廷や幕府は慌てた事だろう。土地のバランスが、大きく崩れてしまう。だから、神官一族をここに遣わした。土地を整えてもらう為に。

完全な、とばっちりと言えるよね。

と、今まで黙っていた龍ヶ崎さんが、声を上げる。


「じゃあ、何か? ここに霊が集まってくるのは、その当時の流れって事か? だが今、そんな塚はこの辺りには無いぞ? 集まってくる理由にはならないだろ?」


それに同意するかのように、柊さんも話しだす。


「霊脈の流れに乗ってくるにしても、ここまで集まるのは異常ですね、古い家なら、前にも増改築したでしょうし、もしかしたら塚を埋めてしまったのでは? 長きに渡り祭ってきたなら、神様になっていても不思議ではありませんし」


その意見に、スッと背筋が冷えた。塚は長い信仰により、土地神になっていてもおかしくない。それを祭らず、放置したなら、おかしくはない……………かもしれない。

そんな深刻な会話に、日暮さんが待ったをかけた。


「あ、それはご心配なく! 塚は移転されただけで、まだありますし、宮司さんのところで祭ってますから」


そこまで聞いて、ふと疑問が出る。


「塚はこの土地のでしょ? 移転して平気だったの?」


この土地を整える目的だったはず。それを動かして平気とは、どうしても思えないのだが。


「いや、それをやったのは、あの400年前の一族さんなんで、影響は大丈夫みたいですよ?」


これでは、振り出しに戻ってしまったような? というよりも、日暮さん。情報をしっかり開示してほしい。忘れてたとか、本当に勘弁して欲しいのだが。

そんな呆れた様子を見せる僕に、クスリと笑みを浮かべつつ、今度は早乙女さんが口を開く。


「霊脈のお陰で、霊が集まりやすい土地でも、宮司一族が住めていたのは、きちんと祭っていたからでしょうね、なら何で今になって、こんな事になったのかしら?」


考えられるのは、リフォームだろう。井戸を埋めた他に、何かしたとは聞いてないが。


「その井戸、霊脈に影響を起こしたって事は、それが鍵なのかも」


僕の言葉に、それぞれが難しい顔をしているけど、あれ?


「待って…………、僕等が浄化した川の源流、あれも関わりがあるのだとしたら? 霊脈がリフォームで歪んで、そこに影響が出たとしたら? そして、井戸に“何か”があって、霊が集まってきているとしたら?」


そこまで考えて、ヒヤリとする。


「雅さま?」


今まで黙っていた龍崎が、様子が変わった僕に気付いて、問うような視線を寄越すけど、僕はそれどころじゃない。先程から、心臓の鼓動が早くなっている気がする。嫌な脂汗が、僕の額から滑り落ちた。


「今、霊はあの中に閉じ込められて、出れない状態だよね?」


静かな声で問う僕に、周りは怪訝そうだけど、龍ヶ崎さんは気付いたらしい。僕と同じように、顔を強ばらせている。


「まさか…………っ!」


龍ヶ崎さんの声が、嫌に響いた。声が驚愕に彩られていても、流石に僕も声が出なかったから。

そんな僕等に、早乙女さんは限界を迎えたらしい。妖艶なお姿が、少し威圧的に感じた。


「あら、龍ヶ崎先輩は理由が分かったの? 分かってるなら、説明してちょうだい……………一体、あの屋敷で、何が起きてるわけ?」


細めた目が、鋭い輝きを放っていて、下手な事を言ったら、どうなるのか、違う意味で冷や汗が出た。龍ヶ崎さんは平然としていて、馴れているようだけど、僕は初めてだから、本当に嫌だ。


「なぁ、ちょっと確認だが、あの屋敷の中には大量の霊が居て、今も増えているんだよな?」


龍ヶ崎さんの言葉に、真由合達が頷くと、更に言葉を続ける。


「お札で出口が無い状態に、次から次へと霊が集まってきたら、どうなる?」


その言葉に、一瞬の間を置いて、全員が気付いたのか、ハッとして、顔が強ばった。当然だ、それが今のあの屋敷の中で起きている事なんだから。


「あの中で―――――――――」


さぁ、そろそろ結論の時間のようだ。



◇◇◇◇◇


Side:???



今日の菓子は何だろうか。

そんな久方ぶりの、のんびりした時間。

家に、いや、屋敷………豪邸と呼ぶに相応しいかもしれない。ここは、広い庭園があり、西側と東側では全く違う顔になっている。

私のお気に入りは、西側の庭園。海外のように、美しい季節の花々が咲き乱れる姿は、日本庭園には無い、華やかさを演出している。果実も成るし、ハーブもあるため、西側はプライベートな庭として整えられてきた。

東側は、純粋な日本庭園であり、主に客人を招く場所となっている。

私が今いるのは、西側のプライベートな庭の一角。芝生が敷かれた上にある、石で出来たテーブルセットの椅子に、ちょこんと腰を下ろしている。周りは薔薇が植えてあり、今の時期は満開で、目でも香りでも楽しめる。


「なんじゃ? 野比古、私に何か用かえ?」


久方ぶりの、のんびりな時間を奪われるのは、嫌なのだ。ここは今の時期のお気に入り。誰も、家族でさえも、邪魔はしない、私だけの場所。


「いえ、お茶は如何かと」


そういえば、喉が渇いたのに気付く。それに小腹が空いた。お昼にはまだ早い時間帯。少し摘むくらいなら、心配性な野比古も叱るまい。


「うむ、喉が渇いた…………野比古、菓子も所望するぞ」


「畏まりました」


木々や花が、心地よい風を運ぶ。その中に、小さな陶器の触れ合う音がする。


「夜姫様、実は先程、ある情報が入りまして」


おや、珍しい。野比古が遠回しに話すなど、あまり無い事なのだが。


「何じゃ? さっさと話さぬか」


私は気が長い方ではない。プライベート空間というのもあって、完全に気を抜いている程。故に、普段よりかは鷹揚かもしれないが。


「はい…………先日のお出掛けの際、夜姫様が見つけた遺体、どうやら発見されたようです、更に確認したところ、術が解かれた形跡があると…………」


「なんと…………、私の力に程よく馴染んだ、アレか? まさか解ける奴がおるとは…………」


アレは、久方ぶりに見た、黒く染まった魂であった。故に、願いを叶えてやったのじゃが……………。


「悪い事をしたかのぅ? 願いは叶ったようじゃが、いかんせん…………イマイチのようじゃったし」


まぁ、よい。問題は、私の呪文を解いた者じゃ。あんなのがゴロゴロ居たら、私の仕事が減ってしまうしの。


「はい、掴んでおります、報告では、探偵者に勤めているようで、名を“榊原 まゆり”と言うそうです」


流石、私の優秀な側近。もうそこまで掴んでおったか。


「そうか、これは楽しみが出来たのぅ! また、からかいたいものじゃ」


「しかし、このままと言うのも…………」


険しい顔を見せる、野比古には悪いが、久方ぶりの存在に、嬉しい気持ちもある。しばらく単調な事が続いて暇じゃったしの。ふむ、決めたぞ。


「よい、放置せよ」


満足感に満たされて、私が満面の笑みを見せると、野比古は何かを悟ったのか、溜息と共に、茶の準備に取り掛かった。

さぁて、陽なたぼっこの続きと、シャレ込もうかのぅ。


いつもお読み頂き、ありがとうございます!

ようやく、情報を出し終わりました。ふぅ、これでモレはないはずです。

次回から、解決編になりまして、秋月の腕の見せ所になりますよねぇ。はぁ、が、頑張ります!


では、次回にまた会いましょう♪

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