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霊感探偵達の物語  作者: 秋月煉
前奏曲は怪異と共に
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次回は誠意執筆中です。


Side:雅



焦っても、何も変わらない事くらい分かっていても…………それでも焦るんだ。美鈴に何かあったらと思うと………………。

あの子の傍は、とても心地よくて、体も心も軽くなるのを、どうしても感じてしまうから。


「美鈴っ…」


苛立ちから、拳を強く握り締める。一緒に来た、龍崎の心配そうな視線を感じるが、それに答える気もない。早く美鈴を探さないと。彼女は、護身程度しか使えないのだ。もしも、何かあったら…………。


「早くしないと、夕方になる」


急がないと、そう気持ちばかりが急いていく。焦っても無駄と分かっていても、それでも気持ちは落ち着いてくれない。


「雅さま! 式が美鈴のハンカチを見付けたようです」


真由合の声が響く。ようやくの手掛かり。物が見つかれば、それを式に、本人を見つける事が出来る。


「真由合、そこに連れていって」


お願いだ、美鈴。どうか、どうか、無事でいてくれ!



◇◇◇◇◇


Side:美鈴



く、暗いです。先程、落ちた場所は、上に開いた穴から、光が漏れていましたから、それなりに明るかったのですが……………。


「どうしよう………これじゃ、颯太さんが居ても分からない」


未だに、私は眼鏡をかけたままです。落ちた時、幸いにも眼鏡は無事だったようで、霊的な現象を視ずに済んでいます。


「確か………火を使う術があったような?」


記憶を掘り出しますが、残念ながら私は、お札を持っていません。

今あるのは、携帯と、ポケットティッシュ、和葉さんから頂いた御守りであるブレスレット。小さな手鏡に、折り畳みの木の櫛。これで全てです。因みに携帯は圏外でした。


「あ、ブレスレットを使えば………」


勿論、私が眼鏡を外せば、光はいらないのですが、代わりに別のモノ達が寄ってきます。眼鏡は極力、外したくありませんし。


「この赤い石…………いえ、全体を使えばいいですね、他と調和が取れる以上、バラバラに使うのは駄目でしょうし」


本当は、御守りに別の術を使うのは、良くないのです。でも、このままだと、一般人の颯太さんを救えない訳で……………。眼鏡を外すのが、一番なのは分かりますが、誰も居ない以上、得策とは言えません。だって、私一人では、戦えませんから。簡単な護身術や、簡単な初歩の退魔術を使える程度です。間違いなく、大物が来たら、アウトです。


「仕方ありません、確か………火の術は………」


記憶を掘り起こし、お祖母様の実家で教えて貰った術を、急いで思い出します。たまに伺った時に、いつも可愛がって下さる皆様に、あれこれと術は教わっていますから。

―――――――沢山あって、記憶が大変怪しいですが。


「えっと、火の神様は………」


ダメです。記憶が怪しいと言いますか…………、焦れば焦る程、記憶が逃げて行きます。落ち着かないと……………。

深呼吸を何度か繰り返しますが、焦りは落ち着いてくれません。焦燥感といいますか、焦りは否応なしに私の心を蝕んでいきます。

また、涙が溢れて来ますが、必死に押さえ付けます。今、泣いたからといって、どうにかなるものでは、ないからです。奥歯を噛み締めて、溢れそうになる涙を上を向いて我慢します。

泣いてる場合じゃないの、美鈴! 私が颯太さんを助けないといけないの!

でも、溢れそうになる涙は、中々消えてくれなくて。


「思い出さないと……………」


不安で押し潰されそうになるけれど、それでも私がやるしかない!

火の神様の名前、それは、神話に出て来る神様、………………ヒノヤギハヤヲノカミ様! 別名、ヒノカグツチノカミ様。母である、イザナミ様より産まれ、そして父であるイザナギ様に殺された、悲運の火神様。

確か、誠心誠意お願いすれば、効果があるんでしたよね。教えて貰ったように、印を組み、必死に唱えます。


『伏して願い奉る、ヒノヤギハヤヲノカミ、我が望みは温もりの火、顕現せし給え』


ボッと言う音と共に、蝋燭の火と同じ位の、小さな火がブレスレットの赤い玉に宿ります。仄かな灯りですが、無いよりはマシです!


「颯太さーん、居ますかぁ―――――!」


大声で名前を呼びます。かなり広いようで、私の声は幾重にも谺します。少し、震えてしまいますが、それでも意を決して、洞窟のような横穴に、足を踏み入れます。

待っていて下さい、颯太さん。今、行きますからね。



◇◇◇◇◇


Side:榊原真由合



美鈴が、颯太とか言う依頼人の息子と姿を消してから、既に1時間。室内にも居ない上に、携帯は何度かけても音信不通。いくら温厚な雅様でも、焦りが見えるわ。


「本当、美鈴ったら、どこに行ったのかしら?」


まさか、駆け落ちかしらって、チラッと考えたけど、雅様が怒り狂いそうで、すぐに考えを散らした。嫌だわ、わたしったら。今は美鈴を探すのを優先しないと。


「ん? あら、これって」


式の一つが、美鈴の物を見つけたようで、反応があった。


「雅さま、式が美鈴の物を見つけたようです」


そう、わたしが報告した時の、雅様の顔、藁にも(すが)る思い、との例えがあるけど、まさにその通りで。本当に美鈴が大切なんだと感じるわ。

………………本人は無自覚みたいだけど。


「お願い、真由合! 僕をそこに連れていって」


あぁ、とても真っ直ぐな目で、本当に、どうしてこの方なのかと、嫌でも思い知らされるの。そんな複雑な内心を、綺麗に隠して、わたしは雅さまを連れて、式のもとへと向かう為に、歩きかけた時、和葉が慌てた様子で、目を見開いたわ。


「え? この反応…………美鈴ちゃん!?」


戸惑いが、かなり混ぜられた、その言葉には、何故か美鈴の名が。何か起きた訳よね?

明日には、和葉のお知り合いの術者と、探偵事務所の情報部が来るって言うのに、次から次へと、本当に問題が起きるわね。思わず額に手を当てた私は、悪くないわよ? 本当に頭痛がするだけだから。


「和葉、何があったの?」


それでも問い掛けた私、偉いでしょ?

まあ、冗談はさて置き。和葉の戸惑いは、未だ続いているの。


「美鈴ちゃんて、術は使えるんでしたよね?」


何を今更な質問を、和葉はしてるのよ。思わず呆れて、ポカーンとしちゃったわ。


「うん、美鈴は簡単な術なら、だいたい使えるって教えてくれたよ」


雅さまも、当たり前な事を言われた為か、少し怪訝そうにしてるわ。


「そうですよね…………、美鈴ちゃん、私の術に“調和する”ように、術を重ねているんです」


少し、和葉の口調が震えているわ。あの美鈴よ? 視る事に特化していて、特殊体質の美鈴よ?

その美鈴が、調和するように、和葉の術に重ねたなんて、寝耳に水の情報よ!?

私も、そして雅さまも、ぎょっとしたわよ! 悲鳴を上げないだけ、マシなレベルよ…………これ。


「と、とにかく、美鈴は無事みたいだし、迎えに行きましょう、あの御子息の件もありますし」


これ以上、問題を増やさないで! 頭を掻き毟りたくなるのを、寸でに押さえ、私は二人を促したわ。勿論、龍崎にも携帯で連絡したから、安心して行動出来るわ。


「そうだね、真由合、―――――案内して」


答えた雅さまの声が、淡々としている。

あ、あら? 何だか雅さまの機嫌が、一気に悪くなったわよね? 何か、余計な事を言ったかしら? 少し考えて、はたと思いついた。………………もしかして、御子息の事? そういえば、二人は一緒にいるのよね?

あら、そういう事?


「えぇ、急ぎましょうか」


式は確かに、反応をしているんだもの。美鈴を見つけるのも、もうすぐね。



◇◇◇◇◇


Side:美鈴



うぅ、暗いです。ブレスレットの石は小さいので、仄かな光である火は、頼りない物です。

それでも、ぼんやりとであるとはいえ、灯りがあるのは、本当に助かりますけど。


「これ、洞窟?…………岩場みたいですし、天然の洞窟みたいですね」


大小のゴツゴツした岩が、あちらこちらにあり、更に水が流れているようで、サァーサァーと音が聞こえます。


「運動靴で良かったです…………」


思わず独り言を呟きます。だって、本当に歩くの大変なんです。岩は時に、不鮮明な影となって、足場を見えにくくしますし。


「颯太さーん! 居ますか――――!!」


先程から、何度か呼び掛けているのですが、虚しく谺するだけです。段々と、虚しくなってきます。本当に颯太さん、居るのでしょうか? どうも、私が入って来た場所が水の流れから見て、終点の場所のようなんです。だから、方向等はあっているはずなんです。広いですが、一本道ですから。


「私、どこまで歩いたのかしら…………?」


それに、例え抑えていても、私も霊能者ですから、違和感くらい感じます。

………………ここ、何だかモヤモヤします。こう、上手く言えないのですが、漂う空気が重いと言いますか。とにかく、違和感があるんです。


「確認は、しておいた方がいいですね」


危険である以上、確認は大切でしょう。そうと決まれば、そっと眼鏡を外します。

一瞬にして変わった視界と光景に、私は目を見開いて、ただ、その景色に見入られたのでした。


お読み頂きまして、ありがとうございます!


ようやくここまで来ました…………。取り敢えず、次とその次の話で、洞窟のお話は終わり、ようやくコラボがスタートします! 3人を今からどうするか、楽しみです。

推理の方ですが、皆様いかがでしょう? 原因は分かりましたか? 分かった方、どうぞ秋月と答え合わせいたしましょう☆ 皆様の推理を楽しみにしてますね。

では、また次回、お会いしましょう♪

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