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7話 デッドセル

扉をあけると、そこはジャングルだった。

頭の悪そうなオスと、ケバケバしいメスのモンキー達が、酔っ払ってちちくり合っている。

少なくともスリフォのライブを見た場所と同じ用途の場所とは思えない。


「なんだなんだ、ここだけ旧石器時代か?進化に逆らいすぎだろ」

俺は珍しくアドレナリン全開だった。

というか、自分でもよく分からない程キレていた。

人の気持ちを弄ぶようなやつらは許せない。

一斉に視線を浴びる。

「揃いも揃ってエセパンキッシュな格好しやがって」

「あ?殺すぞクソガキ」

リーダー格らしい人物が威嚇してくる。

さっき相馬を蹴ってたやつだ。

「パンクってのはな、暴力的な態度で威圧して虚勢を張るためのもんじゃねえんだよ。心が強いやつしかパンクは出来ねえ!」

部屋で体躯座りをして音楽ばかり聞いていた頃の俺に光を与えてくれたパンクバンドは、見た目こそ派手だったが、曲はどれも優しさで溢れていた。

「なにあの子、厨二こじらせすぎ、痛い痛い」

ヒソヒソと女の笑い声が聞こえてくる。

「おいババア、聞こえてんぞ。お前らこそこんなとこにいて孕んだとき誰の子か分かんの?」

「はあー?マジムカつくんですけど」

コウモリみたいなまつ毛しやがって。

「おい、いきなり煽ってどうする、何しにきたんだよ!読書はどこいった!?」

相馬が小声でささやく。

「なんだこのガキ頭大丈夫か…って、隣は巧じゃねえか。ちゃんと金持ってきたか?」

うぜえー、でも怖ええええ。

つかみんなガチムチすぎだろ、足が震えてチビりそうだ。

「その事で話があって来ました」

相馬が冷静な口調で切り出す。

「なんだよ、今更縁切りたいとか言い出すのか?あんなに良くしてやったの忘れたか?」

ブチッ。

相馬がキレた音がした。

「…てめえら全員殺す。表でろ、俺のバイトまみれだった一年分殺す」


10人程のガチムチヤンキーと共に外に出ると、雨が降っていた。

裏に連行される。

そして、相手と対峙した。


相馬に話しかける。

「裏切られるのは…本当につらい」

でも、今の俺にはいつも気にかけてくれる智沙。

俺のATフィールドに土足で踏み込んでくるマノケン。

そして、純粋で無垢で誰よりも優しい心の雨宮が側にいる。

「だけど俺は、これから音楽でそれを変えていくつもりだ」

「お前…」

相馬は俺のかっこいいセリフにちょっと感動している。と思いたい。

「ちなみに俺は喧嘩弱いぞ。元いじめられっこだ!」

「お前馬鹿だろ」

「お互い様だ」

話していると、相手のガチムチリーダーが煽ってくる。

「おいおい、熱い友情ごっこか?まあ良かったじゃねえか巧、友達出来て」

「友達じゃねえよ、俺こいつ嫌い」

「は?じゃあなんで…」

「これから俺のバンドに入る仲間だから」

「馬鹿馬鹿しい、やっちまえ!」

「悪役丸出しだな、あんたら」



……結果、二人してボコボコにされた。

今日だけで何体の体細胞が死んだだろう。

泥まみれで、身体中の穴という穴に泥水が侵入していた。

でも、俺たちのしつこさに、連中は「もう関わらない」と言った。


「お前顔ヤバイぞ」

「いや、多分お前のがヤバイ」

ゲラゲラ笑った。

「…バンド、やってやってもいい」

「言ったね?今、言ったからね?」

「あ?ああ。つかお前、楽器上手いの?」

「Fが抑えられないレベル。ちなみに当方ギターボーカル希望」

「やっぱやめる!」

「待ったなしー、もう決まったー」

「詐欺じゃねえか!」



こうして、相馬は翌日から登校するようになった。

俺たちの腫れ上がった顔のせいで校内では「休学明けの不良とB組の遅刻魔が派手な喧嘩をしたらしい」という根も葉もない噂が流れた。


「またおかしなメンツだな」とやっさんに苦笑いされながら、


俺、マノケン、相馬、雨宮は、同時に入部届けを提出した。


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