33話 スリープナウ・インザファイア
曲を歌い終え、最後にメンバーとアイコンタクトを取りながら最後のコードをかき鳴らす。
自然と、三人は笑顔になっていた。
マノケンのドラムロールから、全パートを合わせ、ライブは終了した。
「ありがとうございましたああああ!!!」
そう叫ぶと、館内は湧き上がった。
満員の館内を見渡すと、優と目が合う。
優は目に涙を溜めながら微笑んでくれた。
俺も微笑み返す。
君が居たから出来たんだ。
君じゃなきゃダメだったんだ。
本当に、ありがとう。
こうして俺たちの学園祭ライブは幕を閉じた。
ステージの裏に戻りメンバーと拳でハイタッチをする。
「…最高だったぜ、ハル」
相馬が語りかける。
「ああ、マジで楽しかった…」
「浅見らしいクサイMCも良かったしね!」
マノケンが茶化すように笑う。
「うっせ。なんか言いたくなっちゃったんだよ」
俺たちがライブの感慨にふけっているとステージ裏に智沙が駆け込んできた。
「ハル!…お母さん…」
息を呑んだ。まさか…
「…無事だって!!手術は成功したっていま理香さんから電話入ったよ!」
「マジか…!良かった…良かった。本当に…」
ライブで過剰分泌されたアドレナリンはまだ消えていなかったが、それでも全身から力が抜けた。
「理香姉に電話いれてくるわ!」
俺は機材を片付けると、体育館の外に向かった。
出口には、腕を組んだアキさんがいた。
「よう」
「あ、あの…見てくれてありがとうございます」
「お前ら、化けるかもな」
「え?」
「今はまだ荒削りだけど…曲のセンス、感情の込め方、メンバーとのグルーヴ…久しぶりに痺れたよ」
「ま、ま、マジですか」
内心飛び跳ねたいくらいに嬉かった。
「必ず上がってこい。俺を超えたいんだろ?
いつか…対バンしよう」
アキさんは手を差し出した。
俺もそれに応じる。
今までにしたどんな握手より、熱い握手だった。
「んじゃな」
そう言うと、アキさんは帰って行った。
俺は右手を見つめながら必ずアキさんに、sleeping fallに追いつくことを誓った。
それから理香姉に電話をかけ、近日中にまた山梨に母さんの見舞いに行く約束をした。
再びメンバーと合流し、いつも練習していた空き教室に戻った。
三人の疲労はピークをとっくに超えていたらしく、誰からともなく、眠った。




