31話 ザ・ビギニング
俺の到着が遅かった為に、ギリギリまでメイマリが時間を引き延ばしていてくれたらしい。
メイマリのメンバーに目で礼を言った。
ステージには既に俺のギターがセッティングされていた。
俺とアキさんが話している間にメンバーがやってくれたのだろう。
というか、スタジオに置きっぱなしにしたギターを運んでもくれたんだ。
優に貰ったリストバンドを左手に付け、俺はステージに上がる。
時間はかなり押していて、俺たちのライブに使える時間は10分弱になっていた。
ステージの裏でメンバーと円陣を組んだ。
「ハル、お袋さん、大丈夫なのか」
相馬が話しかけてくる。
「わからない。でもこのライブは全力でいく」
「…わかった。時間がもうほとんどない。一曲に全部叩き込むぞ!」
マノケンは俺の気持ちを察し、深く相槌を打ってくれた。
俺はここに来るまで、こいつらに支えられっぱなしだったな。
「…俺さ、」
「ん?」
マノケンと相馬は俺を見る。
「マジでお前らとバンド組んで良かった」
「なんだよ急に」
2人は照れくさそうにハモった。
「正直今、頭ん中色んな事がゴチャゴチャで、苦しかったり、嬉しいこともあったり。でもそれを音に変えて響かせられるんじゃないかって思うんだ。俺たちなら。…だから頼む、このライブ、力を貸してくれ」
「バッカ浅見、そんなん当たり前だろ。それにこれで終わりじゃない。こっからはじめるんだ」
マノケンは前歯を見せて笑う。
続いて相馬が口を開く。
「ハル、俺はいつだってお前の力になる。気付いてないかもしれないけどな、俺たちはお前に救われて今ここに立ってるんだ。どこまでだってついてくぜ」
「くっそ…本当、よくもこんな馬鹿が三人揃ったな…!」
目頭が熱くなる。
「行けるか、ハル」
相馬が問う。
「ああ、最高のライブにしよう…!」
今までのどの円陣よりも熱い掛け声で気合いを入れ、俺たちはステージへ向かった。
ギターを肩に掛け、マイクの位置を調整する。
アンプのツマミを最終確認し、1ストローク。
ああ、やっぱり俺は真空管の音が好きだ。
そんな事を思う。
メンバーそれぞれが位置につき、ライブの始まりを告げるアイコンタクトを取る。
客席はざわついていた。
なんせ校内で1度もライブをした事がないバンドがトリなのだから当たり前だ。
そして、静寂が流れる。
手が震えた。
初めて書いた曲、満員の観客、母さんの想い…
俺の心が弱ってきた時だった。
完全アウェイな体育館のホールから甲高い声がした。
優だ。
「ぶちかませぇー!!!ハルー!!!」
優らしくない口調と声量に、思わず吹き出しそうになる。
俺はそっとリストバンドに手を当てる。
ありがとう、優。
智沙や七海、加奈も続いて声を上げてくれた。
よし、いける。
三人の目が合い、マノケンのドラムロールから派手にEのコードをかき鳴らす。
俺は腹の底から叫んだ。
「Awaking Spring、始めます!!!!」




