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12話 コーフィ・ショップ

私は抹茶フラペチーノ、マノケンはブラックコーヒーを頼んで、カウンター席に着いた。

横顔が見える形になる。

まじまじ見ると、本当に整った顔だなあ…


「フラペチーノ、うまい?」


「う、うん、んまい!マノケンはっ?」


「美味いよ、やっぱコーヒーはブラックが至高」


「大人だねぇ~」


「浅見は苦いの嫌いなのに無理して飲んでるみたいだけどね、かっこつけて」


「浅見くんってクールに見えて意外とアホだよね、実はちょっと熱血だし」


マノケンはあはは!と笑う。


「あいつはあれでいいんだよ。俺はあんなやつだからこそ友達になったんだ」


ちょっと妬けちゃうかも。


「マノケンと浅見くんって、どうやって仲良くなったの?」


「まあ、全部説明すると長くなるなあ」


「全部聞かせて!マノケンの昔の事も!…あっ、いや深い意味はないんだけど…」


私はストローに口をつけてぶくぶくさせる。

下品だ。良くない。でも恥ずかしいから仕方ない。


「七海ちゃんなら、話してもいいかな。これは浅見にも相馬くんにも内緒ね」


「うん。私口硬いから」


ちょっと嬉しかった。

秘密主義な所があるマノケンの話を、聞かせて貰える。

私だけ。


「んー、おれんちさ、貧乏だったんだよね、かなり。そんで俺が小学生の頃、図工の時間に絵を書いたんだ。それが選ばれて出展されて、色んな賞を取ってさ」


「うん」


「両親も最初は凄く喜んでくれたんだ。

でもその絵を高値で買いたいって人が出てきてさ、徐々に俺の絵は「商品」になっていった。

そんで、家計が厳しかったのもあって両親はだんだん俺に絵を描く事を強制する様になった」


なんか、気持ちが分かる。

マノケンに比べたら小さいけれど、私がモデルを始めたのも、幼い頃、両親に言われるがままだった。

そして、今もバイトがてら惰性で続けている。


「それだけなら良かったんだ。自分の才能が家族の役に立つなら。

だけど、両親は俺と妹を比較して妹を罵倒するようになった。

妹はごく普通の、可愛い女の子だったのに、家で居場所を失くしてしまった。俺のせいで。

…両親だって最初からそんな風じゃなかったんだ、でも人は、繰り返すうちに罪悪感を忘れて、慣れていく」


私は相槌を打つ事しか出来ない。

それでも必死に、食い入るように話を聞いた。


「俺は、それだけは許せなかった。

俺が居なくなれば、絵を描かなくなれば、きっと両親も元に戻って妹を可愛がってくれる。

そう思って家を出た。

そんで、じいちゃんちに転がり込んだ。頑固じじいで大変だけどね」


なるほど…話が繋がってきた。


「それから、喜多高に入学してさ、もうその時期は周りが敵にしか見えなかったよ。

だから、何をやるにも本気を出さない事に決めてた」


「…うん」


「そんでクラスを見渡して、どうせ「こんな奴と初めて会った」なんて思える人間なんて居ないと思ってたんだ。

そしたらさ…」


「浅見くんが、居たんだね」


マノケンは笑いながら話す。


「そう!入学したばっかでさ、周りがみんな浮かれてる教室の中で、1人でイヤホンつけて本読んでる変な奴がいたんだ。

話しかけてみたらさ、あいつなんて言ったと思う?」


「んん〜なんだろ?わかんない」


「馴れ馴れしい。話しかけんな。だって!

もうなんかそれがおかしくてさ、どんだけ拗らせてんだよって。

その場で爆笑しちゃったんだよね」


「それはウケるね、シュール」


「でしょー?

そっから浅見はイヤホン取ってキレて来たんだけど、話せば話す程面白くて、こいつとなら高校生活楽しめるかなって思ったんだ」


「それで、誘われるままにバンドも入ったんだね!」


「まあ、ドラムが予想外に楽しかったってのもあるけどね。

あいつらとバンドを始めてからさ、自分の才能が嫌いじゃなくなってきたんだ。

妹を不幸にした才能も、あいつらの力になれるんだって」


マノケンの話を聞いたら、どんどん自分の中でマノケンの存在が大きくなっていくのを感じた。

今までよく頑張ったねって言ってあげたい。


「わたしも!マノケンが軽音入ってくれて、仲良くしてくれて嬉しい」


「ありがとね、七海ちゃん」


マノケンは柔らかく笑う。

この人って、ずるい。


「そろそろ出よっか、あんま遅くなると危ないし。七海ちゃんは可愛いんだから」


「……」


私達は、店を後にした。


「ねぇ、マノケン」


「なにー?」


「さっき可愛いって言った?」


「言ったけど?」


「お世辞?」


「いや、正直メイマリで1番、てか全校生徒でも1番だと思う」


「じゃ、じゃあさ、私のこと、好き?」


「そうだね、じゃなきゃあんな事話さない」


「じゃあ、私達……」


マノケンが、人差し指で私の口を押さえた。


「ーーっ!?」


「俺はまだ、出会ったばかりで七海ちゃんの事を良く知らない。

見た目や上辺だけで好かれるのは、七海ちゃんは嫌いなはずだ。違う?」


図星だった。


「だから、これから時間をかけて七海ちゃんを見て行きたい。

そんで、全部好きになる。

それまで待っててくれる?」


「……はい」


「でも七海ちゃんモテモテだからチョッチ心配だなーっ」




今日聞いた事、あった事は、二人だけの秘密だ。


明日になれば、またマノケンは適当なヘラヘラしたやつに戻る。


私も、今まで通りで居られるようにしなきゃ。



きっと、無理だと思うけど。


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