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こんな夢を観た

こんな夢を観た「フユウミンになる」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/09/26

 朝、目を醒ますと、枕もとにカードが置かれている。


 〔その者、金色のカズノコをくわえ、天上をいざゆかん by 匿名希望〕


「何だろうこれ」眠い目をこすりながら読む。さっぱり、意味がわからない。

 チャイムが鳴ったので、パジャマ姿のまま玄関に立った。

 ドアを開けると、ピンク色をした大きな毛玉が転がっている。

「誰だろう、こんなところにバランス・ボールなんか置いて」蹴飛ばしてやろうと足を振り上げると、ボールがいきなりしゃべり出した。

「おい、蹴るのはのやめろ。遊びに来てやったんだぞ」そのバリトンには聞き覚えがあった。

「あ、知ってる。ポンポンパウンスでしょ? また来たんだ……」わたしはうんざりして溜め息をつく。

 毛玉から棒のような手足がニュッと出ている。顔はイルカに似ていて、まん丸い目と尖った口。


「そう、おれ、ポンポンパウンス。お前、今日はフユウミンになる。おれの手につかまれ」ポンポンパウンスはそう言って、細い手を差し出す。

「そんな竹ひごみたいな手、掴んだら折れちゃうんじゃない? それに、フユウミンって何さ?」わたしは聞いた。

「フユウミンはフユウミンだ。それに、おれの腕、見た目ほど柔じゃない」口ぶりからは感情を害した様子もない。

「じゃあ、握ってみるよ。折れても知らないからね」わたしはポンポンバウスの手を取った。軍手のような手のひらは柔らかく温かかった。試しに揺すってみたが、針金ほどしかないその腕は、まったくびくともしないのだった。

「へーっ、本当に頑丈なんだ!」わたしは素直に驚く。

「言ったろ?」とポンポンパウンス。


「で、これからどうなるの?」わたしは聞いた。。

「おれ、『ポンポン』と言う。そしたらお前、『パウンス』と叫べ。いいな?」

「うん」

「ポンポンッ!」ポンポンパウンスがよく通る低音を響かせた。

「パウンスッ!」すかさず、わたしも大きな声で続く。

 わたし達の体は地面を離れ、あっという間に雲の上へと舞い上がった。

「すごいっ。これって、ロケット噴射か何かだよね。今、飛んでる最中? それともふわふわと浮いてるの?」興奮のあまり、わたしの心臓は痛いほどバクバクと打っている。何しろ、生身の体で空を飛ぶなんて、初めての経験なのだ。


「お前、おれの手、離していいぞ。おれ達、今、フユウミンだからな」

 わたしは恐る恐る、握っていた手を緩める。

「ほんとだ、1人でも飛べてる! そうか、フユウミンって、空の住人になるってことなんだね。こりゃあ、面白い。最高だなぁっ!」

 まるで、プールで泳いでいるようだ。手足をバタバタさせれば進み、休めば止まる。しかも、水の中と違って、息継ぎは要らないし、沈んだりもしない。

「気流に乗って、世界中も回れるんだぞ」ポンポンパウンスは言った。

「途中で落ちたりしないの?」

「落ちたいと願わなければ。それがフユウミンだろ? 違うか?」世の常識とばかりに答える。

「ふうん、そういうものなんだ……」


太陽の光がだんだんと強くなってきた。地上を見下ろすと、赤い帯が描かれている。

「あれ何だろう。レッド・カーペットみたいだけど」

「学校で習ったはず。あれ、赤道」ポンポンパウンスが教えてくれた。

「あ、そうか。じゃあ、もうだいぶ南に来ちゃったんだ。空の上って、そんなに暑くないから気がつかなかったよ」

「おれ、このまま南極行く。でもって、裏側を回ってから世界を一巡りする。お前、どうする?」ポンポンパウンスが聞く。

「うーん、どうしようっかな。夕ご飯までに戻りたいから、また今度にしようかな」

「そうか、なら帰れ。また遊びに行く」

「うん、また遊ぼうね」わたしは手を振って、ポンポンパウンスと別れた。


 わたしは北に向かって泳ぎだした。

 日本の上空まで帰ってくると、「地上に降りたい」と心の中でつぶやく。

 体に重力を感じ、すーっと地面に向かう。

「慌てず、ゆっくりと静かに」わたしは自分にそう言い聞かせる。早く戻りたいと焦るあまり、すとんっと落っこちでもしたら大変だ。

 たっぷりと時間をかけ、家からほど近い空き地へと降り立った。

「飛ぶ時は、こう言うんだっけ。『ポンポン、パウンスッ』」声に出して試してみたが、1ミリも浮きはしなかった。「やっぱ、ポンポンパウンスが一緒じゃないとダメか」

 

 部屋に帰ると、テーブルの上にメモが置いてある。


 〔南極の氷。かき氷にすると最高。 by ポンポンパウンス〕


 なあんだ、もう地球を1周してきたのか。

 冷凍室をのぞくと、大きな氷の塊が入っていた。まだまだ暑い日が続く。

 せっせとかき氷を作って、残暑を乗りきることにしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] いいですよね。空を飛ぶ夢。私は、長い間見ていませんけれども。。なにかを失った気がしている日々です。
[一言] ポンポンパウンスの再登場、嬉しいです(*^_^*) カズノコは一体何のお告げだったのでしょうね。 赤道が赤く見えるのがとても印象的でした。 偉そうな口調だけど親切で夢のあるポンポンパウンスが…
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