2―旅の始まり―
2―旅の始まり―
太陽の位置、月の位置、星の位置。光の見えない深い森。
青年 プリストは一人部屋でごごちていた。
「早9年…」
もやもやは消えない。
勇者の修行と称して魔界領の森で9年もいるのである。
なぜ魔界にいるのか。至極簡単である。
協力者がいるに他ならない。
魔王が時を止めて早10年。
絶対無敵の干渉阻害によって固まっている。
元来、魔王は倒される度に継承されていく。
数ある種族からランダムに継承の刻印が現れ、絶大な力を得る。
今回の魔王は大変呪文に詳しい種族らしく、その継承を恐れた故に自らを止めた。
その為、空白の安息と呼ばれている。
ここまで長い魔王不在の期間は今までなく、人間界は安定してきていると言える。
そうはいっても魔王がいないうちの覇権争によって争いは起きてはいる。
今回の魔界領滞在も、時期勇者に魔王を倒させる為の協力にすぎない。
ふと、気がつくとガタイの良い男がいた。
どうやら物思いに耽りすぎたらしい。
耽美な顔立ちに輝く髪、たち振る舞いは達人のソレ、口を開けば唯我独尊。
独特の雰囲気をもった男性、タス。
あまりの強さから歴代最強の勇者候補と言われ、勇者でありながら魔王とも言われていた。
『お告げ』というスキルで視る限り、タス師匠より強い人間を見たことがない。
「ふっはっはっははー、喜べプリスト。旅立ちだ」
とガンガン背中を叩きつける。
ガリガリとHPを持っていかれるのは内緒だ。
「どうやらあと数年できれるらしい。早くぶち込みたいよな! 魔王の横顔によ」
拳を握って同意を求めてくるのが絵になるのもどうかと思います、師匠。
「残念だけど、俺じゃもう殴っても効果は薄いしな。プリストがぶん殴ってこい」
効果が薄い。つまり『勇者熟練度』が低いということ。
この『勇者熟練度』と呼ばれるものは、魔王や魔王から力を授かったモノの力を削ぎ落とせる力である。
魔王継承と違い、適性があれば勇者になれる。
ただし、適性を持っていても数値が低かったり限界値が低ければ効果はない。
最低50以上なければ使い物にならないが、これがなければ熟練者でもダメージをいれるのは容易でないと言われるくらい重要なものだ。
また、25歳を境に年々数値は低下していく。
現に師匠の『勇者熟練度』は年々下がってきているし、何より俺が唯一勝てる部分であった。
「し、師匠痛いですって。何よりあと数年あるならもう少し修行したほ
「なんというかここあきね?」
なんだろうこのさっきのもやもやが一発で吹き飛ぶ感じは…悲しい。
「あきたし、数年ならパーティーで経験積んどけ」
もやもやが一気に希望に変わりました、さすが師匠。前のセリフは聞かなかったことにして。
「俺のパーティーが目ぼしい奴を鍛えてるからそいつらと合流する」
「師匠のパーティーというと、僧侶・魔法使い・侍・武道家かぁー」
「よし、そうと決まれば出るぞ」
ああ、そうでした。そういう人でした師匠。それと勝手に俺の服脱がすの止めて下さい。
「あ、そこは…らめー」
師匠の戦利品を勝手に付けられ、早々と旅立つ勇者達であった。




