1―メイン回復―
1―メイン回復―
太陽が空高く上る。一面に青空が。雲一つない空。
平時ならさぞ綺麗な何処までも広がる青空であっただろう。
しかし、今。
5人のパーティーと一匹が"ソレ"が許さない。
砂煙が空を汚す。
戦斧と呼ばれる大斧を右手に、小型で投斧としても使える片手斧を左手に持つ、デブのシーフ。
空に水流。
般若の面と全てを隠すマントに身を包み、印を結ぶ忍者。
数多の黒い影が空に。
兜突きを狙うスケルトンを使役するのは、漆黒幼女のネクロマンサー。
そして対面するはその巨体。
人を凌駕する体躯から唸りをあげている。
その体格からは想像できない速さで斬りかかれ、傷口からは毒の水流を。
痛みのあまり、怯んだ。
その引いた頭を逃さないとばかりに数多のスケルトンの兜突きが刺さる。
ドラゴン―スピットドラゴンは痛みを怒りに火炎を空に吹き上げる。
火炎で空はゆらぐ。
「――――!」
劈くような咆哮からすぐさま頭にドリルのついた少年狙って、牙を向く。
血を垂らしながら、怒りと苦しみを全てぶつける一撃の噛み砕きだった。
しかし、向かうのは天才学者のガンナー。
フラッシュ。炸裂弾をカウンター。
巨体が反動で大きく崩される。
その衝撃にたまらず声をあげる。
それを好機とばかりに勇者はメイスを振り下ろす。
「メテオストライクッ!」
血管、神経が集まる急所。延髄。
そしてメイスの先端から放たれるゼロ距離雷撃が叩き込まれた。
攻撃を薙ぎ払うかのように前足を振り回す。
その時にはもう全員攻撃範囲外へと移動をしていた。
まるでそうなるかを予測した動きであった。
「汝らの安全を一人、二人、三人、四人! ゼンカッフク」
「沁み渡りまっせー、しかっし勇者はんの攻撃ひっさしぶりにみわしたわ」
「うっせー、魔法使いも戦士も僧侶もいないとかどういうことだッ!!」
太ったシーフが、今さらでっせーと言いながらホホホーと笑う。
「何を言うのじゃ。我のスケルトンにも魔法使いがいるでないか」
ぷーっと怒って抗議する幼女のネクロマンサー。
「非番で出せないとかどういうことなの…」
「プリストは我をブラックにする気なのか」
「だから名で呼ぶなと言ってんだろうがぁーー!」
ここには5人と一匹のみであるが毎回のお約束なので即座に訂正をいれた。
そんなやりとりをしているうちに忍者は分身を終えたようでスピットドラゴンに向かっていく。
忍びもせず堂々と正面から。
牽制の火球が忍者を襲う。
その瞬間、実像から虚像に。そして溶けて消えた。
「残像…」
実像は横側に周り再度、シーフの開けた傷口に毒を刺し込み即座に離れる。
最小限に抑えたシーフの足音とは違い、音もなく勇者の背後に戻る。
「うむ、あとどれくらいなのじゃあ?」
「あと一回といったところかと」
その言葉を聞いたパーティーは再度戦闘態勢に入り走り出した。
ただ一人、ドリルを頭につけた学者を除いて。
先陣はデブシーフ。
このパーティーで忍者より早いという異質なシーフであった。
無論、ソレも名はドラゴンを有する。
シーフが動いたのを即座に感知し、尾による広範囲攻撃で出迎える。
その尾すらも誰より早く感知したのもシーフだった。
斧をクロスに張る。
ガリガリと鉄と鉄を擦りあわせた音と共に、その体格で尾を受け止める。
その後ろから勇者が回復を重ねていたのは言うまでもない。
仕切り直しとばかりに体制を直そうとして、足を動かした。
それがいけなかった。足に骨が絡まっていると知った時にはもう遅い。
「ふはははー、捕縛骨なのじゃー」
四肢が綺麗に白いラインで縛られている。
何よりこの巨体のドラゴンですら千切ることはできない。
そもそもこの骨は物理的なものでありはするが、魔力のこめられた骨である。
たとえ圧倒的な力でも。魔法をかき消さない限り千切ることは叶わない。
そして一刺し。
瞬間、全ては動かなくなった。
神経毒といわれる毒がある。
神経細胞に特異に作用し、さまざまな現象を起こす。
今回は麻痺であり、一定の量をとれば急速に起こる。
その遠く、計算を終えたドリルの少年が声を発する。
「こっちも準備OKだよー、逃げてねー」
その言葉をきいたパーティーはドラゴンから離れる。
もちろん一番最初に着いたのはシーフ。次に忍者、騎馬を組んだスケルトンに運ばれるようにネクロマンサーが。
天から放たれる、直線状の光線がスピットドラゴンに当たる。
見上げる空から二つの太陽。二つのうちの一つは落ちてくる。
発射地点から自分に向かって、一直線に落ちてくる。
次に見えたのは真っ白な空を隠す光。それが最後の光景だった。
「サテライトぶっぱとかぁああありえねえぇぇいいいッ!!!」
力の限り踏み込んだ。
ドラゴンとドリル少年の真ん中の距離で床ぺロ、またはプリ尻を晒し勇者がいた。
天からの一撃範囲からギリギリで脱出したのだった。
「身の安全を、ゼンカッフク…」
と自分を回復する勇者であった。




