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第5話 人選

 会議が終わった後リューホはさっそく仕事を始めた。本来ならば休みたいのだがそんなことをしている暇がなくなってしまったのだ。リューホが仕事をしているのは騎士団総本部の一角に位置する団長室である。公務用の机、接客用の机とソファ、それからいろいろな騎士団にまつわる道具が左右の壁や棚の上に飾られている。

 そんな部屋の中でリューホは分厚い本のような資料を開いてずっとにらめっこしていた。リューホが見ているのは騎士団の所属者全員の履歴書だ。


 「さて、誰を戦場に送るのか。こりゃあ、僕には責任重大だな。誰を殺すかという選択をしているからな」


 この戦争に騎士を送ってもしもその送った人が死んだらリューホは人殺しとなる。そんなのは嫌だ。リューホはそう思っていた。なので、下等団員からは選出せず実力のある者だけを選んでいたのだった。上等団員と中等団員の中から魔導器を発動することができる者のみを選び抜いていた。その中には親友でもあるジランも含まれていた。


 「ジランはどうしたものか。奴はあれでも上等団員筆頭だし、前線には行かせない方が良いか。でも、軍の連中は指揮官も必要と言っていたしな……どうしたものか」


 リューホは1人部屋の中で悩んでいた。結局のその日は結論出すことができずに仕事を終わらせて帰って行ったのだった。


 翌日。

 リューホはジランとこの件について話をすることを決めた。場所は騎士団室でだ。


 「おー、リューホ。お前から俺を呼ぶとは珍しいな」


 「こら、その減らず口をどうにかしろ。今日は僕個人の意見ではなく公務だからな」


 「公務か。お前ももう少し気を抜けよ」


 ジランはそう言う。もちろん、リューホはその性格上から本当はもう少し気を抜いていたいというのがある。だが、騎士団の長である騎士団長という立場では流石にそこまでのんきにはいられない。最初はのんきにしていたこともあるが途中からはあることがあってそうはいられなかった。ジランみたいに上等団員筆頭のくせにあんまり働いていないのとは違うんだとはリューホは決して言わないがジランを睨みつける。


 「まあ、いい。それより早速本題に入るが騎士団にも軍から戦争の最前線に参戦しろと命令が下ったのだが誰を派遣するかで迷っているんだ」


 リューホはジランに今回の会議の内容を伝えた。ジランは静かにリューホの話を聞いていた。リューホの話が一通り終わると固く閉じた口をあけた。


 「そういうことがあったのか。で、どうして俺に言うんだ?」


 ジランはなぜ俺に意見を求めると聞いてきた。


 「それは……」


 リューホは理由を言うことができなかった。


 「俺よりも先に副団長……ケント副団長に言うべきではないのか?」


 ケント副団長。若くして騎士団の副団長になった天才だ。リューホは自分よりも天才であるケントには何も言わないと決めていた。


 「いや、ケントはまだ先がある。ここで泥をかぶせるわけにはいかない。それに例の件もあるしな」


 「……例の件か」


 リューホとジランの2人は例の件という言葉しか言わずそれ以上は語ろうとはしなかった。ただ、リューホ自身は例の件は相当悔やんでいる。この帝国に対して疑念を抱くようになったのは例の件からだ。ケントの幼馴染の前中等団員筆頭とその彼女の前下等団員筆頭との間に起った悲劇。あの事件のせいで優秀な部下が2人もいなくなったのだ。リューホとしてはそれが残念であるというのは建前であり、この事件の背後にある黒幕の方に怒りを抱いているのだ。


 「分かったか。ともかく、僕はお前に相談したい」


 リューホは話を本題に戻す。


 「で、俺には何をしろと」


 ジランは何かを察したみたいですでに何をさせるんだと言う。


 「ジランにはこの前線に送る部隊の隊長をやってもらいたい。部下の人選は僕とお前でやる」


 ジランはなるほどと頷いた。


 「分かった。引き受けようこの任務」


 「任せたぞ」


 リューホはそのあとジランと共にこの任務に行く部隊の人員の推薦を行い翌日に招集して明後日には戦場へと出発することを決めた。

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