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第3話 隠し事

 リューホ達が帝国軍に入団してから少しが経った。


 帝国歴298年。

 もうかれこれリューホとジランが帝国軍に入団してから3年の歳月が経過していた。リューホはこの3年は軍の中で魔導器の使い方を習ったり戦略の立て方を習ったりと必死に軍のエリートに出世するためだけを目的に勉強してきた。だから、あれ以来一度も故郷であるスイリンには帰っていない。それは、ジランもだと言いたいところだがジランは1年に一度は帰っている。だから、帰りたいのならいつでも帰れる。そうなのだがリューホは一度も帰らない。絶対に一人前の兵士になるまではと心の奥にひそかな誓いを立てている。


 「リューホ、リューホ」


 朝からリューホの名前を呼ぶ男がいた。リューホを呼ぶのはもちろんながらジランだ。

 現在地は帝都ヴァリオンにある帝国軍兵士のための宿舎。その中の1つの部屋だ。リューホとジランは同郷だからやりやすいだろうと同じ部屋割りなのだ。

 そして、今は朝。ジランはなかなか起きようとはしない相方を呼んでいたのだ。もう既にジランは兵士の正装に着替え終わっている。だが、リューホはまだ寝ていたために着替えてもいないうえに今日の演習の準備すらできていない。


 「あ、朝か」


 リューホは目をこすりながら起きた。まだ、眠そうだ。


 「おいっ! 今日は演習だぞ」


 ジランは言うがまだまだ眠気に負けているリューホはぼけーとしている。ジランはその姿に呆れてしまい、


 「先に行くからな」


 そう言って、部屋から出て行った。そうなると部屋に残されたリューホは再び布団にダイブする……ことなくしっかりと起き上がった。


 「早くしないとか」


 リューホは起き上がる。実はわざと眠たそうなふりをしていたのである。


 「あいつにばれるわけにはいかないからな」


 リューホはそういうとジランの来ていた演習用の服とは違う正式の騎士が着る服装へと着替えていた。


 「あいつ怒るだろうな」


 実はリューホは一足先に見習い兵士は卒業している。リューホの実力は帝国軍の幹部が認めているものであり特例的に騎士に正式に任命をされていたのだ。これがジランに知られたらどうなるか……想像したくないとリューホはずっと黙っているのだ。ちなみに軍に入るのと騎士団に入るのでは圧倒的に後者の方が難しい。それだけリューホの実力は軍の幹部から認められているのだ。


 リューホは部屋をようやく出て演習が行われる広場とは反対のマドー城へ歩いていく。


 ─マドー城


 「おはようございます」


 リューホは挨拶をした。リューホはまだ騎士に正式になってから一週間しか経過していない。つまりは新参者だ。だから挨拶や雑用といったことには気を付けないといけない。リューホ自身面倒なことだと思っているがこればっかりはどうしようもできない。


 「リューホ。真面目に働いているか?」


 リューホが真面目に見習いの仕事として雑用として部屋の掃除をしているところに後ろから声をかけられた。それは男の声であった。


 「……テツか」


 リューホは不機嫌そうにその自分の名前を呼んだ男を見た。リューホはこの男テツが嫌いなのだ。その理由はこの後嫌というほどわかる。

 リューホはこの男を見た瞬間さっさと出て行ってほしいと思った。


 「なるほどなるほど。掃除姿もいい様になってきたではないか。まぁ、お前には期待していないががんばれだけは言ってやるよ。それとテツと呼び捨てにするのは感心しないな。ここはなんか敬称を付けてほしいものだな」


 テツはそう言って去っていった。リューホが嫌いというのはこいつのこんなところだ。自分が天才だと思って他の奴を見下す。だから、リューホも当然のことながら見下されている。なんたって、期待されてないとまで言われているんだから。リューホはもし、我慢をするということを学んでいなければ一発蹴りでもきめているところだ。

 ただ、リューホはこのことをすぐに忘れる。いつまでも覚えていたら機嫌が悪くなるだけだからだ。


 「さて、次は……」


 雑用としての掃除が終わる。それで仕事がすべて終わりというわけではない。むしろこれからが騎士団としての仕事の本番だ。

 やはり騎士団と言われると戦闘だ。ということで戦闘の練習はもちろんする。リューホ自身にはめんどくさいし本当はやりたくないというのが本音である。そんなこんなで一日は終わり自分の部屋に帰ってくる。部屋に帰るといつもジランに言われることがある。それは、


 「お帰りリューホ。軍の演習に参加していたのか? 俺はお前を見なかったぞ」


 まだ本当のことをジランに話していないリューホはいつもいたぜとか何言っているんだよとか言ってごまかしている。もちろんそれは今日もすることだ。


 「もちろん参加していたぜ」


 リューホは悪びれもなく嘘をつく。いや、悪びれもなくではないだろう。実際は騙したくて騙しているわけではない。この関係が壊れるのが怖いだけなのだ。それがリューホがジランに実はもう騎士団に入団したということを話せない正当であり理にかなっていない言い訳だ。


 「そうか」


 ジランはいつも通り疑うことなくそのまま自分の武器である剣の手入れを続ける。リューホは重い体をそのまま布団に向かって動かし、ダイブして速攻で夢の世界へと旅立った。


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