第2話 旅立ち
盛り上がったお祝い会の翌日の朝早く。リューホとその幼馴染のジランは村の入り口にいた。それはこれから帝国の首都である帝都ヴァリオンに向けて出発をするところだからだ。軍の本部があるのはヴァリオンなのでそこに行くことは当然であるのだ。帝都ヴァリオンは噂によるとたくさん人が踏ん反り返っているめちゃくちゃ大きい街らしいとリューホは聞いたことがあった。こんな田舎町出身じゃバカにされてしまうのだろうか。リューホの心の中には期待と不安がたくさんみなぎっていた。それは隣りにいるジランとて同じであった。良くも悪くも似たものの2人なのだ。
「2人とも無事にこの村に帰ってくるんじゃぞ」
この村の村長ことジランのじいちゃんが挨拶を言う。それはまるでこれから戦争に行く兵士のの親のようだった。ジランはそのじいちゃんの態度を見て笑っていた。俺も横でつい笑いそうになってしまう。
「そんなじいちゃん。俺達は戦争に行くわけではないから暇になったらいつでも帰ってくるよ」
ジランは自分のじいちゃんに言う。俺は死なないぞと。そして、俺が兵士になる限りは戦争なんか絶対に起きない、起こさないと付け足す。
「そうか、それならいいのだが………」
ジランのじいちゃんこと村長はずっと心配していた。ジランの言葉には完全には納得したようには見えない。
「だから大丈夫だって」
未だ納得してくれない村長にさすがにジランも苦笑いだ。
さて、そこにリューホとジランの幼馴染のサッキーが近づいてきた。
「……サッキー」
リューホはその少女の名前を呼ぶ。
「元気でね」
サッキーは一言だけ発した。サッキーが泣くのをこらえてこんな朝早くから出迎えに来てくれた。その姿を見れたリューホは少しほっとしていた。リューホ本人としてはサッキーの最後の抵抗として来てくれないものとてっきり思っていたからだ。そしてリューホ達は、それぞれ一言だけをサッキーに言いした。
「もちろん、元気にしているさ」
リューホは強がっているのではなく本音で言う。リューホはこういう時こそ元気で明るくいおうなんて考えているのではなくいつもと同じでへらへらしているだけなのだ。
「サッキー、帰ってきたら話したいことが………」
ジランは何か言おうとした途中で言うのをやめた。彼には彼の考えがあったのだろう。
「ああ、やっぱり今のなし。まあ、元気でやるよ」
お互い言い残すことはもうない。少なくともリューホはそう思っていた。ジランが本当は何を言おうとしたなど今の時点では予想もできなかった。リューホとジランはお互いの顔を見てから同時に言葉を発する。
「「それじゃあ、いってきまーす」」
「いってらしゃい」
サッキーのいってらっしゃいの声を聞いた2人は元気よく帝都ヴァリオンに向けて旅立った。2人は未練を持たないで旅立ったのか村を振り返らない。スイリンの村にはすでに太陽が昇りきっていた。
そして、2人の歩く先にはもう既に太陽の光で光り輝いていたのだ。