『ファンタジーの世界に三八式歩兵銃を装備した青年がやってきた』
そのメールが来たのは突然の事だった。
『おめでとうございます!! 貴方は異世界『ファンタジーの世界で銃』の抽選に当たりました。是非とも下記のURLをクリックして下さい』
「……何じゃこりゃ?」
青年はメールの文を見てそう呟いた。
「……迷惑メールやな」
青年は文を見てそう判断をした。
「ま、ほっとくのが無難やな」
青年はそう言ってスマホををポケットの中に押し込んだ。
「……あかん、気になるな」
青年はバイト先から家に帰宅して部屋に入ると開口一番にそう言う。
「バイト中でもあの文が浮かんできたし、何でや?」
青年は首を傾げる。
「まぁメシ食って風呂入ってからにするか」
青年は部屋から出て階段を降りてリビングに入る。
そしてテーブルの上に置いていた自分の晩御飯を食べる。
既に時刻は夜の十二時を指していた。
「う〜ん、どうするべきか……」
青年は腕を組んで唸る。
「……まぁ一回だけクリックしてみる……か」
青年はスマホを出して先程のメールを出す。
「……ポチッとな」
某アニメの台詞を言いながら青年がURLを押した。
その瞬間、スマホから光が溢れだした。
「な、何やッ!?」
そして光は青年を包み込んだのであった。
「………ぅん……」
青年は風の音で目を覚ました。
「……此処は……」
青年が辺りを見渡す。
そこは自分の部屋ではなく、森の中だった。
「……何処や此処は?」
『『ファンタジーの世界で銃』の世界へようこそ!!』
「うわッ!?」
その時、青年の目の前に文字が現れた。
『村木誠さん、貴方はこの世界の抽選に選ばれました』
「何やこれ……」
『RPGの世界ですが、これから頑張って生き抜いて下さい。なお、現実の世界には戻れませんし、この世界でゲーム・オーバー、すなわち死亡しますので』
「あ、RPGやとッ!?」
青年――村木誠は驚いた。
『はい、武器ではありません。ゲームのRPGです。ではこの世界の説明をしましょう』
「ま、待てや。ほんなら俺はさっきのには戻られへんという事かッ!?」
『そうですよ。さっきも言いましたでしょ? あのメールをクリックすればこの世界へ繋がるように設定されてるので』
「……やっぱクリックせんときぁよかったぁ……」
誠が頭を抱える。
『では質問も無いようですし説明をします。この世界はRPGの世界なので魔物――モンスターがいます。モンスターがいればゴブリンもいますし、吸血鬼もいます。人もいますしエルフもいます。更にRPGの定番であるダンジョンもあります』
「はぁ」
『それにRPGの世界なので現実世界では無理なハーレムも出来ます』
「はぁ」
『元気が無いですね? 大抵の人が憧れるハーレムですよ?』
「そりゃあハーレムは凄いと思うけど、俺の体型はこんなんやしな。それにせっかく出来た彼女も些細な喧嘩してしまったし、それを横から見ていた友人に寝取られたからなぁ」
誠は自分のぷにぷにした腹を触る。
誠は一般的なオタクに有りがちな眼鏡でデブオタの類いであった。しかし、漸く彼女が出来て誠にも春が来たと思っていた。
だが、彼女が間違って本を捨てた事に喧嘩してしまい、仲直りしようとしたらイケメンの友人にいつの間にか寝取られたというわけである。
『まぁそれは人それぞれですから。話を続けますね。この世界で貴方が何をするかは自由です。世界を破滅するなり統一するなり御自由にして下さい』
「はぁ」
『それでは此方から武器を差し上げます』
「うおっと」
上から一丁の銃が落ちてきた。
「ボルトアクション方式の小銃……ってこれって旧軍の三八式歩兵銃やんッ!?」
誠に渡されたのは旧日本軍が使用していた三八式歩兵銃だった。
『流石に火縄銃やマスケット銃を差し上げるのはちょっと……。なのでボルトアクション方式を差し上げます。弾薬は三八式実包で弾薬盒を付けての百二十発を提供します。なお、弾薬はモンスターを倒せば手に入れたり町の武器屋で買う事も可能です。それと銃剣の三十年式銃剣をも提供します』
次々と何もない上から弾薬や銃剣が地面に落ちていく。
誠は落ちた弾薬や銃剣を拾う。
「いやでも……銃なんて撃った事ないけど……一応エアガンはあるけどさ」
『なら今試射してはどうですか? そこの木の枝を狙って、膝撃ちでも肩撃ちでも好きな撃ち方でどうぞ』
「はぁ」
誠は膝撃ちで枝を狙う。
タァーンッ!!
発射された弾丸は枝には命中しない。
『ハズレ〜』
「やかましいわッ!!」
誠はボルト・ハンドルを九十度上に起こしてボルトを後ろに引く。
引くと、空薬莢が弾き出されて弾薬が装填される。そして誠は再び木の枝を狙い引き金を引いた。
タァーンッ!!
今度は命中して枝が地面に落ちた。
『おめでとう〜。まぁダットサイトを差し上げますのでそれも使って下さい』
「初めから出せやッ!! てか三八式にダットサイト付けれるんか?」
『貴方のレベルが上がれば他の銃は武器屋で買えるようになっていますので』
「あ、そうすか」
誠は呆れたように言う。
『それではそろそろ時間なのでこの辺で失礼しますね。それでは良い人生を〜』
それから文字が現れる事は無かった。
「……マジで異世界何やろか……これで日本でした。「君、銃刀法違反ね」で逮捕されたら洒落ならんな」
誠が冷や汗をかいた。
「キャアァァァァァーーーッ!!」
その時、森の中に女性の悲鳴が響いた。
「……女性の叫び声……やな。取りあえず行ってみるか」
誠は悲鳴がした方向にゆっくりと進んだ。
「お、いたいた……っていうかあれは盗賊?」
人影が見えて近くにまで行くと紺をメインにしたシスター服を着た薄紫色の長髪をした女性と盗賊ぽいのが五人いた。
その盗賊の地面にはシスターの護衛と思わしき人間達が腹から血を流して倒れていた。
ピクリとも動かないから恐らくは死んでいるのだろう。
「……これはヤバい場面やな」
誠は少し離れたところの茂みに隠れている。
「ゲヒャヒャヒャッ!! さて残るはあんた一人だぜシスター?」
「く……これも神が私に下した運命なのですか」
女性はそう言って首からかけていた十字架に触る。
「……これってあのシスターぽいのが犯されそうな状況やな」
誠は呟いて自身が持つ三八式歩兵銃を見つめた。
「……早速実践かいな」
誠はそう言って三八式歩兵銃を構える。
「狙うは……奴等の首領。弾はさっき二発撃ったから後三発が薬室に残っている……新しい弾を出しとくか」
誠はそう言って前にある弾薬盒から五発の一セットにしたクリップを出した。
「……よく狙ってぇ……」
誠が盗賊の首領に狙う。
「さぁてどうやって犯してやろうか」
「……………」
盗賊の首領の言葉にシスターの身体が震えている。
「ゲヒャヒャヒャッ!! いいねその表情は……」
「撃つッ!!」
誠が引き金を引いた。
タァーンッ!!
「がぺッ!?」
弾丸は首領の喉を貫いた。
「お頭ッ!?」
突然、血を流した首領に盗賊達が驚く。
その間にも誠は空薬莢を出して弾丸を装填する。
「……ッ!!」
タァーンッ!!
「はぇ?」
今度は盗賊の頭を貫いた。
「ヘッドショットやな……」
倒れる盗賊に樹は呟いた。
「ひ、ヒイィィィッ!?」
「何処からだッ!?」
「何なんだこれはッ!?」
盗賊達が慌てる。
そしてまた銃声が響いて右目を貫かれた盗賊がゆっくりと倒れる。誠はそれを見ずにクリップを弾倉に装填してボルトを後ろに引く。
弾丸が薬室に装填されてボルトを前に押して九十度下に倒して薬室を密閉する。そして短剣を持って辺りをキョロキョロと見渡す盗賊に狙いを付けて引き金を引いた。
ヘッドショットを決められた盗賊が倒れる。
「ヒイィィィッ!?」
一人残った盗賊は遂に後退りをして逃げようとする。
「んなもん逃がすかいな」
誠は空薬莢を出して弾丸を装填して狙いを付けて引き金を引いた。
「ガパッ!?」
最後の盗賊は喉を貫かれて地面に倒れた。
「……ふぅ」
誠は息を吐いて茂みから出た。
「ッ!? 誰ですかッ!!」
シスターが十字架が先端に付いた杖を樹に向けた。
「ちょ、今助けたんから止めれ」
誠が慌てる。
「私を助けた? ……まさかさっきの音は……」
「あぁ、俺がこいつらをやった」
誠はそう言って地面に横たわる盗賊の死体を見る。
「………(夢に出そうやな……)」
誠はそう思うが目を背ける事はない。
これから何度でも起こりそうだから今のうちに馴れておこうとしたのだ。
「そうですか、助けてくれてありがとうございます」
シスターは頭を下げる。
「いや、たまたま俺がいたからな。ところでここらへんに町とかないの?」
「カルタゴの町でしたら私も行こうとしていたところですが……」
「良かった。なら一緒に連れていってくれませんか? 道に迷ってしまって……」
誠はそう言う。
流石に異世界から来ましたなんて言ったら変人と思われるだろう。
「はい、命の恩人ですから」
「ありがとうございます。あ、ちょっと待って下さい」
誠はそう言って死んだ盗賊の短剣や身につけていた金品を取る。
「何を……」
「いや金が無いんでこいつらから金目の物を取って換金しないといけないですから」
誠は敬語で言う。
「……本当なら注意をしますが、今回は目を瞑ります」
シスターはそう言った。
それから誠はロングソード三本、短剣二本、八十Gを手に入れた。
「そういえば貴女の名前は?」
「すいません、まだ言ってませんでしたね。私はヤンバッハ教の僧侶であるエリカ・フォッケシュミットです」
「自分は村木誠……マコト・ムラキです。フォッケシュミットさん」
誠はそう自己紹介をした。
「エリカで構いません」
エリカは誠にそう言った。
「あ、そうすか」
「それでは案内しますね」
「すんません」
そして二人は森を出た。
「この森は北の森と言われていてよくモンスターが出るんです。なのでギルドから紹介された護衛さんと一緒に教会に行っていたんです。でも……」
「帰りにあの盗賊に襲われた……ってわけか」
「はい。モンスターが出ますがレベルが低いのが多いので護衛さんも新人だったんです」
「成る程な、それでやられてたわけか……」
「はい、あぁギルド長に何て言えばいいのやら……」
「そら有りのままを言うしかないやろな。ところでギルドって何?」
「ギルドも知らないのですか?」
エリカが驚く。
「ま、まぁええやん」
ボロが出そうな誠である。
「まぁギルドは簡単に言えば何でも屋ですね。受付で依頼をして、それをギルドがクエストの形で仕事を行います。クエストは自分のレベルに応じて仕事が出来ます。また、パーティーを組めます」
「成る程な」
ギルドの説明は町に着くまで続いた。そして誠はこの世界で三八式を持って戦うのであった。
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