君とみた海
俺はまたあの場所にいた。
あの場所とは、辛いとき、苦しいとき、悲しいときにいつも感傷に浸りにくる場所だ。
景色もいいしここまで来る人はあまりいない。なんせ島のはずれだからな。
いつも俺は風を感じ、心を落ち着かせていた。風に優しく包み込まれながら。潮風の香りが俺を更に癒やした。
しかし今日の海風は俺の身を裂くように吹き荒れていた。海も怒っているのかな?
この場所であいつと出会ってから何年たっただろうか?今でも鮮明に思い出す。雲から顔を出す綺麗な夕焼け空もと、俺は彼女と出会った。
色々と思い出し、感傷に浸っていると…
「龍、こんな所で何してんの? 香織、もうすぐ出発するよ」
「愛織……お前は平気なのか? もう香織は……」
「それ以上はいわなくていいわ。私? 私はバカみたいに元気が取り柄だから平気よ!」
「いつものお前で安心したよ。やっぱりお前はそうでな……」
「……なわけ……ん」
今、何か言わなかったか?
「愛織……何か言ったのか? 聞こえなかった」
「大丈夫なっ、大丈夫な訳ないじゃん!」
愛織は目に涙を浮かべ、じきに泣いた。
「愛織……」
俺はそっと愛織を抱き寄せた。
愛織と香織は双子の姉妹だ。
俺はどちらかというと赤の他人に近いな。強いていえば幼なじみかな?
小さい頃から高校の今まで、いつも俺たち3人は一緒だった。
香織は幼いくて大人しくて計画的だ。双子の姉の愛織は逆に大人で騒がしくて考えついたらすぐ行動だったな。
一つの記憶が頭に思い浮かんだ
「龍君♪」
「香織、どうした?」
「あっちに面白いの発見したの」
「どこだ?」
俺はそちらを向く。すると頬に柔らかい感触がした
「えへへ……キスしちゃった……」
照れながらもそんな仕草を見せる香織。
俺の心はいつの間にか香織に奪われていた。
香織は多分挨拶のつもりだったのかな?
あいつはただの幼なじみと思っていたかは余裕かもしれないが俺はあいつが好きだった。
少し前までは元気だった香織。
俺はあいつがいなくなってから泣き疲れた。そして今日久し振りにここに来た。
いつもは香織が探しに来てくれるのに……
昼に見つかり、香織に愚痴って、あいつは嫌な顔をせずに聞いてくれた。その後は他愛のない世間話、笑っている自分と香織がいた。そして夕焼けを見て二人で帰った。
そんな生活はもう二度と来ない。
俺も海もそんな生活を嫌がっているみたいだった。
香織のあの笑顔はもう帰ってこない。
今はこの景色を見ると辛いだけ。少し前の俺にほほえんでた景色は出てきてくれなかった。
まるで俺に「ひとりにして欲しい」と風が訴え、波が暴れているようだった。
そんな海は気にならなかった。とにかく今の俺は愛織を慰めた。
目の前にたつ心に傷だらけの少女を。
「また、辛いことを思い出させた。ごめん……」
よく考えれば一番辛いのは愛織のはず。
香織の一番そばにいたんだから。
それを考えずに俺は……
「愛織、俺、何も考えてなかった。ごめんな……」
もう一度謝る。
「香織が、香織がね」
「香織がどうかしたのか?」
「死ぬ前に私に言ったの。『私は龍君が大好き。伝えられなかったけどね。みんなありがとう。』って……」
「香織……」
もう泣き疲れたはずの目からはまた涙が流れていた。
静寂。
数分間続いた。
そして愛織が口を開いた。
「実は……」
静寂。
今回は数秒間。
そして続けて彼女はこういった。
「前から感づいてた。香織があんたを好きなことを、そして龍が……」
愛織は泣き崩れた。
「あお……」
「ふれないで!」
愛織が強く叫ぶ。
「今、龍に触れられると何もかもが許せるようになりそうで怖い。香織と龍の関係を少しじゃましたりしたことも、だって私は龍を……」
俺はそっと愛織に触れた
「もう、いいんだ」
「なんで……」
「俺が許す」
「龍……」
「俺がすべてを受け止めてやる」
「私、私は龍の事が好きなの!」
「許す」
「龍が香織が好きなことも、両想いなことも知ってた」
「許す」
「なのに私は邪魔をした」
「許す」
「香織が死んで悲しいけど少し嬉しかった自分が憎かった」
「許す。全部許す。誰も悪くない。俺もお前も、香織も……」
愛織はゆっくり頷いた。
「ありがとう。あのね……龍、少し目を瞑って」
「なんだ?」
唇に柔らかい感触が伝わった。
「私は外見は似てても香織じゃない。私は愛織。でも龍を好きなことには変わりはない。もしよければ私と付き合って下さい。告白するタイミングは最悪だと思うけれど」
「愛織、でも俺は……」
「香織が好きなことは分かっているの。だから、香織の事は忘れないで。私も香織のことが大好きだから。三人でなかよくやろう」
「愛織!」
俺は愛織を抱きしめた。
「まだ俺は香織が好きだ。でもいつかお前を好きになるように頑張る。香織の想いはそのままかもしれないけど」
「ううん、それでいいよ」
「愛織、これからよろしくな……」
「龍」
永遠とも思える長い時間キスをした。
キスは涙と悲しみの味がした。
こうして俺らは大切な人の死を乗り越えた。
お互いに助け合いながら……
数年後
「愛織、行くぞ」
「うん」
俺と愛織は結婚し、幸せに暮らした。
今日は香織の命日だ。香織の墓とあの場所に向かった。
あの場所。
香織とよく遊び、愛織と愛を誓ったあの場所。
そこに俺らは今いる。
香織、俺らは今幸せだよ。
お前は今幸せか?
突風が吹いた。
その後には静かな風が吹いた。
まるで風が楽しんでいるようだった。
「そうか……」
「龍? どうかしたの?」
「いや、何でもない」
香織はいつも俺たちを見ているのだろう。この空の向こうで。
「じゃあいくか?」
「うん!」
目の前には澄み切ったくらい青い海があった。
すごいつたない文章ですよね。
自分でもそう思います。
この作品は多分高校の小説書き始めた頃に書いた小説です。
つまりウン年前に書いた小説ですね。
折角アカウントつくったのになにもしないままではいたたまれないので上げました。
できるだけ文章はそのまま、セルフ校正で文法的間違いを軽く直した程度にしました。
なのでとても読みにくいと思います。
申し訳ございません。
新しい作品は自分のほうで書いているのでそちらの方をお待ちください