ブラッククリスマス
いつもの寂しさはどこへ行ったのか、商店街は華やかに彩られている。
おまけに雪まで降るもんだから、私は憂鬱になっていくばかりだ。
目的もなく家を飛び出てきたのに。少しくらいは私を馴染ませてくれてもいいのに。
今日はホワイトクリスマス。雪が降ればそういうことになる。たぶん雪が白いせい。
もしかしたら誰か、友達とバッタリ会えるかもしれない。そんな夢物語を描いて家を出た。でもそもそも、私の友達って誰だろう。冬休みに入ったら、私に会ってくれる人なんて、いるわけないじゃないか。
だったら星でも眺めていようとも思ったが、商店街の明かりのせいで、空は黒く染まっている。
じゃあ星たちはどこへ行ったのだろうと考えが過ぎったが、どうせ、パーティーにでも招待されたのだろう。私を差し置いて。
そうして意味もなく歩いていると、ふと、暗い店が目に入った。
店といっても、シャッターは閉じきっている。商店街が華やかであるせいで、相対的になんの装飾もしていないこの店が、暗く見えているようだ。
なんの店だろう。そう思っても、シャッターが閉まっていては確認のしようがない。
「邪魔……」
つい、消え入るような声であっても、そう声に出してしまった。
このホワイトクリスマスに、こんなものがあっては邪魔だ。邪魔だ。ここにいてはいけない。お前なんか家にひきこもっていればいいんだ。
足をとめて、空を仰いだ。ふいに私がとまったもんだから、後ろにいた人が舌打ちして通り過ぎていく。
星は見えない。
今日はブラッククリスマス。