俺とサヤカ、そして誰かさん
【4】
俺は血のついたハンマーを、ベッドの上に置いてある布団で拭いた。そして、眼球や脳みそが飛びでている西の頭を隠すように布団を被せた。
「これは依頼なのだ、西くん。『彼を私のそばに』、彼女はそういったのだ。この殺人の依頼者はサヤカだ。彼女は死んだあとも、ずっと笹島のまわりをうろちょろしていた。恋ではなく、恨みだ。笹島をどうにか殺そうとしていたらしいが、それはうまくいかなかった。だが、彼女の代わりに君が笹島を殺した。それをサヤカが見ていた。彼女は泣いたそうだ。君にこんな思いをさせてしまった私は愚かだったと。そして、君のことを案じた。君にこれ以上苦しい思いをさせたくないと。そこで俺の出番だ。彼女は誰かにお願いをし、俺は誰かさんの斡旋を受けて、彼女と会った。そして依頼を受け、実行した。誰かさんが、サヤカにどんな見返りを求めるか知らないが、俺は誰かさんから見返りを受けることができる。そういうことだよ、西くん。君はもうサヤカの笑顔を見れたかい?」
俺は洗面所に行き、服を全部脱いだ。鏡を見てみた。今回は渋い顔をした男だ。一昔前の映画俳優のようだ。
「なるほど」と俺は声を出した。何度聞いてもいい声だった。
前回はひどい不細工の姿で殺人をしなければならなかった。青森は穏やかでいいところだったが、退屈とも呼べた。
俺はシャワーを浴び、西の使っていたシャンプーを使って髪を洗った。疲れと穢れが洗い流されていくようだった。それにしても、なぜ対象者には俺がパンダの姿に見えるのだろうか。ややこしいヒントだ。対象者の写真を渡してくれたら簡単に見つけることができるのに。今回は『もぐらのあと』と書いてある紙一枚だけ渡された。
シャワーを浴びると俺は、ハンマーを洗面台で洗い、血のついた服を着た。そして嫌なにおいのする部屋に戻り、コートを着て、ボタンをしっかりととめた。こげ茶色のソフトハットをかぶるともう一度洗面所に行き、鏡の前に立った。
「男前だなー。今回は楽しめそうだ」
俺はそうバリトンボイスのいい声で言うと、誰かさんがくれた二回分の報酬、一週間という時間をこの世で楽しむため、勢いよく部屋を出た。
ミステリー小説を目指して書いてみたけど、どこか違うような気がする。
ですが、勉強になりました。また機会があれば書いてみたいです。