表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/10

第6話:ドッキリ大成功


サヤカの手からバズーカ型のクラッカーが発射され、キラキラとしたテープが私の頭上に降り注いだ。


同時に、スクリーンの映像が切り替わる。

 ポップな書体でデカデカと書かれた文字。


『ドッキリ大成功! ~真実の愛は試される~』


「はーい、皆さん! お騒がせしましたー! 今の全部、ドッキリでしたー!」


サヤカが裏返った声で叫び、スタッフが「大成功」と書かれたプラカードを持って走り出てくる。


……シーン……。


誰も笑わなかった。拍手も起きない。

 ただ、不気味なほどの静寂が会場を支配していた。


床に座り込んだままの義母・トモエは、口をパクパクさせてプラカードを見上げている。

 父は血管が切れそうなほど顔を赤くし、拳を震わせている。

 母は、乱れた私のドレスを直そうと涙を流しながら手を動かしている。


この惨状のどこをどう見れば、笑えるというのだろう。


「あれ? 皆さん? 反応薄いですよー?」


サヤカが焦ったように客席を煽る。

 しかし、返ってくるのは冷ややかな軽蔑の視線だけだ。


その重苦しい沈黙を破ったのは、他でもないユウジだった。


「あー、よかった! やっと言えた!」


彼は額の汗を拭いながら、満面の笑みで立ち上がった。

 そして、まだ呆然としている私の肩を、馴れ馴れしく抱き寄せた。


「ごめんごめん、ミオ。怖かったろ? でもさ、あの写真も領収書も、全部サヤカちゃんが作った偽物だから! 安心して!」


ユウジは、まるで「サプライズプレゼントを渡した後の彼氏」のような顔をしていた。

 私がどんな顔をしているか、全く見えていないのだ。


「……何が、したかったの?」


私の唇から、掠れた声が出た。

 感情はもうなかった。怒りも通り越して、ただただ、目の前の生物が理解できないという困惑だけがある。


「え? だから、サプライズだよ」


ユウジはキョトンとして、説明を始めた。


「結婚式ってさ、ただイチャイチャするだけじゃつまらないだろ? だから、『どんな困難があっても、二人の愛は揺るがない』ってことを証明したかったんだよ」


彼はマイクを手に取り、会場に向かって語りかけた。


「皆さん、お騒がせしました! 僕たちは、たとえどんな過去があっても、どんな疑惑があっても、お互いを信じ抜くことができるか……それを確かめ合うために、あえてこんな過激な演出をしました!」


ユウジは私の顔を覗き込み、うっとりとした目で言った。


「ミオ、君が必死に否定する姿を見て、僕は感動したよ。君は整形なんてしていないし、僕を騙してもいない。僕は最初から分かってた。でも、君がどれだけ僕との結婚を大事に思っているか、改めて実感できたんだ」


……狂ってる。


この男は、本気で言っている。


私の恐怖も、両親の屈辱も、義母の暴走さえも、すべて「二人の愛を盛り上げるスパイス」だったと思っているのだ。


「さあ、お母さんも立って! ミオのお母さんたちも、ドッキリ大成功で握手しましょう!」


ユウジが能天気に手拍子を求めた。


ガシャンッ!!


その手拍子の代わりに響いたのは、私の父がテーブルを蹴り飛ばした音だった。

 父の顔は、鬼のようだった。


「ふざけるなッ!!!」


父の怒声がビリビリと空気を震わせる。

 会場の空気は、完全に「葬式」以下になっていた。


友人席の何人かは、すでにバッグを持って出口へ向かっている。

 親戚たちは、軽蔑の眼差しを隠そうともせず、ユウジとトモエを睨みつけている。


ユウジの笑顔が、ようやく引きつり始めた。


「え……? お、お義父さん……?」


私は、肩に置かれたユウジの手を、汚い虫でも払うように振り払った。


「触らないで」


私の声は低く、冷たく、会場中に響いた。

 ユウジが怯えたように後ずさる。


「ミオ……?」


「式は中止よ。全員、帰ってください」


私はベールを引きちぎり、床に叩きつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ