表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/10

第1話:人生で一番幸せな日

本日より全10話、一挙公開いたします。


人生最高の晴れ舞台である結婚式。

しかし、そこは新郎と親友が仕掛けた「最悪のドッキリ会場」でした。


自分の人生をエンタメにされた主人公が、容赦のない制裁を下すまでの物語です。最後まで一気にお楽しみください!



「純白のウェディングドレスなんて、自己顕示欲の塊みたいで恥ずかしい」


かつて私は、冷めた顔で友人にそう言い放ったことがある。


結婚式なんてものは、一種の集団催眠だ。

 数百万円という大金をたった数時間のイベントに費やし、愛だの永遠だのを誓い合って、周囲に「幸せですアピール」をする。

 冷静に考えれば、コストパフォーマンスは最悪だし、リスク管理の面でも褒められたものではない。


……はずだった。


「ミオ、大丈夫? ドレス、苦しくない?」


隣で新郎のタキシードに身を包んだユウジが、小声で囁いてくる。

 私はベールの下で、緩みそうになる口元を必死に引き締めた。


「平気よ。ユウジこそ、汗すごいけど」


「いやあ、なんか緊張しちゃってさ。あはは」


人の良さそうな、少し垂れた目尻。

 大学時代から付き合って数年、彼のこの屈託のない笑顔にどれだけ救われたか分からない。


多少空気が読めないところはあるけれど、根は善人だ。

 私の理屈っぽい性格も「ミオちゃんは頭がいいなあ」とニコニコ受け入れてくれる。

 この人と一緒なら、きっと穏やかで退屈しない人生が送れる。


チャペルの高い天井。

 ステンドグラスから差し込む、嘘みたいに完璧な陽光。

 バージンロードを一歩ずつ進む父・タケルの、ガチガチに強張った腕の感触さえ、今は愛おしい。


(ああ、私、今すごく浮かれてる)


かつての自分が聞いたら鼻で笑うだろう。

 でも、認めざるを得ない。脳内麻薬がドバドバ出ているのが自分でも分かる。


披露宴が始まってからも、その魔法は解けなかった。

 普段なら欠伸あくびを噛み殺したくなるような、上司の長ったらしい乾杯の挨拶さえ、聖書の一節のようにありがたく聞こえる。


「……ミオちゃん、本当に綺麗だ」


高砂席に座ったユウジが、またニヤニヤしながら私を見た。

 今日の彼は、なんだかいつも以上に落ち着きがない。

 視線が泳いでいるというか、私を見たり、会場の後方をチラチラ気にしたりしている。


「ありがとう。ユウジもかっこいいわよ」


「そ、そうかな? へへ、これからもっと驚くと思うよ」


「え?」


「あ、いや! なんでもない!」


ユウジは慌ててシャンパングラスを煽った。

 サプライズでも用意してくれているのだろうか。

 彼はそういう、人を喜ばせようとする――たまに方向性がズレることもあるが――子供のような無邪気さを持っている。


視線を客席に向ける。


母・ユキは、ハンカチを目元に押し当てて泣いている。

 父は相変わらず仏頂面で腕を組んでいるが、目尻は赤い。


新郎側の席では、義母のトモエさんが派手な留袖を着て、周囲の親戚に何かを熱心に話しているのが見えた。

 少し声が大きいのが玉に瑕きずだが、息子を愛するがゆえだろう。今日は彼女の過干渉すら許せる気がする。


そして、友人席。


大学時代からの友人、橘サヤカと目が合った。

 彼女は派手なピンクのドレスを身に纏い、私に向かって大きく手を振っている。

 彼女は今日の友人代表スピーチを担当してくれる予定だ。


(こんなに多くの人に祝福されて、隣には最愛の人がいて)


私は手元のグラスをそっと握りしめた。

 完璧だ。

 私の人生設計において、今日は間違いなく最高到達点。

 これ以上の幸せなんて、もう一生訪れないかもしれない。


「続いては、新婦のご友人、橘サヤカ様よりご祝辞を頂戴いたします」


司会のアナウンスが響く。


スポットライトがサヤカに当たる。

 彼女は自信満々の笑みを浮かべ、マイクの前へと進み出た。


隣でユウジが、ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえた気がした。

 私は微笑みを絶やさず、サヤカを見つめる。


まさかこの数分後、この幸せの絶頂から、地獄の底へと突き落とされることになるなんて。

 この時の私は、1ミリたりとも想像していなかったのだ。

お読みいただきありがとうございます!


幸せの絶頂から一転、次話から一気に突き落とされます……!

果たして親友のサヤカは何を語り出すのか?


全話一挙公開しておりますので、ぜひこのまま第2話へお進みください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ