第四話 ざまぁは会議とともに踊る
それは、ざまぁになる前の話だ。
誰かが余計なことを言わなければ。
国王の謁見の場に俺は居合わせた。
なんてことはない、ただの書紀だ。
王の前には3人の勇者達が立っていた。
それぞれが異国の地で武名を轟かせた英雄らしい。
1人は如何にもな戦士風の男。
筋骨隆々で重装備を身にまとい、体中にある古傷が
経験値の高さを物語っている。
引き連れている仲間も多く、背後に並ぶ仲間も同じ顔をしている。
「王よ、何かアレば私めにお任せください。
私とその仲間が事に当たれば不可能などありませんからな」
「左様か、実に頼もしいことだ」
仲間たちも見事なまでに脳筋パーティだ。
編成は偏っているが、迫力だけは十分だった。
ただ我が国の王はお人好しなところがある。
俺は心配しながらその様子を眺めていた。
次に二人目の勇者が前に一歩でた。
体の線は先程のものと比べて細いが、引き締まった体をしている。
弓を担いでいるが、前進には仕込みナイフやら様々な武器を仕込んでいるようだ。
彼も先程の者ほどではないが仲間も多く
メンバーも術師や戦士と構成のバランスの良さが光る。
「お招きいただき光栄です。
何かアレば微力ながら尽くさせていただきます」
「そうかそうか、そなたにも期待しておるぞ」
そこまでは穏やかなムードだった。
しかし三人目が王の前に一歩でた時、空気が代わった。
周囲がざわついている。
その原因は彼の顔の半分が火傷でただれているからであった。
そして体の線も細い。明らかに戦士ではない。
それにもかかわらずなんと仲間はいない。
戦闘に詳しくないものでも不安を抱くのは無理もない。
ただ俺個人としては、それでも『勇者』といわれているのだ。
最低限、持つべきものは持っているのだろうと適当に考えていた。
三人目は一歩前にでると言った。
「このような外見で、皆様に不快な思いをさせたこと、申し訳ない。
しかし、必ずや私も王の力になることを約束いたします」
「そ、そうか、そなたにも期待しておるぞ」
空気は悪かったがここは王のお人好しがいい意味で出た。
無事に終わりそうだと俺はため息を着いたその時だった。
「果たしてそのような者に勇者たる資格があるのでしょうか?」
……。
仕事の増える予感。
口を出したのは我が国の大臣だった。
「恐れながら申し上げます、王よ。
我々はこの勇者たちに等しく金貨を渡すこととなっております。
しかし……平等に分け与えるのは問題があるのではないでしょうか?」
面倒なことを言い出した。
平等に分けるのが一番簡単なんだよ。
しかしこれにつられて筋肉勇者が言い出した。
「俺もそう思う、お前はどう思う」
そう、となりの細身の勇者に問うと
「俺は俺の取り分がアレばどうでもいい、後は好きにしろ」
と、我関せずの態度を取った。
この時点で会場は大いにざわつき
そこらじゅうで醜い顔の勇者に対しての偏見が飛び交った。
俺は苛ついたが、流石にこのお人好しの王様の前で怒鳴るわけにもいかず
両手を握りしめてぐっとこらえたが、その拍子に羽ペンをへし折ってしまった。
「先輩、なにやってるんですか!?」
小声でトオルが咎めてくる。
「お前には感じないのか? 面倒事がやってくるこの匂いが」
「……わかってますけど仕方ないじゃないですか」
そんな俺の気持ちを知らずに大臣は続ける。
「どうでしょうか、それぞれパーティがいる人数分に応じて
金貨の割当量を変えてみては……」
「駄目です」
俺は我慢の限界だった。
「な、なんだね君は」
「彼らを招聘した時に、事前の約束として金貨を支払う取り決めをしてます」
半分嘘だった。
具体的な金額は示し合わせていない。
「ぐ、ぐぬぬ、ならばいっそのこと王よ、この中で契約する者を
選んではいかがでしょうか?」
この言葉には細身の勇者の顔色まで変わった。
当然だ、この流れだと誰か1人が報酬を独占する可能性が出てきた。
「お言葉ですが大臣、彼らをここにつれてきた段階で
契約を反故にするのは無理です」
「さ、さっきからお前はなんだ!」
「ただの書紀です。なので事実ベースだけお話しております」
「たかだか書紀の分際で大臣に物を申すか!」
普段なら言葉が荒れていたかもしれない。
「私の立場の問題ではございません、
これを反故にするのは王の言葉を取り消すという意味になります。
それは我が国にとっての信用問題でございます」
王、という言葉に大臣は反応し、渋々引き下がった。
だが今度は筋肉ダルマが文句を言い始めた。
「だが実際問題、パーティの人数問題は現実的な問題だ。
それに人数はそれだけできることの大きさを表す、そうだろ?!」
再びざわつく周囲。
俺はちらっと王様の様子を伺った。
……案の定、王様は戸惑っているようだ。
人の良さだけは本物だ。
それ以外は、まあ普通だ。
「契約内容にご不満があるのであれば、契約自体を見直す選択肢もございます。」
「なんだと?!」
「貴方は異国の地の勇者、ならば帰国すれば
いくらでもお金の工面など出来ましょう。
何も我が国に金銭面で依存する必要はありますまい」
「なんて無礼な国なんだ、悪いが我々は帰らせてもらう!」
そういうと筋肉ダルマ御一行は城をでていってしまった。
「おいきみ、一体何の権限があって勝手なことを!」
「勝手なことではありません、事実に基づいた話です」
「話にならん、貴様あとで覚えておれよ!」
大臣も激怒して部屋を退室していった。
その時だった、細身の勇者が俺の方を少しだけ見た後言った。
「王よ、貴方の国は正しく法の運用がなされているようだ。
私は当初の予定通りの報酬がいただければそれで構わない。
話の結論もついたようなのでこれにて失礼いたします」
そういうと細身の勇者御一行もその場を去っていった。
そして残りの火傷顔の勇者は言った。
「王よ、実に寛大な配慮に感謝いたします。
何かアレば貴方のためならばすぐさま馳せ参じます事、ここに誓います」
彼は王に深々と頭を下げるとゆったりと部屋をでていった。
俺はその日、軍法会議にかけられたが、国王の寛大な配慮によって
事なきを得た……らしい。




