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第一話 追放はする側も命がけ?

第一話 追放はする側も命がけ?




「――これ以上、一緒にやっていくのは無理だ」


先にそう切り出したのは、隊長だった。

焚き火の音が、妙に大きく聞こえる。


「お前が強いのは、全員分かっている」


その言葉に、誰も異論を挟まなかった。


「だが、それとこれとは話が別だ。

俺たちは成果だけを求める集団じゃない」


……来たな、と思った。


「作戦中の独断専行。

結果が良ければいい、では済まない場面もある」


魔術師が頷き、前衛が腕を組む。


「俺たちは命を預け合ってるんだ。

信頼できない相手と背中を預けるわけにはいかない」


信頼、協調、仲間意識。

いつも並ぶ言葉が、いつも通り並べられていく。

私はうんざりしていた。


「誤解しないでほしい。

お前を責めているわけじゃない」


白々しい、この期に及んでまだ言い訳か。


「ただ――やり方が違った。それだけだ」


違っただけで、ここまで言われるのか、と。

私の頭の中は真っ白になっていった。


「俺たちは、この先もこの形で進む。

だからお前には……別の道を探してもらう」


事実上の追放。

直接的表現は避けて言葉は続いた。


「荷物と報酬は規定通り渡す。

今日の宿代も、ここまでは面倒を見る」


実に用意周到なことだ、最初から決まっていたのだろう。


「何か、言いたいことはあるか?」


「お前たちは本当にこれが正しいと思っているのか!」


しかし全員が目を背ける。

それは責任逃れにも見える一方で

明確な拒絶も示していた。


それで、この話は終わった。


それはこいつら全員の終わりということ……






一瞬で全ては終わった。

跡形もなく消し飛んだ仲間たちをみて、私は乾いた笑い声を上げていた。







今日は宿場での殺人事件の捜査らしい。

俺は愛用の自転車で現場に向かった。


「先輩、遅いですよ!」


後輩のトオルが駆け寄ってきた。


「すまんすまん、ちょっと寝坊した」

「先輩、そろそろ真面目に減俸されるんじゃないですか?」

「トオル、俺のタイムカードこっそり押してくれよ」

「嫌ですよ、ちゃんと出勤してください」


等と言いながら事件現場に俺達は入っていった。




犯人は既に捕まっていて、手錠をかけられている。

魔封じの錠、犯人は魔法使いか。


神妙な面持ちでベッドに座らされていて

現場では仲間の憲兵が確認作業を行っていた。



「それで? 犯行の動機は?」


するとトオルは書類をめくって答える。


「本人曰く、パーティを追放されそうになったから。とのことです」


俺は頭に手を当てた。


「はー、またかぁ。今年に入って何回目だ?」

「既に4回目です。最近多いですよね」


その瞬間、犯人が俺のことを睨みつけてきた。

だが俺はそれを無視した。




「で、凶器は?」

「凶器はありませんが、彼は魔法使いですので、魔法の痕跡の解析から

 おそらくブラックアウトを使ったのではないかと」

「へー、ブラックアウト。すごいじゃん、難しい魔法だよね」


ブラックアウト。それは対象のみを飲み込む。

結果として周りに被害を一切残さない。屋内での戦闘で便利な魔法だ。


瞬間、犯人はニヤリとした。


「っふふ、当然の報いを受けさせたまでだ」


それはその場の誰に言ったわけでもないようだった。


「ふーん」


俺は無意識のうちに犯人の顔面めがけて拳を振り上げていた。


その拳は犯人の後ろの壁を吹き飛ばした。


「ひいぃ! なんなんだよお前!」

「てめぇふざけたこと言ってんなよ! 人が死んでるんだぞ!」


「先輩……」


トオルが何故か俺のことを見る。


「どうしたんだお前」

「俺、誤解してました。先輩はぐーたらで仕事もいい加減で

 乱暴者で、すぐ居眠りして、職務中に飲酒するし……」


「まてまてまて、お前それはいいすぎだろ」


まぁ全て事実だが。


「でもちゃんと正義の心を持っていたんですね」


こいつなにいってるんだ……


「当たり前だろう、世の中みんな清く正しくいてくれないと

 俺達の仕事が増えるだろ! ふざけやがって!」


「……信じた僕が馬鹿でした」

「お前だって仕事が増えるのは嫌だろ!」

「だったらその壁、ちゃんと直しておいてくださいよ。

 普通に始末書ものですからね」


……。


「俺、修復魔法使えないんだよな」

「僕も使えないですよ。本当に知りませんからね」


マジか……。

俺は恨むような目で犯人をみた。

さっきの反抗的な目とは打って変わって怯えるような目で俺をみている。


「……おいお前、修理魔法使えないか?」

「……使えないです」

「お前、ほんとに使えねぇな! だから追放されるんだぞ!」

「先輩! もう本当に怒られるからやめてください!」




俺は今日残業しながら宿場の壁をぶち破ったことの始末書を書かされるのであった。


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