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シックスパックラビット ―腹筋バキバキ、ウサギマスクの武が魔を挫く―  作者: よよ


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第7話 馬車に揺られて

 ぼくたちは王都を出て、いま馬車に揺られている。カポカポと気持ちの良いリズムで鳴る蹄の音が、旅が始まったことを知らせている。どんどん小さくなっていく王都に、澄んだ青空。風が旅立ちの匂いを運んでくる。

 4人座って荷物を置いてもまだ2人分くらい余裕がある。なかなか快適なのだが……。しかし、美女に囲まれて嬉しい反面、女性に慣れていない身からすると、肩身が狭い……。

 

「王都がだいぶ小さくなったな」沙耶姫が後ろを見て言う。

「なんだか冒険って感じでワクワクしますね」お団子女子は楽しそうで、ちょっとぼくもワクワクしてくる。

「アンナさん、私たちには使命があるのですから、そんな遠足に行くみたいこと言わないでください」メガネ女子は、つんけんしている。

「ティナ、まあいいじゃないか。ずっと気を張り詰めていたんじゃ、やっていけないだろう。楽しみながら行こう」沙耶姫はメガネ女子に微笑む。

「……沙耶姫様がそう言うのでしたら」沙耶姫に見つめられて、顔がほんのり赤くなっていて可愛らしい。

「まぁだが、ティナの言う通り、我々には使命がある。それは、デーモンの討伐だ。そのために、神器を集めること。そして、強者を仲間としてスカウトすること。楽しみながらも、その使命は忘れてはいけないぞ」沙耶姫に言われると、素直に頷けてしまう。教祖とかも向いていそうだ。

「いま向かっているのは、王都から一番近い町、メドウだ。そこで神器について聞きたい人物がいてな」メドウか、一番近いと言っても馬を使っても何時間もかかるはずだ。ぼくは王都から出るのが初めてだから、内心ワクワクが止まらない。

 

「そうだ、拳。ちゃんと2人の紹介もしていなかったな。楽しい旅にするには互いのことを知らないとな」

「あ、はい、よろしくお願いします」

「ではアンナから紹介しよう。アンナ・アーテナーだ。戦略を考え実行するパーティーの頭脳だな。補助魔法も得意だ。そして、とにかく明るいところが、私は好きだ」戦略に補助魔法、どんな感じなのだろう。

「いやん、沙耶姫ったら。急に好きとか言ってくる沙耶姫が、私も好きー」沙耶姫相手に距離が近い。どういう関係だろう。

「うさみん、よろしくね! アンナでいいからね!」

「よ、よろしくお願いします、アンナさん」きっと誰に対してもそうなんだ。それにしても胸元が開いていて目が行ってしまう。が、なんとか一瞬で戻したからバレてないはず。

 

「こちらが、クリスティーナ・カテドラル。ティナは回復魔法のプロフェッショナルだ。拳の1つ下だったな、若いが頼りにしている」回復魔法か、パーティーには必要不可欠だろうな。ティナさんは年下なのにしっかりしていてすごいな。

「はい、精一杯役割を務めさせていただきます」

「ティナさん、よろしくお願いします」

「……足を引っ張らないようにご注意ください」ペコリと頭を下げたぼくの脳天に言葉が刺さる。

「ティナは男の子が苦手なんだよねぇ、私よりおっきいのに。うさみん気にしないでね」アンナさんは言いながらティナさんの胸をつんつんした。アンナさんも十分大きいけれど。

「ちょっ、やめてください! 別に苦手なんかじゃありません。私たちは少数精鋭なんですから、庇いながら戦っていられませんので」両手をクロスして、隣に座るアンナさんから、少し距離を取った。

「まあそれは確かに。でも、沙耶姫が連れてくるくらいだから、そこら辺は大丈夫でしょ。ね?」アンナさんのウインクにドキッとする。

「は、はい。自分のことは自分でなんとかします」それは当然として、しっかり活躍しないと。


「あの、気になってたんですけど、御者さんいませんけど、大丈夫なんですか?」この馬車はキングガゼルが引いているが、手綱を握る人がいなくて目的地にたどり着くのか、ちょっとそわそわしていた。誰も何も言わないから大丈夫なのだろうけども。

「あぁ、はは。まあそうだな、知らなかったら気になるか」沙耶姫がキングガゼルを見やる。

「うさみん、この子は軍で訓練された優秀なキングガゼルなの。とーっても賢いの。目的地を伝えて地図も見せてるから大丈夫だよ」当然のようにアンナさんは言う。

「え? 本当ですか? すごい」賢すぎる……。どんな訓練をしたら、そんなことができるようになるんだろう。

「こらアンナ。ふふっ、拳も本気にするんじゃない」沙耶姫にツッコまれた。そうだよな、そんなわけないもんな、何言ってるんだ。

「え? あ、いや、そうですよね、さすがにですよね。いや、アンナさんが当然のように言うから。どんな訓練をしてるのかと考えちゃいましたよ、はははは……」うわぁ、きっと耳が赤くなってる。

「キングガゼルが、椅子に座って勉強してる想像でもしてたの?」茶化してくるアンナさんにギクッとする。

「ふふ。ちょっとアンナさん、さすがにそんなわけないじゃないですか」ティナさんは小さく笑いながら言い、ぼくと目が合う。

「え? ……うそでしょ」ティナさんが引いてる。人が引く瞬間を見てしまった。その速度は、火竜戦の沙耶姫より速かったかもしれない……。

「くっ、ふふっ、ははははは」沙耶姫の大笑いにつられて、アンナさんも笑い出す。そして、ティナさんもぼくも。

「拳、そういう素直なところは、そなたの良いところだな」

「そうそう、素直が一番だよ」

「まぁ、ホラ吹きよりはマシですね」

「あ、ありがとうございます。それで、本当のところはどうなってるんですか?」

「それはね、私の魔法だよ。キングガゼルに身体強化魔法を付与していてね、脚力・体力も少し上げてて。進んでほしい方向に魔力を強めたら、感じ取ってくれるんだ。訓練されてて賢いのは本当だからね」補助魔法、すごいな。キングガゼルも、やっぱりすごいや。 

 

 楽しくおしゃべりしながら馬車に揺られること数時間。町が見えてきた。

「お、メドウが見えてきたな。着いたら宿を探して荷物を置こう。それから神器についての聞き込みと、魔物の被害状況の確認だ」沙耶姫は、ぼくたち一人ひとりと目を合わせながら話す。

「はい」3人の返事が重なる。メドウの町か。しばらく前からずっと背の高い草原が続いていて、風に揺れてやってくる草の匂いが、ぼくのワクワクを刺激する。

次回、『第8話 メドウ』

新しい町に到着!

沙耶姫の可愛らしい一面に注目です!


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