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シックスパックラビット ―腹筋バキバキ、ウサギマスクの武が魔を挫く―  作者: よよ


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第3話 雷神

 水晶の発する光に目が眩む。

「くっ、なんだ」

「警戒しろ!」

「……何も、来ない」

 心なしか、身体が重くなったように感じるが、何だったのかと、こちらが戸惑っている隙に、また火竜の攻撃が降ってくる。

 

「なっ、魔法が……出ない!?」

「わ、私もっ!」

「くそっ、おれもだ!」

「避けろー! 走れーっ!」

 どういうことだ、魔法が使えなくなってしまったのか……。さっきの水晶の光は魔封じだったのか……。これはまずい……。魔法を使わず、火竜の攻撃をやり過ごすのは困難だ。ぼくの攻撃もあそこまでは届かない。どうしたら……。

 

 ドーーーンッッ!!!


 轟く雷鳴と閃光が空を裂き、全員が凍りつく。火竜が黒煙を引きながら落ちてくる。そのとき、背後からものすごいプレッシャーを感じゾッとする。 

 バリバリッ!

 横を通る瞬間、空気を切り裂くような音が聞こえた。

 

 ザンッ!!

 

 何者かが火竜の首を空中で切り落とし、地に堕ちる寸前、火竜は霧散して消え失せた。

 火竜が霧散する直前、杖を掲げた魔導士は、姿を眩ましてしまった。

 

 時間が止まったかのように固まるグラウンドの中心に、1人の女性が立っている。焦げたグラウンドの上で雷光を(まと)い、音もなく納刀する美しい所作に、誰もが息を呑んだ。その姿は、畏怖を抱かせるほどに神々しかった。

 

――「沙耶姫(さやひめ)!」先生が駆け寄る。

「助かりました。本当にありがとうございます」深々と頭を下げる。

「沙耶姫だ。『雷神』のスキル、すごいな」

「あぁ、それにあの抜刀術、最強って言われているのも納得だよな」

 雷神の沙耶姫……お姫様が強いことは聞いていたが、これほどとは……。ブロンドに輝く髪をポニーテールにし、青い瞳は奥まで澄んでいる。綺麗だ……。強いって美しいな。

 

「いや、到着が遅くなってしまい、すまなかった」

「いえ、そんな、滅相もない」

「最近、魔物が街まで来ることがあるから警戒していたのだが、火竜の群れが来るとはな……。それに、あの魔導士、普通の魔導士とは違うようだな」

 やはり、あの魔導士には何かあるんだ。

「えぇ、魔道士が火竜の群れを率いるなど聞いたことがありません。杖に埋め込まれた水晶の放つ光を浴びてから、皆魔法が使えなくなりました。信じたくありませんが、我々の魔法を封じる魔法が使えるようです」

「……それでか。私が到着した時、皆が魔法を使わずにいたのが腑に落ちた。しかし、そうだとすると、非常に厄介な存在だな……」沙耶姫は、腕組みをし考えているようだ。が、ふとぼくと目が合った。そして、全身を一瞥する。

 

「ん? そなたは……もしや、噂のシックスパックラビットか!」青い目を輝かせ、こちらにずんずん歩いてくる。

「最近、そなたの噂をよく耳にするのだ。一度会ってみたかった」右手を差し出されて、戸惑いながらも応じる。「光栄です」女性とは思えない程の力強さ、覇気を感じた。

 

「彼がいなかったら、全滅していたかもしれません」先生が沙耶姫に言う。

「噂は本物ということか……。そなた、私と共に戦う気はないか? デーモン討伐のため、強い仲間を探していてな。ぜひ、力を貸して欲しい」ぼくの目を真っ直ぐ見て言う。

「えっ? ぼ、ぼくですか?」最強の沙耶姫に認められた? ぼくが? すごい。でも、一緒に旅するなんて……絶対正体バレるし……。「い、いえ、と、とてもじゃないけど、ぼくには務まりません。し、失礼します!」慌ててお辞儀し、駆け出した。

 

「ちょっ、待ちなさい!」先生に呼び止められるのを無視して、校舎に逃げ込む。背後で、沙耶姫が小さく笑ったような気がして、背中がゾクリとした。逃げ場はないのかもしれない。

次回、沙耶姫と再び……。葛藤する拳。


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