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シックスパックラビット ―腹筋バキバキ、ウサギマスクの武が魔を挫く―  作者: よよ


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第12話 魔導具と呪具

 日が落ちるまでスカーレット・シーを堪能し、町へ戻った。

「旅立つみなさんに、よかったらお好きなマジックアイテムを差し上げますので、ぜひ役立ててください」ツァウバーさんの計らいに感謝し、店内を物色させてもらうことに。

 

「宇佐美くん、ちょっといいかな?」

「え、はい」ツァウバーさんについて、店を出る。なんだろう……。

「どうして隠しているんだい?」月を見上げて、なんともなしに言う。

「え? あ、それは……」ドキンと心臓が跳ねる。が、なぜだかツァウバーさんにバレていたのを思い出した。

「まぁいい。ちょっと、マスクを見せてくれるかい?」

「は、はい」マスクを? 不思議に思いながらもカバンから取り出し、手渡す。

 

「……うむ、やはり、あいつの作品だ。これはどうやって手に入れたんだ?」

「これは、ぼくの祖父が、ぼくのために知り合いに作ってもらったものです。ツァウバーさん、これを作った人をご存知なんですか?」

「あぁ、私が知る限り、歴史上最も優れた魔道具技師だよ。奴の魔道具は神器にも劣らない」

「そ、そんなすごい人なんですか、いまその人はどちらに?」もし武具を作ってもらえたら百人力だ。

「さあなぁ、最後に会ったのは10年以上前だから、生きているのかどうか。あいつも私もいい歳だからなぁ」

「そうですか、それは残念です」でも、旅の中で、もし会えたら……。

 

「きみには、私からこれを贈ろう」ローブの下から差し出された。

「これは、籠手、ですか。でも、左だけ?」何かの鱗のような、独特なデザインの籠手だ。

鯪鯉(りょうり)の籠手だ。いまは左だけだが、右の籠手は作り直して贈るよ。少し時間はかかるだろうが、必ず力になるから待っていてくれ」

 この赤褐色に「信頼」を感じる。ただ、どうしても気になる。 

「……あ、ありがとうございます。……えっと、あの、すみません、りょ、料理って、どういうことですか?」知らないのは自分の無知のせいかとも思うが、ここはどうしてもちゃんと知っておきたい。相棒になるのだから。

 

「あぁ、鯪鯉(りょうり)は、センザンコウのことだよ。これはね、防御力を強化した籠手で、センザンコウを模したデザインに、あらゆる攻撃を防ぐように作ってあるんだ」あ、危ない、料理じゃなかった、料理なわけないよな、言わなくてよかった。それにしても……。

「あらゆる攻撃を防ぐ。すごいですね、ぼくの弱点は防御だと思うので、これはすごく助かります」基本的に全ての攻撃を避けないといけないから、仕掛けるタイミングに神経を使っている。攻撃を受けることができれば、選択肢が無数に増える。

 

「うむ、私も今日の戦いを見ていて、そう感じたよ。現状、回避が必須で、戦闘に時間が掛かってしまっているから、攻撃を受けられるようになれば、自分からも仕掛けやすいだろう」

「は、はい、その通りです」一度見ただけで的確に見抜かれている……。

「これで、きみの攻撃力にさらに磨きがかかるだろう。右の籠手が完成したら、完璧だ」すごい。ワクワクしてくる。

「はい、ありがとうございます」大きく頭を下げる。

 

「ちなみに、この籠手はあいつの作品だよ。きみのマスクと同じね」ツァウバーさんはウィンクして言う。

「え! そうなんですか! ……でもなんだかわかる気がします」動物が好き、なのかな。

「ハッハッハ。そうだろ? あいつは生き物をモチーフにした作品を好んで作ったからな」やっぱりか。

「右の籠手は、それをベースに、さらに進化させるよ」

「はい、楽しみにしています」どんな力を手にできるのか、楽しみだ。

「では、戻ろうか」

 

 店内に戻ると3人が楽しそうに話していた。

「おっ、2人とも何の話してたの?」アンナさんがボールを真上に投げて取って手遊びしながら聞いてくる。

「まぁ、男同士の話だよ」ツァウバーさんが濁す。

「えー、なにそれー」ふくれっ面で言うが、手は器用に動いて、ボールが宙を飛んでいる。

「はっはっは。女性にはわからんよ。それより、気に入ったアイテムはあったかな?」

 

「私はこれにします!」

「魔法玉だね。魔力を込めると封印した魔法が発動するアイテムだ。上手く使えば戦略の幅が広がるだろう」なるほど、アンナさんと相性が良さそうだ。

 

「私はこれだ。」沙耶姫は、小さな武器のようなものを持っている。見たことないなぁ、武具には詳しいつもりだけど……。

「なるほど、苦無(くない)ですね。かつて(しのび)と呼ばれる者たちが用いた道具です。それを魔力を込めて鍛えました。飛び道具として投げて使ったり、小型ですが短刀のように使うこともできますし、魔力を蓄え放出させることもできるので、姫君にぴったりですね」苦無というのか、おもしろい武器だな。実戦で使っているところを早く見たい。

 

「私は、これを」ティナさんが手に持っているのは、木でできた人形だ。

大祓人形(おおはらいひとがた)か。使用者の魔力を込めておくと、災いを代わりに引き受けてくれる人形だ。ダメージを避けなければならない回復役には良い選択だね。ただ、それは呪術の込められた呪具なんだ」

「呪術?」ティナさんも聞き馴染みがないようだ。

「うむ、呪術は一部の部族しか使えない強力な術で、その反動が使用者に返ってくるんだ。この人形が使用者の身を守ったら、人形に寿命を最大半分取られるらしい」なんだか煮え切らない言い方だ、ツァウバーさんらしくない気がする。

 

「らしい、ですか……」ティナさんも同じように思っているみたいだ。

「あぁ、これは行商人から買い取ったもので、その時に聞いただけなんだ。ただ、そいつは信頼できる者だから。しかし、私も呪具はほとんど見たことがないのでね」

「なるほど。でもツァウバーさんが信頼できるって言うなら、大丈夫です」ティナさんが、スッと受け入れていて、意外だ。もっと疑うものかと思っていた。

「でもティナ、寿命半分はやばくない?」アンナさんが心配そうに言う。

「でも、死を免れるとしたら、寿命半分なんて安いですよね?」それは確かにそうだ。

「んー、それはそうかも。その場で死ぬはずだったのが、寿命半分失うとは言え生きながらえるなら、か」アンナさんも納得したようだ。

「だからって、これを盲信して自分が盾になんて思わないので、万が一の時のための備えです」なら、大丈夫だ。

「うむ、そのくらいの心持ちでいるならいいだろう」ツァウバーさんは頷き、みんなを見る。

「みなさん、険しい道のりだと思いますが、くれぐれも気をつけて。私にできることなら何でもしますので、何かあればいつでも言ってください」ツァウバーさんがみんなの目を見ながら言う。その目には期待の色が滲んでいて、ぼくはその期待に応えたいと思った。


 店を出ると、星が瞬いていて、しばらくみんなで空を見上げた。満点の星に願うのは、誰も何も言わなかったけど、きっとみんな想いは一緒だったと思う。


 翌朝、大王の馬車に乗り込み、メドウの町を後にした。次に目指すはヘーレの村だ。

作者多忙につき次回更新遅れますが、執筆は続けていきますので、しばしお待ちください!


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