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シックスパックラビット ―腹筋バキバキ、ウサギマスクの武が魔を挫く―  作者: よよ


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第11話 スカーレット・シー

 暗い店内に入り、ドアを閉める。パッと照明が灯り、天井を見ると、見慣れた照明がない。代わりに空中に握り拳ほどのガラス玉のようなものがいくつも浮いていて、それが発光している。綺麗だなぁ。温かみのある橙色で、なんだか落ち着く。

 店内を見渡すと、色々な魔道具、マジックアイテムが置かれていて、ワクワクする。一際目についたのは、ネコの仮面だ。シンパシーを感じる……。

「さて、姫君は神器をお探しですな」ツァウバーさんはカウンターの向こう側に立ち、沙耶姫を真っ直ぐ見ている。

「あぁ、そうだ。デーモン討伐のために」沙耶姫は真っ直ぐ返す。

「姫君よ、本当にデーモンを倒せると思っていますか?」どう答えるのか、ぼくも気になって斜め後ろから沙耶姫を見つめる。ティナさんとアンナさんも同じように沙耶姫を見つめている。

「もちろん……と言いたいところだが、正直言ってわからない。全力は尽くすし、それを成し得るチームだと思っている。だからこそ、少しでも可能性を上げるために神器が必要なのだ。力を貸してほしい」沙耶姫は頭を下げる。

「私の最大火力を即座に反応して打ち消す力。そちらの僧侶さんもウサギくんも、ゴブリンとの戦いにポテンシャルを感じました。あなたたちに賭けてみましょう」

「あ、シックスパックラビットは別に仲間ってわけでもないですよ?」アンナさんが言う。

「ん? いや……」ぼくと目が会い、ぼくは小さく横に首を振る。

「うむ、そうか、それは残念。今度会ったらスカウトしてみたらいい」

「は、ははは。そうだな、そうしよう」沙耶姫のぎこちない笑いに、バレやしないかと内心ドギマギする。

「ゴブリンとの戦い、見ていたんですね。というか、あなたの仕業ですか?」ティナさんは鋭い目線で確信しているようだ。

「ふふ、その通り。言ったでしょう、自分の目で確かめないと」ツァウバーさん、人が悪いな。けれど、そういう人の方が信用できる気もする。

「おかしいと思ったんですよね。ゴブリンには不釣り合いな強力な装備をしているから」やっぱりそうか。変だとは思っていたけど。

「ゴブリンは能力こそ低いが、器用で戦闘センスはあるからね。装備が強化されると、なかなか手強かったでしょう」全く悪気はないようで、逆に気持ちがいいくらいだ。強化されているとは言え、ゴブリンごときに遅れを取るような者に、デーモン討伐など夢のまた夢ということか。

「全然余裕でしたけど」ティナさんは腕組みして言う。

「君はだいぶ余力を残していたね。前半はウサギの彼を様子見って感じだったかな。それにしても、彼は魔法を使わずよくあそこまで戦えるものだね、正直驚いたよ」

「私も魔法を使わず魔物と戦う人、初めて見ました」2人とも関心している風だけれど、魔法、使えたら使うんだけどね、きっと。

「うむ、彼の力が必要になる時が来るでしょう。やはりスカウトした方がいいと思いますよ、姫君」

「あぁ、そうするよ。それで、神器についてだが」

「えぇ。ただ、私が知っているのは昔聞いた噂ですが。ヘーレの村近くの洞窟に、癒しの力を増幅させる神器があるという」どこか煮え切らない言い草だが、何かあるのだろうか。

「ヘーレの村だな」沙耶姫にはそんな疑問はないように見える。

「あのー、昔っていつ頃の噂なんですか?」 アンナさんが聞く。

「30年前だな」

「30年前!? まだそこにあるんですかね?」アンナさんは半信半疑といった感じだ。

「あるでしょうな。神器を求めて洞窟に入って、戻ってきた者は1人もいないという話です」それは、なかなかやばくないか?

「そうか。だが、選択肢はないだろう。私たちなら大丈夫だ」沙耶姫には、迷いはないようだ。

「そうですね、そんなに遠くないですし、行きましょう」ティナさんも賛同している。癒やしの力が強化されれば、戦いにおいてこんなに心強いことはないから、必ず欲しいよな。

「次の目的地はそこだな。イドラにも用があるからな」

「なるほど、通り道って感じですね。沙耶姫の言う通り、私たちなら大丈夫ですよね! それよりイドラ楽しみだなぁ、海鮮食べた〜い」港町か、それはぼくも楽しみではあるけれど、ヘーレでの戦いに不安が拭えない。しかし、皆の余裕な雰囲気に頼もしさを感じる。

 次の行き先も決まり、和やかな雰囲気の中、ツァウバーさんが口を開いた。「みなさん、ぜひ見ていただきたいものがあるので、ついてきてもらえますか?」

 顔を見合わせ、頷き、沙耶姫が答える「あぁ、もちろんだ」


「はぁ……思ったより歩くな」前を歩くツァウバーさんと沙耶姫に聞こないボリュームでボソッと言葉を落とした。

「まぁ確かに、向こうから見ていたときはすぐに思えましたけど」ティナさんがそれに答える。

「お二人とも、あと少しですよ」後ろから声をかける。

「わかってるけどさぁ、また戻るわけでしょ」

「あぁ、確かにそうですね」嫌なことを想像させてしまった。逆効果だったか……。


「よし、着きましたな。そろそろです」皆ツァウバーさんに倣って、町の方を見る。太陽が傾き、もうしばらくしたら日が暮れそうだ。

「うわぁ、すごい」アンナさんは口から自然と言葉が出てきてしまったように言うが、ぼくも同じ気持ちだった。いや、みんな同じ気持ちだったに違いない。丘の上から見る、夕日によって赤く染まる草原。風にそよぐ草原が波のようで、まるで……。

「まるで、町が赤い海の中にあるようだな。素晴らしい景色だ」沙耶姫が感動を言葉に紡ぐ。

「はい、スカーレット・シーと言います。私はこの景色が好きで、この町で暮らしています。あなたたちなら、この景色を未来に残せる、そう思わせてくれました。信じていますよ」未来に残したい景色。そうか、この世界は人の想いで溢れているんだ。母さんやじいちゃんの顔が浮かぶ。赤く揺らめく陸の海に浮かぶ町。握った拳に想いを宿す。

次回、『魔道具と呪具』

ツァウバーから、一人ひとりに選別が!

どんなものなのかお楽しみに!


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