頭の上から真実を暴露する
こんにちは!
私はこの国の守護妖精、リーナルーナよ!
もう1000年ほど、この国を見守っているの。
初めはすごくつまらない仕事だと思ったけど、女神様にお願いされて、仕方なくこの国に来たの。
でもね、人間たちを見守っているうちに、可愛らしくて面白いことに気がついたの。
まあ、人間も人それぞれだから、醜い奴もいたわ。
でもそれ以上に、とっても面白いのよ!
だから今でもここで、守護妖精をやっているの。
この国で、私の知らないことは何もないわ。
王族の閨事情から、農村で生まれた牛の数まで、何でも把握しているの。
すごいでしょ?
基本的には人間の営みに任せて、手を出したりしないわ。
でもどうしても危ない時は、手を貸すことにしているの。
全てに手を出していたら依存されるでしょ?
そうなったら、人間は自分の足で立てなくなっちゃう。
それは良くないのよね。
だから何事もほどほどがいいの。
最近一番気になっているのは、王太子マティアスのこと。
あの子、なかなか婚約者を決めないのよ。
もう良い年なのに。
早く決めないと、良いとこのお嬢さんはみんな婚約してしまうわ。
今の国王もその前も、みんなああ見えて奥手だったのよね〜。
好きな人に好きと言えず、意地悪ばっかり。
ひっつけるのに、苦労したわ〜。
まあ、ジレジレを見るのも楽しかったけど!
今でもその話題で揶揄えるから、二重に美味しいのだけど!
マティアスも早く告白すれば良いのに。
好きな人がいる事は、私はちゃんと知っているんだからね。
そうだ!
今日は建国祭の夜会があるわ。
たくさんの貴族が集まるの。
マティアスの好きな人も出席するみたいだから、いっちょ、手伝ってあげましょうか!
ふふふふ。
待ってなさい、マティアス!
私が彼女とくっつけてあげるからね!
―――――
「これはどう言う事だ?フェアローゼ・シフォン侯爵令嬢。」
「王太子殿下、何もございませんわ。ただ彼女のマナーがなっていないから、注意しただけですわ。」
「それだけで、こんな騒ぎになる、と?」
「私も驚いていますの。」
あら?
楽しい夜会のはずが、何か起こったみたい。
あれは、マティアスとフェアローゼ嬢だわ。
泣いているのが、最近子爵家に引き取られたミーニャ嬢。
ミーニャ嬢の周りで彼女を慰めているのが、宰相の息子、騎士団長の息子、伯爵家の子息ね。
ふんふん。
マナーがなっていないミーニャ嬢を、フェアローゼ嬢が注意してミーニャ嬢が泣いた、と。
で、それを咎めつつ慰めたのが、子息たち。
騒ぎに気づいたマティアスが、事情を聞きに行った、と言うわけね。
それにしてもミーニャ嬢、魂が穢れているわ。
嫌だわ。
どうして私のテリトリーに、あんなのがいるのかしら。
しかも禁忌の魅了で、周りの子息を洗脳しているみたい。
何がしたいのかしら?
まあ、それより重要な事があるわ。
ここは私の出番ね!ふふっ。
「マティアス、その言い方では誤解されるわ。」
私はマティアスの頭上に姿を現した。
「守護妖精殿。」
「守護妖精……あの方が。」
驚くことは仕方がない。
何か大きなことがない限り、普段は王族以外の人前に出ることがないからね。
さて、と。
まずは、誤解を解かないと。
「フェアローゼ嬢。マティアスが『これはどう言う事だ?フェアローゼ・シフォン侯爵令嬢。』と言ったのはね、貴方なら正確に教えてくれると言う信頼よ!」
「えっ?」
「ちょっ……」
「それから、『それだけで、こんな騒ぎになる、と?』って言ったのは、こんな騒ぎに巻き込まれて、大変だなって心配しているの。マティアスは昔から捻くれてて、カッコつけなのよ!」
「妖精殿!」
マティアスが私を止めようとするけど、そうはいかないわ!
全部ぶっちゃけてやるんだから!
「マティアスは夜会の時、毎回貴方のことを見ていたの。誰とダンスを踊ったのか、どんなものが好きなのか。美しすぎる貴方に見惚れて、声をかけられないのよ。全く、仕方のない子なんだから。」
「ちょっと待て!」
「まあ!」
うん。
フェアローゼ嬢には、好感触ね!
どんどん言ってみよう!
「貴方がいるから、関係ない夜会に出席したり、手紙を送る度胸もないのに、手紙を書いて保管しているの。手紙だけではないわ。プレゼントしたい装飾品も保管して、保管庫がいっぱいなの。」
全く、どうしてこんな奥手なのか。
一歩間違えれば、気持ち悪いって言われるわよ!
好きだからって、何しても良いわけじゃないの!
好きならさっさと、くっつきなさいよ!
「な、な、……」
マティアスは普段の無表情が嘘のように、耳まで赤く染めて、フェアローゼ嬢をチラチラ見ている。
フェアローゼ嬢も頬を赤くしているので、一気に温度が上がった。
「それに、貴方の悪口を言う人や、貴方を好きな人の話を聞くと不機嫌になるし、密かに人間関係を調べさせているのよ!要するに、マティアスは、それくらいフェアローゼ嬢のことが好きって事なのよ!」
「妖精殿ぉぉぉぉぉ!!」
ふん。
さっさと告白しない方が悪いのよ!
「フェアローゼ嬢も、マティアスを好きなんでしょ?マティアスの婚約者候補たちを見て、悲しそうな顔をするし、ダンスを踊っている時、一番幸せそうな顔をしているもの!」
「よ、妖精様!?」
慌てる顔が、可愛い。
本当、マティアスとお似合いね!
「あーゴホンッ。マティアス、フェアローゼ嬢。別室で話し合いなさい。こっちは何とかするから。」
収集がつかなくなったところで、国王が声をかけた。
「「は、はい。」」
お互い顔を赤く染めて、控え室に移動した。
そうそう。
よく話し合えば良いのよ。
さすが私、よくやったわ!ふふん。
今日は、気分良く寝れそうだわ!
嬉しい報告を聞くのが楽しみね〜。
その後の話をしよう。
マティアスたち同様、騒ぎを起こした者たちも、別室に連れて行かれた。
妖精の助言で、ミーニャ嬢は逮捕された。
また、妖精の力によって洗脳は簡単に解かれたのだった。
あっさりしすぎって?
だって私にとって、洗脳を解くなんて、チョチョイのちょいなのよ!
マティアスたちの婚約の方が大事に決まっているじゃない!
また、マティアスとフェアローゼ嬢はじっくり話し合い、見事、婚約を結ぶことになった。
王家は、王太子の婚約者が無事に決まって、ホッと胸を撫で下ろした。
そして今後、この事で揶揄われるようになるのは、マティアスとフェアローゼ嬢の宿命となったのだった。




