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第二話 王立学校入学

人生は退屈だ…


俺は現世で会社の上司と飲んだあと車にはねられ死んだ。しかし、俺の頭の中に誰かの声が響く。それは『アステラ』と言う転生した俺の人生をサポートしてくるれるシステムだった。






___________《…更新完了、『マスター』を『ローセル・クラージョルフ』に設定、呼び方を以前から変更しますか?》


『なら、シンプルに『ローセル』だ」


《了解、『ローセル』に変更『アステラ』再起動します》


するとアステラから飛行機のエンジンみたいなデカい音が出る。しばらくすると、その音が静かになる。


《すみません、システムの更新に少し時間がかかってしまいました》


「大丈夫、焦ってるわけじゃないから」


《ありがとうございます。では、私に何か質問はありますか?》


「あー…その、いまさらだけど、俺の王国の名前って何?」


《…あなたの王国の名前は『クラージョルフ王国』、この王国は軍事と安定した経済基盤が強みの国家です》


「なるほど、えと…このまま行くと学校とかあるのか?」


《…はい、あなたは8歳からこの国の『王立学校』へと入学します。王立学校は『小等部』から『中等部』、『高等部』と9年間で3つの教育過程を経ます。そこで文字の読み書きや算術、などを学んで行きます》


「意外と現世と変わり無いのかもしれない…のか?」


《他に質問はありませんか?》


「ありがとう、もう十分だ」


《何かあったらいつでも聞いて下さい》



この淡々と話すサポートシステムは少し掴みにくいが、なぜだか安心できる。



2歳までは行動が限られていて自由に本も読めず、運動もトイレも一人だけで行けなかった。何よりご飯が母乳と言う何とも後ろめたい物だったため、食事の度に俺は断固拒否を貫き通した。


4歳になると変化が訪れる。顔立ちが段々と現世の俺からは想像しがたい美少年に変化していき、城のメイドや護衛たちが一目見ようと俺の部屋に押し掛けることが多々あった。だから俺はその人たちに全力のショタボイスで対応した。


その甲斐もあってか、俺は兄弟の中でも優遇される様になり、6歳の頃には普通に城下町の中なら護衛も着けずに歩けた。


もちろん、町の人達にしっかりと挨拶して、礼儀正しく、感謝を忘れず(こびっ)ていき、町のみんなに「純粋で優しい王子」のイメージを確立させた。


そして、5人の兄弟とも仲良くした。特に一番上、『ヘンドリック』とは特に仲良くした。何故ならこの人は第一王子、つまり将来の王位継承者である人だからだ。今の内に仲良くなっておく事で俺が将来この国から逃亡した時に「もしかしたら」助けてくれるかもしれないからだ。



ローセル「ヘンドリック兄さん!この本の魔法どうやるの?」


ヘンドリック「これは難しいぞ、まずここの魔力操作に必要な…」



クラージョルフ家で珍しい白髪の俺たちは周りから、仲がいいと言う意味の「ムアフィ」と呼ばれていた。


また、俺は夜寝る前に必ず『アステラ』とミーティングをして、1日の振り返り、明日の動きを決めていた。そんな感じで年月が過ぎ、8歳になった俺は明日、王立学校に入学する。






___王立学校入学式当日、


毎年2千人以上の入学者がいる入学式の中で俺は巨大な体育館に置かれたイスに座り、周りを見回す。



(…入学式には別の国から来る人がいるらしい、その人と今の内に関係を持っておけば、俺がこの国から逃げた時に多少は匿ってくれるだろう…)


(…アステラ、この中からクラージョルフ王国の国籍以外の人を探せるか?)


《今、サーチしてみます…見つけました。距離20m、8時の方向に、高身長で細身の人がいます》


(ありがとう、助かった)


アステラの超高速サーチによって見つけた人の所へ向かうため俺は席を立とうとするが、後ろから誰かに肩を掴まれる。



「ローセル様、式が始まりますよ。どこへ行こうと言うのですか?」


「うわぁ…フランか…」



この水色の髪と眼を持つフランは俺の教育係兼執事である面倒見が良い人だ。けど、面倒見が良過ぎて逆に困ってるのが現状でもある。



「まぁまぁフランさん、今日くらいは大目に見ましょうよ。ローセルもあんまりフランさんを困らすなよ?」



金髪で赤い瞳が特徴の第3王子のレオン兄さん、歳は18で俺より10歳上だ。2人がここにいる理由は俺の両親の代わりと見守りである。


ちなみにフランはクラージョルフ王国軍の第2戦闘部隊の隊長を務めており、剣とナイフを獲物にするバリバリの近距離ファイターだ。そしてレオン兄さんが何故フランに対し敬語なのかと言うと、レオン兄さんはフランの第2戦闘部隊の副隊長であるからだ。



「ローセル、そろそろ始まるぞ。フランさん行きましょう」


「はい、そうですね」



フランが俺の俺の肩から手を離し2人が離れると、周りの人も自分の子供の席から離れる。



(…タイミングは逃したが、式の終わりに絶対にチャンスはあるはず)



入学式は校長と来賓の挨拶と生徒の集合写真で終わり、合計で1時間ジャストだった。そして、式が終わった後に俺はフランとレオン兄さんの所へは向かわず、急いで中庭に出てアステラにサーチしてもらった人の所へ向かった。



(恐らくここらへんのはず…いてっ…!)



前を見てなかった俺は噴水の横で誰かにぶつかる。見上げると、スレンダーマンみたいに細身で高身長の男性がそこにいた。


「…大丈夫?怪我は無いかい?」


その男は俺に手を差し伸べた。俺は謝罪と感謝を含め、その人の手を握ろうとする。


「申し訳ありませ…ッ!?」


俺はその人の手を取った瞬間、人の体温とは思えないくらい異常に冷い手に驚いた。



「あなたは…」


「私は、そうだな…アッソとでも名乗って置こう。君がローセルか?良い眼をしているね。何か困った事があったらこれを使って」



するとその人は俺に何か書かれたメモを渡して来た。すぐに顔をあげるが、『アッソ』と言った人はもういなくなっていた。



「…どこに?」


「瞬間移動です。超精密な魔力操作と膨大な魔力を必要とするのになぜ…」



アステラも少し困惑していた。そして渡されたメモにはこう書かれてあった。



〘私は見ている、アポロンの怒りを。私は求める、テミスの罰を。そしてエレボスによる神去(かむさり)を…〙



そこにちょうどフランと手を振ってるレオン兄さんが歩いて来る。



「いたいた、おーいローセル、何やってんだ早く帰るぞ〜」


「…なぜそんな所に座っているのですか?」



結局、他国の人を見つけることは出来なかった。


2人と一緒に城へ帰って俺は自分の部屋着に着替えた。そして、夕飯を食べ風呂に入った後に自分のベッドで今日の渡されたメモをアステラと一緒に読んでみる。



「…何か分かるか、アステラ?」


「…アポロンは太陽と光明を司る神、テミスは法・掟の神、エレボスは暗黒の神、恐らくですがこれらは神話にルーツがある物だと考えられます」


「神話かぁ、じゃあ神話関連の本を持ってくるか」


「…このの城には無いかも知れません」


「マジで?」


「はい、…城内の図書館だけでは無く町の本屋の文献や書籍を全てスキャンしましたが、それらしき物は1つもありませんでした」


「そうか…ありがとう、今日はもう寝るよアステラ」


「おやすみない、ローセル」



また1つ疑問が増えたが、切り替えて明日から始まる学校生活に向けてしっかり寝ることにした。







______________________

________________




その夜、俺は夢を見た。


夢 と言うよりもほぼ対話に近かった。


真っ白な空間の中に立つ俺の目の前には、床につきそうな程長くて無造作に下ろされた赤髪に紫の瞳を持った服を着ていない少女が、大きいシルクの布を1枚だけかけて椅子に膝を抱える様に座っていた。


そして、布から目だけを出して俺を覗いている。



「誰だ…?」


《…私はあなたが一番知ってる人、ねぇ、これから私と取引しようよ》


「取引だと…?」


《そう、私ね、話し相手が欲しいんだ。だから私と夢で会ったら話してよ、その代わり、話してくれた分だけあなたが気になってる事を1つだけ予言してあげる》



こちらを見つめている女性の目はハイライトが失われているが間違いなく笑っている。まるで何も知らない俺をからかう様に…


突然、意識が遠のく様な感覚が襲ってくる。



「っ…お前…は?」


《ふふっ、もうあなたには心当たりがあるはずだよ》



彼女はそう言うが見当もつかない。意識がぼんやりして行く中で俺は思考を巡らすが、そのまま俺は夢の中で眠ってしまった


___________________






目が覚め、上半身を勢い良く起こす、だが目の前に映るのは今の俺の部屋だった。


すると、俺の身体の状態をチェックしてたアステラの心配している声が聞こえる。


《…心拍と体温が少し高いです。大丈夫ですか?》


「…大丈夫、ごめんアステラ(アイツは一体…?)」


何とも後味が悪い中で学校へ行く身支度を始めた。














入学式から3年、中等部に上がり、あの夢を忘れきった頃に事件が起きた。クラージョルフ王国に『レグル王国』が宣戦布告し『魔獣』を引き連れ、侵攻を開始した。


『レグル王国』とは、クラージョルフ王国のすぐ隣りの小さい王国である。ここは財政が常に緊迫しており、ここ10年で国民の3割が餓死している。そして、国家として存続出来なくなりかけた所にクラージョルフ王国が領土を買い取ろうと乗り出した。しかし、レグル王国の国王が自暴自棄になって魔獣と契約し、クラージョルフ王国への侵攻を開始した。


これを受け、クラージョルフ王国軍は偵察・諜報部隊を視察に向かわせ相手の戦力を把握、総合参謀本部で作戦を立案、そしてクラージョルフ国王が戦闘部隊へ作戦を伝え、激励の言葉を送る。



「今回のレグル王国の侵略は絶対に許されざる行為だ。諸君らの活躍と栄光を願っている!『グローリア・クラージョルフ!』」


「「「グローリア・クラージョルフ!!」」」



第1、第2、第3、第4、第5戦闘部隊の内、1、2、3部隊がレグル王国を迎え撃つ。


各隊員は鎧を身に着け装備の点検を行う。その間に兵士の家族らが御守やおやつなどを渡して会話をする。


俺は装備の確認と馬の体調を確認してるフランとレオン兄さんの所に向かう。


「フラン、レオン兄さん、頑張ってね!」



フランは驚いた顔でこちらを見たあとすぐに微笑んで


「任せてください。必ず戦果を挙げてきますから」


と言葉を返す。


すると、レオン兄さんは俺の頭を撫で、笑いながら


「兄ちゃんが1番活躍してくるからな!」



と言って馬に乗る。その横でフランが少し膨れっ面でレオン兄さんを見る。



「先に戦果を挙げるのは私ですよ!」


「いいや、俺ですフラン隊長!」 



2人の会話をニヤニヤしながら聞いてるとドラムの音が大きく3回響く、そして、2人は装備の確認をして馬を先頭に向かわす。すると先頭の第1戦闘部隊隊長が雄叫びをあげ、城から駆け抜ける。それに続くように第2、第3部隊が一斉に走り出す。


最後尾の部隊が見えなくなると、兵士の家族は町へ帰り、城の使用人たちは城の中に戻って行く。


俺はしばらく進軍した道を眺めてから城の中に戻った。

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