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魔王様は今日も暴走スパハニ幼女に|溺愛《お世話》されます。〜俺はそんなもの頼んでいない! もうほっといてくれ!〜  作者: 塵芥


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7:引きこもり魔王、お外に出る


 ある日の昼下がり。ノクティスはいつものように城内で静かな時間を過ごそうとしていたのだが……。


 エミリアの登場によりその安らぎの時間あっさりと破られる。


「魔王様~、たまには外に出てお散歩しましょうよ~! ほら、ジメジメしたところにずっといると、キノコになっちゃいますよ〜?」


 そう言って、腕をぐいぐい引っ張る。しかし、彼は眉間に皺を寄せながら抵抗した。


「うるさい、私は外が嫌いだ! それに、なぜお前みたいなわけのわからん奴と散歩などせねばならん!」


「だって魔王様、いつも部屋に引きこもってばっかりで肌が真っ白ですよ? ほらほら〜外に行けば苦手意識も薄れますって〜! それとも魔王様は雪なんですか? 日に当たると溶けて無くなっちゃうんですか?」


 にこにこ笑いながらもエミリアは、一歩も譲る気がない。


「なんでもいい! 溶けて消えるでもいい! 私は外に出ないと言っている!」


「あ〜はいはい。大丈夫ですよ? 魔王様が溶けちゃったら骨と心臓は拾いますね!」


「いやそこは助けろ!」


「あ、助けて欲しいんですか? 仕方ないですね〜。なら溶けちゃいそうなら氷魔法で補強してあげますね!」


 と、何故か外に行く流れになりつつある現状。


(うん? これは……)


 そう思うが、外に出れば自ずと魔王城にいる魔族以外とも関わらなければいけなくなる。


(俺は他者が苦手なんだ! ほっといてくれ! 絶対他の魔族とは会わん!)


 内心でそんな本音をぶちまけながらも、ノクティスは一応魔王ポジ。冷静さを醸し出しながら一言。


「私は執務で忙しいんだ。外に行きたいなら一人で行ってこい!」


「あっ、今日の執務はマッキャローさんが変わってくれてますよね? ほら、お日様が魔王様を呼んでますよ〜?」


「嫌だああああ! 私はひきこもっていたいんだああああ!」


 そんな抵抗も虚しく、「お日様が魔王様を呼んでますよ〜」とあっさりと外へ連れ出されてしまう。


 ◇


 外行きの衣装に着替えさせられ、久しぶりの外へでると、エミリアの言う通りそこまで悪くない気がする。


 しかし、無理やり外へ連れ出された身。


「まったく、私は子供ではないんだぞ……」


「ふふっまあ、たまには良くないですか?」


「──他の魔族と会わなければ……たまには悪くないかもしれん……(そんなわけあるか!)」


 本音と建前を逆にしながら、ノクティスは小さく呟くと、エミリアがさらりと問い返す。


「ですよね〜。魔王様ってほんと素直じゃないんですから〜」


 その反応に、自身が本音を口走ってしまったことを理解した彼は、顔を赤々と染めながらムッとした表情で反論する。


「うるさい! 君は口を閉じていろ!」


 しかし、わずかに頬が赤るんでいるせいか、まったく威厳のないノクティス。そんな彼を見て、エミリアはクスクスと楽しそうに笑うのだった。


 ◇


 そんなこんなでエミリアに連れてこられたのは、鬱蒼とした魔針葉樹が生い茂る森。


 太陽光はそこまで強く入ってこないが、空気が澄み新鮮な空気が汚れた空気と入れ替わっていく。


(……一人ならば絶対に来なかっただろうな)


 そう内心に落としつつ、小さく深呼吸をするノクティスに、エミリアは自作したであろう花冠を手に彼へと駆け寄った。


「魔王様、ほらこれ! 私が作った花冠ですよ!」


 にこにこ笑顔で、様々な色の花で作った花冠を見せびらかすエミリア。その様子はかなり純粋無垢で、なんの危害もなさそうに見える。


 しかし、ノクティスは嫌な予感を覚え身構えた。


「そんなもの要らん! 私に似合うわけないだろう!」


「え〜! まだ“魔王様の頭に被せる”なんて一言も言ってませんよ〜? え、そんなに花冠つけたいんですか〜? 可愛いですね!」


「な! 違う! お前のことだ。絶対、わ、お、私に被せようと企んでいただろ!」


「さ〜て、どうでしょう? でも、そんなに被りたいと仰るならば、魔王様の意向に沿わなきゃですね!」


 そう言うエミリアに、ノクティスは墓穴を掘ってしまったと後悔しつつも、花冠を被せられるなど魔王名が泣いてしまう。


「触るな、近寄るな!」


 必死に抵抗しようと様々な魔法を駆使してエミリアを排除しようと試みた。


 しかし結局のところそのすべてを避けられてしまい、意気消沈。


「はあ、はあ、君はなぜ私の魔法を避ける!」


「いや、だって危ないじゃないですか〜? それに、魔王様が手加減してくれますし、これくらいなら普通に避けれちゃいますよ?」


「いやいや、そんなわけあるか! そもそも私は魔力の制御が──って、ん?」


 ノクティスは、自分は感情が昂ると魔力暴走を起こし、未だに制御できないのだ! と言いかけ、ふとその言葉を飲み込んだ。


 防御結界のないこの森で、エミリアを追い払うために魔法を放っている。普段ならば森の半分くらいは吹き飛ばしていただろうに、周囲の樹木も地面もほとんど影響を受けていない。


(……これはどういうことだ……? いや、考えられるのはこいつがなにかしたということくらいだが……)


 ノクティスは自分の手を見つめ、小さく眉を寄せる。


(……そういえば最近、この女が現れてからというもの、魔力が暴走しても城が壊れるほどの被害は出ていない……。これは偶然か? それともまさかこいつのおかげで魔力が安定してきたというのか?)


 その考えに至った瞬間、ノクティスは即座に頭を振り否定する。


(いやいや、そんなわけない! 人間ごときがこの私にそんな効果を与えるはずがないだろ!)


 心の中で必死に難色を示しつつ、ノクティスはチラリとエミリアを見やる。彼女は屈託のない笑顔で自作の花冠を弄んでいるだけだったが、その姿を見ているうちに、妙な温かさが胸に広がり始めてしまう。


 しかし、その事実を認めるのはなぜか癪に触る。


 ノクティスは眉間に深い皺を寄せながら唸っていると、頭の上になにかがふわりと乗せられた。


「やっぱり似合いますね〜! 魔王様可愛いですよ!」


「は?」


 瞬間、ノクティスは優しく自身の頭に手を乗せ、怒号した。


「な、だから乗せるな! 私は花冠なぞ似合わん!」


 しかし、その花冠を乱雑に扱ったりはしない。ワナワナと手を震わせ花冠を頭から取るものの、それをエミリアに差し返し、お前がつけろ! と猛抗議。


 だがそんなノクティスの行動が面白かったのか、エミリアは心底楽しそうに笑うばかり。


(ああくそ、本当に調子が狂う……)


 内心で困惑しつつも、無駄な抵抗はやめようと小さく息を吐き出すと、ノクティスはその後もエミリアの玩具にされ続けるのだった。

次回、20:00更新!

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