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2人の出会い 2

時間が・・・・時間が足りない・・・・!!!

BA5C-3624-sへの積み込みは滞りなく進んでいる。

弾薬や食料品。衣服に至るまで。

私、N_70は違和感を覚えた。

本来12機搭載されているロボットポットの搭載数が6台しかない。

それにその部分には増加装甲が貼られており、気密化ユニットが設置されロボットポット搭載区画とのエアハッチなどが増設されている。

一般のBA5Cとはかなり異なる兵装。

公式マニュアルよりもスラスタ推力は3割ほど大きなものが搭載されている。最新鋭機のBA8の10%ほど高い推力。オーバースペック気味でBA5Cの強靭なフレーム構造でも高速戦闘機動は耐えられるかあやしいと思えた。

BA5C-3624-sはBAバトルアーマの5世代のC(Commander)型を指し、製造番号は3624でs(スナイパー仕様)の略称でチューンナップ機なのだけれど、これまで見たことはない。

もともと指揮能力機体は予備弾倉を抱えていることが多く、このBA5Cも拡張された弾薬庫を抱えている。意欲的な設計思想の元ロボットポットが搭載されているが、それに追加して予備弾倉のスロットも大きくなっている。

だがもともとノーマル機より大きかった弾薬庫がいまは居住区になっている。

思い返してみればN_70(私)に渡された指令書自体には特別詳しい作戦内容などは記載されていなかった。

上官も詳しい説明義務は無いとして、それ以上の情報も与えられなかった。

記載内容は作戦開始前に集合する場所と日時。

それまでに行うべき秘書階級研修と訓練プログラムリスト。

マスターの情報が入った記録媒体、搭乗機のマニュアル類だけだった。


ーーーーーーーー

>幾月か前の話

訓練のさなか辞令が飛んだ。

もらったマニュアル類は総なめし、BA5C狙撃タイプの訓練プログラムを履修する。

秘書階級認定のための身体訓練、座学も合わせて熟す。

一通りを終えて任意訓練のみとなった私は8人部屋の唯一の自分のテリトリーであるベットに転がった。

自分の上官であり、これからマスターになる人であるハインレイ中佐の個人情報を頭に叩き込むためだ。

ヘットマウントディスプレイではFN,MNの頭蓋の付け根に存在するプラグ素子と視覚野の相互作用で疑似的なダイブシステムを実現している。ベットに横たわった彼女は無重力空間に居るかのような感覚に陥る。

目の前にはハインレイ中佐の資料写真が幾つも浮かぶ。

従軍歴はまだ浅いが、その手腕は前線でいかんなく発揮されている。

小隊長についてからは戦果を他部隊に譲ることが増えたけれど

彼の部隊のいる戦場では自軍損耗率が極度に低く、作戦達成率も高い。

軍服姿で式典に出ている時の映像や、公式資料用のホログラム。

精悍な眼差しで職務に当たっている映像の中に、彼の戦友の記録装置がとらえた映像が幾つか混じる。

先のノルマルン惑星系での惑星降下作戦の際の映像だった。

私の網膜に彼の顔が焼き付く。この映像の真意が知りたくて私は情報データベースから

作戦ログをセットし戦闘シミュレーションを起動した。

映像が記録されたのは昨年の作戦時のもので、作戦の終わり近くにFNに投げかけられたもののようだ。

敵に占領された惑星の周回軌道にある監視衛星をジャックし、偽装コンテナを使用して降下攻撃を各都市一斉に行う飽和攻撃による破壊占領を実施する内容の作戦は大勝に終わったと記録にある。


もともと人が住まない資源衛星であることもあり拠点は数十か所のみであったがここを橋頭保にされると敵側の占領惑星よりも我が帝国領に近い惑星ためにさらなる侵略行為を許す結果になりかねないための早期攻略が求められていた作戦だった。

敵側の宇宙戦力が惑星防衛にしては戦力として大きなこともあり、

陽動として補給拠点ともなっている惑星内の拠点を殲滅、あるいは弱体化させ、惑星内防衛に宇宙戦力を割かせ、惑星防衛戦力混乱をきたしたところに、宇宙上の開戦を仕掛けることでわが軍宇宙艦の損耗を極限まで減らしたい軍部上層部の意図がある作戦内容である。

「これじゃ降下部隊は捨て石になるかもしれないじゃない」

思わず口に出る。

ハインレイ中尉は一番採掘都市に強襲部隊の後詰として投下された。

既に前線に展開している味方部隊と合流し戦線を押し上げる役目を担っている。

シュミレータ上で再現されるのは公式行動記録であり戦場で収集されたデータ群から再現されたホログラムを含んでいる。


定積通りの破壊占領作戦を実施した先行攻撃部隊は思わぬ反撃と航空支援を受けて損耗率3割を数え戦線の後退を余儀なくされていた。

ハインレイ中尉の部隊は降下中の上空から超精密射撃による敵指揮系統部への直接ダメージと迎撃のため降下してきた敵戦艦を都市に撃墜させる働きをみせ要所と思われていた一番採掘都市はあっけなく攻略されたのだった。

攻略が完了するころには宇宙上での対艦戦闘も終盤を迎え敵兵力を大きくそぎ、敵本隊の撤退を達成した。

続々と各隊が帰投要請をする中、ハインレイ中尉隊は帰投限界前日までロスト地点をできうる限り周り、

3名のFN,2名のMNを回収している記録が残されている。

それらの同乗パイロットは無事に回収帰投している。

この時に回収されたFN、MNはどれも脱出時にあるいは撃墜時などに負傷してパイロットに置いて行かれた者たちだ。

私たちはこのような場合に戦場で敵に捕まる可能性がある危険性が規定以上になった場合に自害するプロトコルが存在する。だが自害用プロトコルを発動できずにうずくまっていたものもいたようだ。


>映像はこうして始まっている。

パイロットが素行がわくる前任のFNを駄目にしたため、予備隊からあてがわれたFNと打ち合わせなく出撃したものの撃墜され緊急脱出装置を使用し脱出するもFNは足を負傷、パイロットはFNの分の食料と武器をもって本隊へ合流した旨が報告書に書かれている。

「どうして・・・・」潰れそうな声で映像内のFNはつぶやく

自壊プログラムによって原型をとどめず大破炎上するBA7型陸戦特化仕様の横でFNがうずくまって泣いている。

「そうよね」思わず声が漏れた。

彼女は3日はそのようにしているのが記録上わかっている。すでに撤退命令は出ているが彼女の足は折れている。鎮痛薬がスーツから自動投与されているされているせいで理性を保っているが、足はあらぬ方向に折れたままだ。身じろぐことはできても移動などは無理な話だった。

彼女は瞳を深く瞑る。涙が流れている。

「死にたくない」

撤退命令受理後、規定時間内に本隊に復帰できないFNは自害プロトコルによって自害が推奨されている。その時は近い。

首にある緊急便を強く押しこむか、BAや本部内の機器と認証が取れない状態で一定期限以上意識が飛ぶとF用パイロットスーツから一定時間後に脳細胞と素子構造体を解析不可能にまで溶解するナノマシンが注入されるようになっている。

彼女は歯を食いしばり首に手をかけた。

「プロト・・・コル順守は・・・・義務・・・であ・・る」

映像内でFNは教官の教えを復唱する。

その時轟音が鳴り響き同じくBA7型の狙撃機が高速で木々のさらに上を通過した。

パイロットスーツがオンラインを知らせるビーコンを発する

強い風がFNの髪を大きく揺らし、翻るようにブースターをふかしたBAがFNの前にゆっくりと回転しながら着地した。

上体を起こそうとするも衰弱と疲弊で首をそちらに向けることしかできないFNの視界に映るBAから

パイロットスーツを着た男性が下りてくる。ハインレイ中尉だ。

「君で最後だ」

それに合わせBAは人員収容姿勢をとり、金髪のFNが人員収容の手筈を整えているのが映っている。

パイロットはインカムで金髪のFNに指示を出しながら、息も絶え絶えなFNのスーツに触れて認証の確認を行い抱えあげる。

「大丈夫だ。君は生きている・・!生きていていいんだ!!」

そしてここが戦場ではないかのような、泣きそうなやさしい笑顔を彼女へ向けたのだった。

>ここで映像は途切れている。

本来パイロットになるような人種がFNやMNにこのように接することはないに等しい。

彼がただ単に聖人なのか、はたまた人でないものを愛する異常性癖者なのかはわからなかった。

しかし彼女の瞳はそれを見てしまった。

その現実をゆがめるほどの彼の笑顔は彼女の心に深く刻み込まれた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


N_70は足をさすりながらベットから起き上がり。

バイザーとプラグを抜いて脂汗をかいた額をぬぐう。


記録上は彼女もこの戦闘に参加している。

足の骨折のほかに大きな外傷、使用痕がなかったため彼女は戦闘時の苦痛や恐怖感をトラウマ化しないための措置としてメモリロンダリングを受けて新品として今ここにいる。

映像をみても多くの部分は自分の視覚素子から得られた映像である実感すら湧かない。

医療技術の進歩とパイロットスーツの性能の高さによって彼女の足の大腿骨の粉砕骨折は完全に修復されており、運動能力上はその怪我による後遺症や痛みを感じさせないレベルまで回復しており、今では一般のFNの平均値を大きく上回る性能値を出している。


ただ無意識に腿を触る癖はいつまでも治っていない。

あの時焼き付いた笑顔もメモリロンダリングでは洗い流すことはできなかった。


「カイ・・・・ハインレイ・・・・。

 そのようなお名前だったのですね・・。」


彼女はあふれ出る涙をぬぐいながら微笑んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「尉官殿、搬入完了しました」

作業員の声にナオは我に返って目の前のすべての積み荷が消えていることを確認する。

「ご苦労様でした。作業終了です。」

ナオは敬礼で作業員を送り出し、見上げるとハッチからカイ中佐がこちらに手を振っている。

指で耳を指さし、口をパクパクさせている。

インカム

そのように言っているように見えた。

ナオは慌てて指でインカムをアクティブにする。

「ご苦労様、上がってきてくれる?

 設定は私の方でやっておいたから」

ナオはびっくりして小走りでリフトに駆けながら答える

「ありがとうございます

 頬けてしまい失礼しました。」

「いいんだ、そんなに待ってないし、なんだかんだ整備区画はうるさいからね」

二人だけの時の優しい口調、そしてあの時にも聞いた優しい声色が耳をくすぐって

ナオはこそばゆい感覚を覚えた。


健康・・・・健康も足りない!!!!

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