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杞憂

作者: ほんの未来
掲載日:2023/02/13

 すみません、思うところあり、更新が止まっていました。

 書くべきか書かざるべきか、それでも書こうと思いました。それではどうぞ。

 むかしむかし、あるところに。

 今から2400年ぐらい? もっとかな? ほんとうに大昔のお話。

 ()という名前のちいさな国がありました。

 そこには、とてもとても心配性な男がおったそうな。


「大空が落ちてしまうんじゃなかろうか」

「地面が崩れてしまうんじゃなかろうか」


 そんなことを、いつもいつも(うれ)いておりました。


 そんな具合では、夜も眠れず、食事も喉を通らない。

 いやはやまったく、困ったものだね。2番目の魔王にでも取り憑かれたのかな?

 そんな憔悴しきった彼だったが、友人には恵まれていた。


「もう全て落ちてしまったのだから、これ以上、空が落ちるはずもない」

「もう全て崩れてしまったのだから、これ以上、地が崩れるはずもない」


 そう説得され、ようやく一安心。

 美味い飯に深い眠りで人心地。

 馬鹿なことに頭を痛めたものだよと、友人と語らい酒を呑む。

 めでたしめでたし。ハッピーエンドだよ、当然かな?


 けれど。それでもだよ?

 ……彼の心配こそ、真実、正しかったんじゃないか?

 全てが手遅れになって、ようやく、そう思うんだ。


 そりゃあ、そうだろうさ。

 だって、誰が信じるよ?

 ああもう、全てが台無しだ。


 新たな自由を求めた結果。

 大地、消失。


   †


 ああ、これ夢だな。

 毎度いつもの悪い冗談。

 前回の短編も夢オチエンドじゃなかったっけ? 芸がないね。

 まったく、困ったものさ。

 落下、落下、自由な落下。

 地面がないのに、下って? こっち? そっち? あっちってどっち?

 たぶん、頭の方? 真っ逆さまだね。まいがー。


 幸いにも? 急に地面がなくなったものだから。

 不意に生まれた真空を埋め尽くさんと、大空が墜ちていく。

 私は大気と連れ添い同じ速さ。空気抵抗は無視できるね、やったね!

 流れ星のように燃え尽きるでもなく、ただただ、えんえんと。


 ああ、もしやあれかな? これは。

 地球をビー玉サイズに圧縮すると、いい感じのブラックホールになる的な?

 ブラックホール落下エンドも前々々々々回やったし。もういいって!


 地球の半径が6400キロメートル? だから640万メートル。

 空気抵抗考えずに重力定数が……ええと。19分ぐらいかな。

 もう1分ぐらいは経ってるから、あと18分で落下を終える。

 相対論的効果? 時間と空間の歪み?

 ああもう頭痛いな、まぁいいやニュートン近似で。


 開き直って辺りを見渡しても、何もなかった。

 あれ? 何もないの? ああそか、そういうことか。

 私はすっかり馬鹿馬鹿しくなっちゃって、肩の力も抜けていて。

 足掻こうなんて気力もすっかりなくなっちゃって。

 何もかもどうでもよくなっちゃって。諦めちゃっててさ。

 手で空を掴もうとさえ、しなかった。


 そんな具合だから、私が誰よりも速く墜ちてるだけ。

 崩れゆく私たちの世界は、その全ては足もとにあったんだ。


 見下ろせば。あるいは見上げれば?

 私たちと、私たちが作りあげてきた全てがそこにあった。


 偽金貨と勇者金貨。少年の慟哭。峠のヌシと量産型うさぎさん。酔狂な装飾品。へのへのもへじの案山子。義賊とその相方。とある動画配信者さん。ギター1本。94249キロで手放した愛車。ソフビ人形。やたら美味そうなおにぎり。ふざけた名前の難破船。決意表明。往復切符。馬鹿げたサイズのロケット……いやあれ、飛んでいったんじゃなかったっけ? 行動記録。追想記録。いつぞやの給与明細。荒れ果てた幽霊町。


 無事なのは衛星軌道のアイツぐらい?

 でも補給がないと、遅かれ早かれ藻屑なんだけど。

 人類の最前線でようやく自由落下に耐えられる? 耐え続けるのは無理っぽいが。


 どんな理想も、現実を前に無力で。

 崩れゆく幻想から、私は目を背けた。


 私の信じたそれらが、消えてなくなってしまう前に。

 せめて、私が先にいなくなっちゃえばいいかな、なんて。


 そっと目を閉じ、沙汰を待つ。

 そんな私の耳朶を打ったのは。


 君の声。


 どこにいるのか分からなくてさ。

 空を掻いて、辺りを何とか見回して。

 不格好に君を捜す。


 笑っちゃうぐらい、何もかもを失っても。

 それでも確かなことがある。


 私がいて、君がいる。

 そして、世界はひとつきり。


 問われるべきは、ただひとつ。

 君の手を取る勇気が、私にあるだろうか?


 どうか、あとすこしだけ。


 夢ならば、覚めないで。

 毎回感想をくれてる某友人より、前回短編『そして誰もいなくなった。ついでに、お金もなくなった。』について。

「私なら地域振興券が欲しいなぁ~!」なんて感想を頂きました。

 なるほど、地域通貨……! そのアイディアはなかった。

 長編でUBI……ユニバーサルベーシックインカム的な世界観を展開してるせいか、どうも話を壮大にしがちなところ、地元地域に根ざした考え方ができていませんでした。


 というわけで。


???「お肉券とか野菜券とか魚券とか! 地域振興券ばらまいたらどうよ!」

最悪魔王「くくく……ふふふ……あーっはっはっは! では答えてやろうではないか!」

???「どきどき」

最悪魔王「普通に町の財政破綻! バッドエンドその3だ、おめでとう!」

???「いやいや、そこは増税とかで――」

最悪魔王「足による投票。税金きつすぎて、皆普通に逃げ出して、そして誰もいなくなった。バッドエンドその4! 立て続けにおめでとう!」

???「ああもう、本当にクリアさせる気ないな!?」

最悪魔王「難易度ルナティックは伊達ではないわ! 友人さんのまたのチャレンジをお待ちしておるぞ!」


 さて、明日はバレンタインですね! チョコレートネタで、まるで甘酸っぱくない話を掲載……が、頑張って間に合わせます(汗)

 あとがき下のところから、評価を頂けると作者のテンションが爆上がります。よろしくね!^^

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