杞憂
すみません、思うところあり、更新が止まっていました。
書くべきか書かざるべきか、それでも書こうと思いました。それではどうぞ。
むかしむかし、あるところに。
今から2400年ぐらい? もっとかな? ほんとうに大昔のお話。
杞という名前のちいさな国がありました。
そこには、とてもとても心配性な男がおったそうな。
「大空が落ちてしまうんじゃなかろうか」
「地面が崩れてしまうんじゃなかろうか」
そんなことを、いつもいつも憂いておりました。
そんな具合では、夜も眠れず、食事も喉を通らない。
いやはやまったく、困ったものだね。2番目の魔王にでも取り憑かれたのかな?
そんな憔悴しきった彼だったが、友人には恵まれていた。
「もう全て落ちてしまったのだから、これ以上、空が落ちるはずもない」
「もう全て崩れてしまったのだから、これ以上、地が崩れるはずもない」
そう説得され、ようやく一安心。
美味い飯に深い眠りで人心地。
馬鹿なことに頭を痛めたものだよと、友人と語らい酒を呑む。
めでたしめでたし。ハッピーエンドだよ、当然かな?
けれど。それでもだよ?
……彼の心配こそ、真実、正しかったんじゃないか?
全てが手遅れになって、ようやく、そう思うんだ。
そりゃあ、そうだろうさ。
だって、誰が信じるよ?
ああもう、全てが台無しだ。
新たな自由を求めた結果。
大地、消失。
†
ああ、これ夢だな。
毎度いつもの悪い冗談。
前回の短編も夢オチエンドじゃなかったっけ? 芸がないね。
まったく、困ったものさ。
落下、落下、自由な落下。
地面がないのに、下って? こっち? そっち? あっちってどっち?
たぶん、頭の方? 真っ逆さまだね。まいがー。
幸いにも? 急に地面がなくなったものだから。
不意に生まれた真空を埋め尽くさんと、大空が墜ちていく。
私は大気と連れ添い同じ速さ。空気抵抗は無視できるね、やったね!
流れ星のように燃え尽きるでもなく、ただただ、えんえんと。
ああ、もしやあれかな? これは。
地球をビー玉サイズに圧縮すると、いい感じのブラックホールになる的な?
ブラックホール落下エンドも前々々々々回やったし。もういいって!
地球の半径が6400キロメートル? だから640万メートル。
空気抵抗考えずに重力定数が……ええと。19分ぐらいかな。
もう1分ぐらいは経ってるから、あと18分で落下を終える。
相対論的効果? 時間と空間の歪み?
ああもう頭痛いな、まぁいいやニュートン近似で。
開き直って辺りを見渡しても、何もなかった。
あれ? 何もないの? ああそか、そういうことか。
私はすっかり馬鹿馬鹿しくなっちゃって、肩の力も抜けていて。
足掻こうなんて気力もすっかりなくなっちゃって。
何もかもどうでもよくなっちゃって。諦めちゃっててさ。
手で空を掴もうとさえ、しなかった。
そんな具合だから、私が誰よりも速く墜ちてるだけ。
崩れゆく私たちの世界は、その全ては足もとにあったんだ。
見下ろせば。あるいは見上げれば?
私たちと、私たちが作りあげてきた全てがそこにあった。
偽金貨と勇者金貨。少年の慟哭。峠のヌシと量産型うさぎさん。酔狂な装飾品。へのへのもへじの案山子。義賊とその相方。とある動画配信者さん。ギター1本。94249キロで手放した愛車。ソフビ人形。やたら美味そうなおにぎり。ふざけた名前の難破船。決意表明。往復切符。馬鹿げたサイズのロケット……いやあれ、飛んでいったんじゃなかったっけ? 行動記録。追想記録。いつぞやの給与明細。荒れ果てた幽霊町。
無事なのは衛星軌道のアイツぐらい?
でも補給がないと、遅かれ早かれ藻屑なんだけど。
人類の最前線でようやく自由落下に耐えられる? 耐え続けるのは無理っぽいが。
どんな理想も、現実を前に無力で。
崩れゆく幻想から、私は目を背けた。
私の信じたそれらが、消えてなくなってしまう前に。
せめて、私が先にいなくなっちゃえばいいかな、なんて。
そっと目を閉じ、沙汰を待つ。
そんな私の耳朶を打ったのは。
君の声。
どこにいるのか分からなくてさ。
空を掻いて、辺りを何とか見回して。
不格好に君を捜す。
笑っちゃうぐらい、何もかもを失っても。
それでも確かなことがある。
私がいて、君がいる。
そして、世界はひとつきり。
問われるべきは、ただひとつ。
君の手を取る勇気が、私にあるだろうか?
どうか、あとすこしだけ。
夢ならば、覚めないで。
毎回感想をくれてる某友人より、前回短編『そして誰もいなくなった。ついでに、お金もなくなった。』について。
「私なら地域振興券が欲しいなぁ~!」なんて感想を頂きました。
なるほど、地域通貨……! そのアイディアはなかった。
長編でUBI……ユニバーサルベーシックインカム的な世界観を展開してるせいか、どうも話を壮大にしがちなところ、地元地域に根ざした考え方ができていませんでした。
というわけで。
???「お肉券とか野菜券とか魚券とか! 地域振興券ばらまいたらどうよ!」
最悪魔王「くくく……ふふふ……あーっはっはっは! では答えてやろうではないか!」
???「どきどき」
最悪魔王「普通に町の財政破綻! バッドエンドその3だ、おめでとう!」
???「いやいや、そこは増税とかで――」
最悪魔王「足による投票。税金きつすぎて、皆普通に逃げ出して、そして誰もいなくなった。バッドエンドその4! 立て続けにおめでとう!」
???「ああもう、本当にクリアさせる気ないな!?」
最悪魔王「難易度ルナティックは伊達ではないわ! 友人さんのまたのチャレンジをお待ちしておるぞ!」
さて、明日はバレンタインですね! チョコレートネタで、まるで甘酸っぱくない話を掲載……が、頑張って間に合わせます(汗)
あとがき下のところから、評価を頂けると作者のテンションが爆上がります。よろしくね!^^




