第5章
操縦していたラグラーラ中佐は、モンテビデオとサンチアゴ間の1500キロを、約4時間で一挙に飛ぼうと考えていた。
その朝、東海岸地方は快晴で、離陸後三十分して、ブエノスアイレス上空に差しかかると、窓から道路や公園が手に取るように見えた。
そのあと飛行機は、アルゼンチンの広大な『パンパ』を横切ることとなる。
・・・見渡す限り、まっ平らな草原だ。
彼らは退屈をまぎらわすために、漫画を読んだり、冗談を言ったりしていた。
だが、十一時になると、フェラダスとラグラーラは、迫ってくるアンデス山脈を眺めながら、天候悪化のきざしを見て取った。
アルゼンチンのメンドサ空港の管制塔からも、フェアチャイルド機のアンデス越えは危険になったと通告してきたので、フェラダス機長は、メンドサに着陸して、天候の回復を待つことに決定した。
乗客たちの中には、失望した者もいたらしい。
チリ滞在が一日短くなって、しかも、費用が余分にかかるからである。
彼らは、いくつかのホテルに分かれて泊まり、その日は観光をしたり、写真を撮ったり、ワインを飲んだりして過ごした。
当地の大学を訪れたり、女の子と知り合って、踊りに行った学生もいる。
他の何人かは、『バーブラ・ストライサンド』の映画を観に行った。
・・・この、メンドサでの二十四時間滞在は、あとになって大事な意味を持つのだが、もちろん、誰もそれに気づいてはいない。