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第13章
「・・・私たちは、ある朝早く、事故の現場を目指した、アンデス登山を始めました。
いまは雪解けの最盛期なので、アンデス山中に入るには、いちばんいいときです。
・・・でも、危険もあります。
もし、雪が早く来たら・・・これらの峠は、すぐふさがってしまうのです。
このへんまで登ると、生物は見当たりません。
人も動物も植物も、姿を消しました。
ただ、夏のあいだだけ、羊飼いと羊が、このへんまで来ます。
・・・高くなるにつれ、空気が薄くなります。
息苦しくなり、すこし動くにも、大きな努力が要ります。
息子たちも低地でしか暮らしたことはありませんから、あんな高いところで慣れるまでの数日は、特に苦しかったろうと思います。
『ハビウル・メトール』の場合は、苦しさもいっそうだったでしょう。
彼とは、古いつき合いです。
生存者の中では、最年長者でした。
・・・彼はずっと吐き続けて、ほとんど動けなかったといいます。」




