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エッシャーの城>>闘争>>9

 扉の前に座り込んでいると、逆に床が揺れているような気がしてくる。躍るサルーキ、降り注ぐ銃声、夜の中に膨れ上がる炎。アレクは床に手をつき、暫くの間惚けていた。どこを探しても、先輩への説明が見つからない。作戦は成功した。子供達は助かり、ニコライ達は帰ってくる。

 ただ、その中にバトゥはいない。最初に助けられた時から、よそ者のアレクにも何かと気を遣ってくれていた。そのバトゥが山の中に捨て置かれたきり、亡骸が残っているかどうかさえ分からない。一緒に戦ってきた筈のニコライ達にとって、しかし、それは大したことではないという。

 理解できずとも、戻って先輩に伝えなくてはならない。アレクは立ち上がり、自分の扉へと歩きだした。

「うたた寝の割には、随分と長かったなぁ……終わったのか?」

 声のした方を探すと、先輩が床を掃いていた。大方の片付けはもう終わってしまったようだ。

「作戦は成功したよ。まだ撤収は終わってないだろうけど」

 アレクが笑いかけると、先輩は両手で箒を天に掲げた。

「よっしゃー! やっぱウチのメンツ、タダもんじゃねえや!」

 アレクも同じように、勝利を喜ぶべきなのだ。アクシデントを乗り越え、実働部隊は子供達を見事に救い出した。それも追手を全滅させるというおまけ付きで。

「ああ、確かに凄かった。帰り道で攻撃ヘリに追いつかれてさ。それを返り討ちにするんだもんな、あの人達は……」

 だが、バトゥは死んだ。勝ち戦でも、味方は死ぬ。ニコライの言葉の意味が、アレクには全く分かっていなかった。

「どした?」

 目を伏せたままのアレクを先輩は訝しがったが、腹の底に沈んだまま、答えは口から出てこない。

「いや、何でもない」

 アレクが伝えられたのは、後ろ向きな要望だけだった。

「それより、このこと、皆には黙っててくれないか? 仲間のことを覗いてたなんて、やっぱり気が悪いしさ」

 先輩がぎこちなく頷くと、アレクは立ち上がり、自分の箒を取りに行った。

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