第8話「アナザープレイス」
「おい、そこのやつ、俺がそこを使う、どけ」
「そこのやつって私のこと?」
男と女は互いに見つめあった。先に沈黙を破ったのは男の方だった。
「そう、あんただ!」
「君、見ない顔だね、新人さん?」
女の方は座ったまま男の顔をまじまじと見た。
「まあ、新人っちゃ新人だ。でも俺は誰よりも早くブリエになる」
男も負けじと見つめ返した。
「威勢がいいね。でもてことは私の方が先輩でしょ?先輩にお前呼びは良くないと私は思うけど。」
「た、確かにそれもそうだけど!先輩だろうが、俺より弱かったら下だと思う。嫌だったら俺より上だと証明してくれ」
男は一瞬引いたが再び戦闘態勢に入った。
「証明って、なによ。じゃあ手合わせでもする?君が勝ったらこの場所使わせてあげる」
「、のった。」
「でも、俺強いっすよ、あんまりなめてたら、」
「なめてないなめてない。ただ、じゃあ私の事見縊るのもやめようか」
「じゃあいくぞ、サモン解除。5.6.2 グラセ・アイシクル!!!」
「ピンクなのに氷か。」
技を叫んだ雪村はポケットからだした弾を大きくし、サッカーボールほどにした。その弾を女に向かって蹴りあげると弾はがぢがちに氷で固まり、飛んでいった。
「サモン解除。6.8.4 デイビスプルコット」
女は分析するように氷を避けながら自分も超能力を出した。
「そっちは分裂かよ。しかも4体は厄介だな割と。」
「くそ、どれが本物だ、めんどくせえ、」
男は4体に囲まれ、氷を出し損ねていた。そのまま勢いに任せ氷を一体にぶつけた。しかしそれは一瞬で消えてしまった。
「ちっ、偽物かよ。」
「戦い中のイライラは禁物だよ。はあ!」
女はすかさず一体に戻ると腕を掴み男を投げ飛ばした。
「グハッ。4と1は卑怯だろうよ、くっそ。」
男が床にたたきつけられた音が響く。
「仕方ない、私の能力分裂しかないもーん」
女は初めていたずらに笑った。
「強いな、あんたブリエじゃないのかよ」
痛めた体をストレッチしながら聞いた。女はブリエと言う言葉に反応するように笑顔が消えた。
「ブリエね、こんなもんでやられてたらまだまだ長い道だよ、後輩くん、」
「その、あん、いや、せ、先輩はなんでこんなとこで訓練してんの、」
「はは、先輩ってなんかいいね。」
「からかわないで、ください、」
「ごめんごめん。訓練は強くなるために決まってるでしょ?」
「それもそうっすけど、クープルとかとやればいいのになって。」
至極当たり前のように話す男を引くような目で見ていた。
「えー、君も一人で来たんだから一緒じゃん、」
「お、俺はなんか馬が合わねーって感じで。きっと俺の事嫌いだろうし」
顔を下に向け俯きながらつぶやく。
「嫌い?新人のくせにもう仲間割れ?16年も一緒にいたのに突然?」
「俺、みんなとは会ってまだ1週間っす。俺雪村なんで。」
「え、え?雪村?ってあの?うわまじか!有名人じゃん」
女はさっきまでの真顔がうそだったかのように驚き後ずさった。
「まあ、そうですね、」
「じゃあ尚更なんでこんなとこで訓練?」
「雪村だから、強いと思われるのは当たり前だし、俺はさっき自分が弱いことを学んだんで。」
雪村は何かを決心したように女の方を向いた。
「そうね、自分が思ったよりも弱くて絶望する瞬間は何回も来る。君が私レベルで弱いかは知らないけどさ。いつか、乗り越えなきゃ行けないんだよね。自分自身で。」
雪村は女が雪村に話しかけているようで独り言のようなそんな気がした。
「あの!俺を弟子にしてくれませんか?」
「はあ?何それ!私弱いって言ったよね?」
そう言って女は立ち上がり、歩き始めた。
「ちょ、どこ行くんすか。」
雪村も慌ててついて行った。
「けじめ付けに。君もそっか新人なら行く場所は一緒だ。着いてきて。」
「行くって、あのあいつが言ってた縦割り?見たいなやつですか?」
雪村はサモンをいじりながら問いかけた。その時、雪村はハッとした様な顔をして、女にさらに問いかけた。
「あ、あのそういえば名前って、」
「ああ言ってなかったっけ、私の名前は、」
「鶴河、」゛「有澄、 .....?」'
同じ言葉を同時に発した2人はしばらく見つめあって有澄は顔がみるみる赤くなった。




