第7話「縦割り」
けたたましくなるアラームの音で凛は体を起こした。憎たらしい液晶画面には6:15という数字が浮かび上がっていた。
「まだ、余裕だな」
髪の毛を適当にとかし、サモンを付けた。すると、なにかに気づいたように棚の方へ足を運んだ。棚から小さなカプセルを取りだし、水でながしこむ。凛はそのまま早々に部屋を出て、人目のない林に入ると、筋トレを始めた。
次第に凛に足音が近づいてくるが、凛は気づかなかった。
「おい、」
「わああああああ!」
「そんな驚くやつがいるかよ?はは、」
凛の予想外の反応に笑みをこぼした。
「お前、昨日のやつだろ、朝から何してんだよ」
凛の前に現れたのは、昨日とはうって代わりぼろぼろになっている雪村だった。
「雪村くん?どうしたの??そんなに怪我して、」
「俺がまだ全然弱いことを知ってきた、」
「それは、どういう?」
「まあ今日からギルドに参加するから」
雪村は先程の笑顔は嘘のように硬い表情をしていた。
「うんよろしく!…えっと?」
雪村は凛のことをなにか回答を求めるようにじっと見つめていた。
「え、俺さっき質問しなかったっけ、」
凛は雪村の怪訝そうな顔に驚いた。
「ああ!あの質問まだ有効だったのか、」
「俺は、特訓してるの!超能力が弱いからさ、体は作っとかないとでしょ?」
「超能力弱いのか。変なこと聞いて悪い。でも特訓するならあの弱そうなのふたりはどうした?」
悪びれる様子もなく平然と聞いてきた。
「いやあのさ!2人とも弱くないから、見た目で判断するのはなんかつまらなくない??」
凛も謎の返しを見せ、二人の会話は不思議な方向へ進んで行った。
「どういうことだ?つまんない??」
「だから、その人と関わることで思ってたのと違う!って知れるわけじゃん?超おもろいじゃん!」
「知るのが、楽しいのか?」
「楽しいよ!俺はそのために生きてる!」
「よくわかんないけど、悪かったな」
雪村は少しの微笑みを凛へ向けた。
「雪村くんもっと冷徹!って感じの人かと思ってたよ」
凛は雪村の顔を覗き込んで微笑んだ。
「お、俺。いや、雪村朱晴は冷徹だよ、」
雪村はすぐにいつもの無表情に戻り荷物を持ち出した。
「一緒に行く?どうせ行先同じだし」
凛も荷物を持ち出した。
「俺は群れる気は無いと言ったはずだ。」
そう言うと雪村は1人で歩き出した。
凛は腑に落ちないながらも2人を迎えに行こうと逆方向へ歩き出した。
「凛、どこいってたの?」
春音は心配そうに凛を見つめた。
「ちょっと散歩ー。目が覚めちゃったからさ、」
凛はぎこちなく笑った。春音は凛のぎこちなさの意味を理解していたが、余計な詮索は入れなかった。
「アマネ、もう行けそう?」
「はい!大丈夫です!」
3人は支給された隊服に着替えて寮を出た。
「何するんだろうな。」
「わからないけど、アマネさんもいるんだし危険なのはやめて欲しいよね。」
春音は心配そうにアマネを見つめた。
「戦闘経験はないので、少し怖いです。」
「心配することない、俺たちが守るし。それに敬語とかいいよ!いつも通りのアマネでいてくれて全然かまわないよ、」
「いつも通りの私、」
アマネは凛の言葉にハッとして考え込んでしまった。
「いやその!気を使わなくていいだけだから、そのままでも大丈夫だから!」
凛はアマネを見て慌てて訂正した。
「それにしても僕たちの面倒を見てくれる先輩がいるってことだよね。」
春音はこの時、雨汰ではないかとふと思ったが、ブリエである彼が自分たちに着くとは到底思えなかった。
「雨汰先輩が着いて欲しいな、!」
「それは無いでしょ、相手ブリエだよ?」
「まあそれもそうだけどさ、うちには春音いるからあるかもよ?」
「春音さん?」
アマネは凛の言葉の意味がわからなかった。
「なんでもないよ凛そういうのやめてよ」
「ごめんって。でも事実だろ?」
2人はそれ以降目的地に着くまで口を開くことは無かった。
「ここですよね、たしか。」
アマネは意を決して口を開いた。
「そうじゃない?なんか、同期たちいっぱいいるし。」
アマネの心配を他所に案外普通に口を開いた。
その後、サイレンがなり、放送が入った。
「これより、縦割り活動を行う。後ろに張り出される紙を見て移動するように。」
「毎回アナウンスとかってあのおじさんだよな、」
凛の疑問を無視し、春音は紙を見ていた。
「僕達は第4班だから、え、」
「どうかした?」
「予想が当たっちゃったみたいだよ」
春音はぎこちない笑顔を浮かべて手をふるわせていた。
「おっ!予想していたか、俺が君たちにつくって!」
そんな春音と凛の頭をがっちりつかみ、男は話しかけた。
「立花先輩!!」
「よお!よろしくな、」
ニコニコと微笑みかけるとすぐにキョロキョロしだした。
「先輩?どうかしましたか?」
「いや、雪村くんいないなあと思って、あと」
「ゆっきーなら、もうすぐ来ると思いますよ!なんかお風呂入ってるっぽかったので、」
凛は春音とアマネの空気の変化に気づいていなかった。
「え、凛、なんであいつのそんな事情知ってるの、」
「なんでってこのサモンで班員とは連絡取れるじゃん、それで聞いたんよさっき、」
「もうそんな話せる仲になってたのか、」
春音は明らかに狼狽えていた。しかしすぐにフードをかぶり黙った。
「まあそれならいいんだけど。それよりも有澄なんだ、俺が探してるのは」
「ありす?さんとは誰ですか?」
女の人らしい名前を聞いてアマネは雨汰に詰め寄った。
「ああ、有澄は俺のクープルでさ。前に言ってた探してる人、なんだよね」
雨汰は恥ずかしそうに頭をかきながら、ぎこちなく微笑んだ。
「そうなんですね。きっと来ますよ!信じてたらきっと!」
凛はなんの迷いもない瞳で雨汰を見つめた。
雨汰はその瞳を見てつぶやいた。
「その真っ直ぐさに俺はめっぽう弱いんだ」
「何か言いましたか?」
「いや!なんでもない!そうだな!」なんたって俺の相棒だよ!」
雨汰はニヒッと悪ガキのように笑った。
「なんたって!俺の相棒の鶴河、」




