第23話「それぞれの優しさ」
「また怪我?ってこれ殴られたあとじゃない、」
雪村は2人を連れて真っ先にPome内の病院を訪れていた。
「すいません白峰先輩。やられちゃって、」
雪村に体重を預けたまま凛は傷だらけの顔で笑ってみせた。
「そっか、今日から学校か。また酷い奴がいたのね。」
琴葉は春音と凛をベットに寝かせ、怪我しているところに手を当てた。するとみるみると体は元の状態に戻って行った。
「はあ。こっち側からは何も出来ないもんね」
「というか!私この病院いるの月水金土だけだからね!覚えといて!いなかったら怪我治らないんだからね!」
「はい!もちろんです。でもこんな傷したのバレたら俺がぶっ飛ばしたこともバレちゃうし。今後はやりません。あの、それで、今立花先輩っていますか?」
凛は気まずそうに口角を上げた。
「はあああ?こいつら部屋にワープさせるためだけに俺呼んだの?マジで?あれ?俺ブリエだよね?そして、出張帰り!」
琴葉に直ちに病院へ。というメッセージを受け取り、慌ててワープしてきた雨汰は事情を聞き呆れていた。
「いやごめん!私もこれ以外の方法思い浮かばなくて、」
「ほんとすいません!」
「まあいいけどな!存分に頼りなさい!それより、初実戦おつかれな。」
雨汰は凛の頭に手を置いた。
「はい。まあ俺は全然何も出来ませんでしたけど、」
「最初はそんなもんよ!それより、白峰悪かったな行けなくて。あの日俺当番だったのに。」
「大丈夫よ、茜くん出てくれたし」
「茜には悪いことしたな。しばらく会えてないんだよ。」
「立花は今あっち側調査中でしょ?まだまだかかりそうだもんね。」
「その、茜さんっていうのは1位だった千明茜さんのことですか?」
凛は興味津々に会話に入った。
「ああそうだよ。俺たちと同じブリエ。」
雨汰はやけに優しい笑顔で微笑んだ。
「で?どーしたのこの怪我は、春音なんてまだ意識が戻ってないじゃないか、」
「えっと、その今日から学校で、」
凛は気まずそうに答えた。
雨汰も2人を見るなり悔しそうな表情を浮かべた。
「やばいのがいたみたいだな、」
「はい。はるの、春音の中学校の時のトラウマになった子がいたみたいです。」
「まあ俺たちが通える学校は限られてるしな。それにしても酷いやられようだな。相当俺らに恨みかなんか持ってるだろコレ。」
「どういう流れであんなになったかはよくわかんないんですけど、」
「とりあえず、耐えるしかないな、すまない、俺も学校に関しては何も出来なくて、」
苦虫を噛み潰したような顔をする雨汰を見て、凛はわざととびっきりの笑顔を作った。
「いいですよ、いざとなったら休みます!俺も一緒に!」
凛は最初はニコニコと笑っていたが、春音の方を見る雨汰の顔を見るとその笑顔は徐々に消えていった。
2人をワープさせ、手を振って見送ると、雨汰も家に戻ろうとしていた。
「あの、立花、」
そんな雨汰を琴葉は止め、もう一度椅子に座らせた。
「なになに?白峰まだここか?」
「まああとちょっとで帰るけど、その。今家に有澄しかいないから、」
少しの間を置いて、白峰は口を開いた。
「有澄、が帰ってきたのか!!」
雨汰はすごく驚いた表情をし、椅子から立ち上がり、あわあわと動きだした。
「ちょっと落ち着いて、割と前のことよ、てっきり縦割りの時に仲直りしたもんだと、」
「いや、あの時はさらに傷つけちゃったというか、なんというか、」
雨汰は首を下にむけた。
「でも別に何ともなさそうだったし、立花探してたからそこまで怒ってないんじゃない?」
「こんなこと言うと有澄が怒りっぽい感じになるけど怒るの立花にだけだからね、」
「わかってるよ、ちゃんと謝らないと、」
雨汰は決心したように立ち上がり時計に手をかけた。
「あ、言い忘れてた。あと茜くんもいるから今2人が家、かも?」
「有澄と茜が、2人、?」
雨汰は急いだようにワープを使って消えていった。
「あ、おかえりなさい。父さん。」
しばらくの沈黙の後コートを使用人にぬがせながら男は口を開いた。
「高貴か。なんだその怪我は?また喧嘩したのか、全く何回いえば気が済むんだ。」
「いや、なんか巻き込まれちゃってさ、それより聞いてよ、俺のクラスにPomeのやつが来たよ。」
男は高貴の話はついでに手を洗い、洋服を着替え席に着いた。
「そうか。Pomeって言ったって喧嘩のひとつもやめられないようなやつよりよっぽど出来がいいんじゃないか?まあいい。私はもう寝る。また1ヶ月は帰ってこないから。」
「そ、そっか。じゃあおやすみなさい、」
(俺がPomeよりも弱いだと?そんなわけがあるか、あいつら許さない、父さんに媚びたのか、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、)
「はる、はる!」
春音はかすかに聞こえる自分を呼ぶ声を頼りに目を開けた。
「凛?どうした??」
目を擦りながらベットから体を起こし、凛の方を向いた。
「いや、学校、遅刻しちゃう、!」
凛は言いずらそうに春音を起こした。
「うん、わかった、準備するから待ってて。」
春音が準備を終え、外へ出ると、手を振ってきた凛と眠そうな不機嫌な顔で待っている雪村がいた。
「朱晴、何かあったら頼む、後、朱晴自身も気をつけろ、」
「わーってるよ、凛の頼みだ。まかせな」
雪村は凛の方を一回叩き、春音の隣に立って教室へ歩き出した。
「…別に、僕のこと気にしないで、」
「ああん?お前はどーでもいい、俺が不愉快だったらキレる、それだけ」
「あっそ、」
2人が教室を開けると一斉に視線が2人へ集まった。2人はその視線を無視し、席に座る。
「黒水ー、来ないと思ってたよ、昔みたいに」
高貴は春音の姿を認識するとすぐに春音に近づいた。
「お前、もうこいつに絡むな」
雪村はそんな高貴とりあえず春音の間に体を割って入れた。
「はああ?お前何?Pomeだか人間かもわかんねえ様なやつ黙ってろこの模倣品が、」
「確かに俺はどっちの模倣品でもあるな。なんたって俺は特別な存在だからな」
雪村は高貴の睨みをニヤつきで返した。
「黙れ、お前は特別じゃない、黙れよ、」
高貴は先程までの偽りの笑顔が消え、憎悪の表情をしていた。
「怒ったか?」
雪村はさらに高貴の顔をのぞき込み、少し口角を上げた。
すると、次の瞬間、雪村の顔にはパンチが当たった。はずだったが、瞬時のところでさけた。
「お前なんかな、俺らの前じゃ何も出来ない、ただの武器なんだよ人間様のためのな!」
「知ってたか?お前らなんかの攻撃普通だったら当たるわけねえんだよ、ノロマ」
この言葉に高貴はさらにブチ切れ、攻撃をし続けたが、1発も雪村に当たることは無かった。
「もう終わりか?黒水はお前の機嫌が悪くならないようわざと当たってなかっただけだぞ?だっさ」
雪村は避けながらも決して春音に高貴を近づかせなかった。
「ははっ、戯言を。あいつのどこにそんな力あるって?」
「いいから、もうやめろよ」
雪村は高貴にそう言い捨て席に戻った。しかしその場から動かない春音に気づくと首根っこをつかみ席へ誘導した。
「なんか、ごめん」
「はあ?だから言ったろ、凛に言われたからな!そこ忘れんなよ?」
「わかってる、」




