第2話「出会い」
オリジンとMYUの境では明らかに異常事態が発生していた。
「あ!確かにな、さすがはる」
これはどう考えてもおかしい事態だった。
今までの歴史でもこの結界を破れたものはいない。まず発生源も分からないものを対処するなんて不可能だかららしい。しかし今の状態はその歴史を覆してしまっている。そしてこんな好奇心の塊のような人物が見つけてしまったことに春音は頭を抱えていた。凛なら絶対なにか行動を起こしてしまうと。
「君、名前は?」
「え、あ、その、アマネで、す。」
「アマネ?んー。漢字ではなさそうだな」
「当たり前でしょ、」
「なんでそんなプリプリしてんだよ、怖がっちゃうだろー」
この時春音は怒ってるのではなく、恐怖を覚えていたのだった。
「こんなカオスな状態でなんで平気なのさ。怖がっちゃうってどう見ても同い年くらいだろ、」
腰が抜けたのか動けなくなっていたアマネと名乗った少女を凛は抱き抱えて歩き出した。
「え、ちょっとあの、」
「まあそれもそっか!俺は天ヶ瀬凛!こっちは黒水春音!俺たちは君に何も害は与えないから、安心して!」
「勝手に僕も含まないで、まあ危害とかはくわえないけど、」
「大丈夫、はるは優しいもんな、それに、」
「え、あの、どうしたら帰れるのでしょうか?」
凛の話は恐怖からか全く聞いていないようだったが、凛への恐怖心は薄れているようだった。
また思ったよりも明るい感じの子だと春音は感じていた。それにMYUと言語は一緒なことにも驚いていたが春音はそれから思考を止めた。そんな春音をよそに凛は言葉を続けた。
「それはわっからんな、なんたってこの結界触れただけでも最悪死ぬからなあ。」
「あ!ブリエの人とかに相談したら何かわかるかも!じゃない、はる?」
溜息をつきながら春音は諭す。
「ブリエなんかに言ったら、僕達どうなるかと思う?」
「それは、どうなるんだ?」
ある程度歩き、結界から離れたところでアマネを止めた。凛はこの異常事態になんの危惧も感じていないようににこにことアマネに話しかけていた。
「そんなん、」
ブリエの人なんかに相談なんてしてこの少女を突き出したら、事情聴取。庇ったら最悪死刑。何が正解なのか春音には分からなかった。
「そーだ。とりあえずご、ごめんアマネ、ちょっとここに隠れてて、また来るから。入隊式行かなきゃ、」
「もうとっくにどうでもいいものかと思ってたよ」
「まあ若干忘れてたけど、行かないとさすがにまずいべ」
「でもアマネさん?はどうする」
「隠しとく。」
「ちょっと、まさか。こんなとこで力使ったら、怒られるどこじゃ、」
「バレなきゃいいって!よし!ふー。おらぁ!!!」
凛が目線を向けた物たちがミシミシと音を立てながら一斉に集まり、アマネを隠すようにひとつの箱に変形し、覆いかぶさった。
「あ、あの、これは一体?」
「ああ、ごめん気持ち悪いよね。でもちょっと待ってな。必ず帰ってくるから。」
「凛の力はほんと便利な能力だよね。」
「嫌味かー?まあいいや!なんかワクワクするな!」
「とにかく急ごう。そしてどうするか考えよ、」
「だな、ありがとうはる!」
「な、なにが?」
「いっつも俺のこういうの?を手助けしてくれて、」
「大丈夫だよ、そういう約束だし、僕がそうしたいと思ったから。」
凛が救ってくれて生かしてくれている命。だから春音にとって凛のために命を使うのは当然だった。凛が何をしても助ける覚悟はあった。
「というかさ、凛はどうしてあげたいの?」
「俺、俺は助けてあげたい。ただツノが生えてるか生えてないかの差だけなのに捕まるとかなんか嫌だ!俺の直感がダメだって言ってる」
「ツノだけじゃないとは思うけど。僕はどうであれ凛に従うから。でも僕たちの命をかけるってことになるよ?」
いつにもなく真剣な表情で聞く春音だったが、凛もいつにもなく真剣だった。
「合点承知之助だ!命をかけないでやってることなんて一個もないよ!」
「はは。凛らしいや。」
「でもその、これから多くの人に見られると思うんだけどさ、はる大丈夫?」
「わからない。」
全速力で走りながらも2人ともその目は覚悟を決めたようにこれから起こるかもしれないことを見据えていた。春音は自分が言わなくては交渉はできないことは知っていた。しかしそんな心配を他所に、凛もまた自分がすることを見据えた。
「すいません!遅れました!緊急事態なので、ブリエの誰かお話を聞いてください!!」
聞いた途端、凛はこういうやつだったことを思い出した。そんな所に救われてきたことは事実だったが、今そんなことをされると困ったことしか起こらない。
しばらくの沈黙と痛い視線の後、司会と思われる男性が開口した。
「誰ですか?君たちは?」
「超能力戦隊Pomeに入隊予定、64期天ヶ瀬凛です、緊急のため御無礼お許しください。」
「お、おなじ、く黒水春音です、」
「なんなんだ!お前たちは!!遅刻した上に緊急だと?無礼者!」
周りの視線はさらに鋭くなり、同期のみんなからも睨みつけられていた。突然何かを言いながら式に乱入したのだから無理もなかった。この視線を春音は少し懐かしく感じた。
「まあまあ、ブリエをお探しなんでしょ?じゃあ俺が話聞くっきゃいけないっしょ!」
突拍子もない話に突拍子もなく首を突っ込んできたのは髪の毛の半分が黒髪というあまりにも変わった髪色で、そして強そうな感じの男だった。
「そうは言っても、あなたにそんなことさせる訳には」
彼は周りになにやら言われながらこちらに向かってきた。
「俺は別にですよ、とりあえず式の邪魔になるので、移動しますね。皆様力を使うのをどうか許可してください。」
「よし、君たち、俺に触っててね。サモン解除。6.2.8ホワイトフォルス、」
時計を回したらしかった。超能力をこんなところで使ったら、
「うわあ!」
「なにこれやべえ!」
「…よっと。よしこれで誰もいない、さぁさぁ座れ座れ!」
気がついたら、不思議な部屋に移動しており、ここにいるのは凛と春音と彼だけだった。
「えっとあの、どうして僕達は謎の部屋にいるのでしょうか。」
彼はコーヒーのようなものを用意しながら2人が座っているいすへ腰をかけた。
「それは俺の超能力のワープを使ったから!この時計は超能力を抑える時計。君たちももうすぐ貰うと思うけど。」
数字が周りに付いていて真ん中には何も書いていない不思議な時計だった。
「すっげ!!!すごい超能力ですね、羨ましいです!」
「ほんとに?ありがとう!」
見た目の感じよりもぽわぽわした人というのが春音の感想だった。
「それで?君たちはどうしたの?」
男はそわそわとした面持ちで凛へ質問した。
「それがですね、驚かないで聞いてください、」
「わかった!よし、こい!」
「なんとMYUと会ったんです」
「MYUと会ったって、なんだそんなことか!…ってえ?MYUって言った?」
「はい!ツノが生えた、女の子でMYU側から結界を通り抜けてこっちに来たので間違えないと思います!」
「結界を通り抜けた?MYUが?オリジン側に?あれ?オリジンってなんだっけ?頭が回ってショートしてまーす。」
突然ふざけたことを言い出したが、本当に顔にハテナと書いてあるような間抜けな顔をしていた。
「ちょっと、俺たち真剣なんです!」
「わかってる、俺も真剣だけど今頭にはてなが何個くらいあると思う?」
「10個くらいですか!」
「正解は25個!まあなんとなくだけど!」
「うわ、おしいー!」
向かい合った凛と彼は真面目な顔でクイズを始めた。
「あ、あの、真面目にいきましょう」
「ああごめんごめん、それでえーっと。その子は今どこにいるの?」
「俺の力で隠しました、連れてくるのはまずいかと思って。」
力を使ったことを隠すことはすっかり忘れてしまったのか、凛は悪びれる様子もなく言った。
「なるほど、まあ場所教えてくれたらワープできるからいいんだけど。」
そのまま会話が続いたため春音はどちらもバカでよかったとほっと胸をなでおろした。
「あ、あの、私ならここに」
「え?」
突然部屋の扉が開き、入ってきた少女は間違えなく先程助けた少女だった。アマネは凛達が座っている椅子の方へ震えた様子で歩き出し凛の手前で止まった。




