No.1 次期魔王の使い魔来る(1)
半年間、我は独自的に自身を教育していった。
教育材料は城の書斎にあったものを使った。数多の書物を読みあさって知識をつけていくのが今の我のすべきことだった。
無意識に魔法が使える我だったが、学を付ければもっと色んなことができると確信し、覚えていくのはとても楽しかった。
教育材料には物語等も含まれる。特に人間界の物語を読むので人間界の知識も取得していった。
しかし一番面白い物語は母上が持ってくる物語だった、まるで我の思考を読むように丁度良い面白さの本を持ってきてくれるのだ。
勉学をするのはいつも書斎、遅くなりそうなときは自室まで持っていくが、運ぶのも、いちいち戻ってくるのも面倒なので書斎で勉強するようにした。
我は昨日、魔王たる父上より言われていたことがある。
「明日、お前に使い魔を授ける。既に一通り学習は済ませてある、好きに使え」
その為この日は早々に書斎から出て自室に戻った。
正直、わくわくの心境だ。我に使い魔が付くことは知っていたからどんな奴が来るのか、気になっていた。
◇◇◇
この日まで使い魔を遣わすのが遅れたのには理由がある。
3カ月ほど前の第48回目アスモダスの使い魔を決める会議の事だった。
「やはり他の者にアスモダス様を任せることは出来ませぬ、是非、私奴を使い魔として派遣してくださいませ!」
十傑衆ナンバー3、純血のヴァンパイアのシャスティル・ルグウィン。
つい百年前までは別の者、悪魔族の者がこの席に就いていたが色々あってこやつが出世した出世頭。
魔王である我に従順に使え、これまで数々の敵を屠り、時にはブレインとしてその知性を発揮してきた。
使い魔としての素質には問題は無いが・・・。
「貴様は十傑衆、更にはその頭脳を活かし毎日多忙にしている。無理に決まっておろう」
「十傑の者はやはりアスモダス様の使い魔には出来ないのでしょうか?」
十傑衆ナンバー6、デススライムのマ・アル。スライムの種族の中で珍しい固体化ができ、個体になれば話すこともできる、我等の中で一番死にづらく、壁役としての地位を築いた。
「アスモダスは次代の魔王、我はあやつの為、あやつが魔王となるまでにその土台を作る必要がある。それには貴様ら十傑が必要不可欠なのだ、その時には次代の十傑も同じくだ。貴様らには次代の十傑を生み出すことを一番に考えて欲しい」
「しかし、このままでは決まらず何年もかかってしまいます。なので、使い魔候補の自主性に任せるというのはいかがでしょう?」
十傑衆ナンバー4、ハーフエルフのエアリアル・ミシィ。
我の次に魔法を使いこなす白髪の女で、時にはその麗しさと美しさから敵を魅了し戦場に『白く咲くバラ』と詠われた。実は知性も一番あると買っていたのでアスモダスの教育役で一年程だけ就かせようとしていたが、アスモダスが教育役は不要というので結局やめにした奴だ。
「というと?」
「面接を行い、誰が一番アスモダス様へ忠誠を誓えるか試験するのです。誰が一番かは魔王様がお決めくだされば、誰も不満はないでしょう」
ほう・・・それであれば我の意見も挟めることができれば、一人一人を直に見ることが出来る。
この時、ミシェが言葉に含んだ『魔王様が決める』という部分からこの意見を反対するような者は出ずに、別の日に面接が行われた。
候補者は総勢五百を超えた。魔族に限らず、あらゆる種族の者達が魔王城へ赴き、それを採点するのに更なる時間が割かれたのだ。