すれ違い通信
目が覚めると、○男はとある大きな庭がある平屋のリビングのソファーで横になっていた。
『あれ、ここは?』
○男は見慣れない空間に一瞬困惑したが、直ぐにことの次第を思い出した。数年ぶりに地元に戻って来たこと、幼馴染みの△子の家に挨拶しに行き彼女が出迎えてくれたこと、緊張で会話が弾まなかったこと。そしていつの間にか寝ていたこと。外は真っ暗で家には○男と△子しかいなかった。
「○男くん、おはよう」
「おはよう」
「・・・」
「・・・」
目が覚めても相変わらずのコミュ障が炸裂し、会話を上手く繋げることができなかった○男は、微妙に行きたくなっていたトイレの場所を聞いた。
「トイレってどこにあるの?」
「そこから外に出て回って行った方が早いよ」
△子の説明によれば、掃き出し窓から庭に出て家の外周を回って行くらしい。△子の大雑把な説明に頭には?しか浮かばなかったが、久々に会った△子に良い顔をしたかった○男は、馬鹿に見られまいと深く追求せずに取り敢えずは行ってみることにした。今にも雨が降りそうな空模様だったので、『早く行って早く帰ろう』と思っていた。先述の道を通って家の敷地から出るとそこには高校の校舎が建っていた。家の外周を歩いたがどこにもトイレが見つからなかった。状況が理解出来なかったが、そのまま尿意を我慢して帰るのは恥ずかしいと思い学校のトイレを借りることにした。明かりは着いていたが、扉には鍵がかかっているため入ることが出来なかった。どうすることも出来なかった○男は、取り敢えず△子の家に戻ることにした。帰路に立ち、ふと学校の方を振り返ってみると窓越しに、透けた女の人の顔が現れた。驚愕した○男は急いで前を向き直した。するとそこには△子が立っていた。
「わあ!△子か・・・ 急いでここから離れよう!」
何故その場に△子が居たのか気にはなったが、帰りが遅くて心配して来てくれたのだろうと勝手に結論付けた。相当焦っていたため△子がどんな表情をしていたか確認が出来なかった。
△子の返事を聞く前に、遠くから唸り声が聞こえて来た。二人は硬直し、声のする方を見ていると街灯に照らされたそれの姿が見えた。その正体は全身黒づくめで背の高い男の人であり、まるでゾンビのような歩き方をしながら二人に向かって来ていた。途端そのゾンビ男は二人目掛けて走り出した。慌てた二人は走り出し必死に逃げた。○男は先導する△子に着いて行きながら、何度か後ろを確認したがゾンビ男は変わらず二人を追いかけてくる。走り続けるしかないと覚悟して必死に逃げた。するといつの間にか、○男が住んでいるマンションの前に着いた。○男は何も考えず中に入りエレベーターを確認すると上階で止まっていた。急いで階段へ向かい何度も転けそうになりながら、後ろから迫ってくるゾンビ男に捕まりそうになりながら○男の部屋がある10階を目指した。遂に到着し、鍵がかかっていない扉を開け急いで閉め鍵をした。扉の向こうからは音がしなかった。○男は隣にいる△子と見つめ合い全てを悟った。
△子は○男を見つめながら、
「○男くん、もう気付いてるよね」
「うん・・・」
「○男くん、お願い。もう私に会いに来ないでください」
「分かったよ」
○男は、泣きながら彼女の死を必死に受け止めた。
「ありがとう」
「△子、君のことがずっと好きでした」
○男は小さい頃から胸に秘めていた気持ちを口にした
「私もよ」
△子も泣きながらそう答えた。
「「さようなら」」
二人は強く抱き合いながらそう言った。
そして△子の姿は消えた。恐怖心を煽ることにより腐っていた自分の目を覚ましてくれたのだと○男は確信し感謝した。
後日談・・・
○男は、△子のお墓に線香をあげに行き手を合わせていると
「なんで会いに来たの?!」
と後ろから声が聞こえ、振り向くとそこには△子が泣きそうな顔をしながら立っていた。
またしても頭に?が浮かぶ○男
「言ったよね、もう来ないでって・・・」
「それって、目を覚ませってことじゃな・・・あ」
○男は△子の後ろにいる存在に身が固まり声が出なくなった。そこにはあの時のゾンビ男が大きく口を開けて奇妙な笑みを浮かべて立っていた。○男はその日から行方不明になってしまった。
△子に何が起きていたのか。実は彼女の父親が、相当なお人好しで親友だと思っていた人に騙されて大きな借金を抱えてしまい、返済しようと必死に働いたが日に日に弱っていった。ついに精神崩壊してしまったある日、寝ていた妻と娘を窒息死させ彼もそのあと全身に灯油を浴びて火をつけ焼身自殺していたのだ。
○男はこの経緯を知らなかったのではなく、ショックにより記憶が飛び忘れてしまっていたのだ。
冒頭前・・・
そして、△子が亡くなってからずっと精神が病んでいた○男の体は、無意識に△子の家に向かっていた。
最後まで読んでいただきありがとうございました!初作品、初投稿です。コメント頂ければかなり喜びます。ネタの精製技術がないので、今回は以前見た夢を基に書きました。スラスラと書きたいように物語を書けるようになることが目先の目標です。これからも月に一本は上げていきたいなと思います。では!