プロローグ08:はじめの一歩
「キミィ!?だ、だ、大丈夫かい!?」
医師は大分動揺した声で、驚いた表情でこっちによってきた。
「だいじょうぶです…」
それに対していえた言葉は涙交じりの声だった。
立てなくはない、けどまだ結構痛くて立てない…。
女の人は…あきれた表情だけど、ほんのちょっとだけ興味があるような顔でこちらを見ていた。
少し時間がたつとほとんどの痛みは消えてもしかしたら立てるのかもしれない、そんな状態になった。
「大丈夫だったかい?」
「はい、もう大丈夫です…」
まだ涙はそんなに引かないけど、それでもまだよくなったほうだった。
そして医師はそんな言葉をかけながら手をさし伸ばしてくれた。
その手に、ほんの少しだけ暖かい、そんな手に引かれつつ上体を起こしていく。
…いま周りを見ても、ベットにつかまるにはベットが少し高いような気がするし、ほかの場所につかまるにしてもほとんどのものが高くてつかまれそうになかった。
「…ここにあるものはほとんど大きいものばっかりなんですね?」
「え…そう、かな…?…基本的に標準のサイズのものでそろえるようにしてたんだけどなぁ…」
…標準のサイズ?これがか?手を伸ばそうとしても届きそうにない窓枠、ベットに戻るのに踏み台一つは確実に必要なくらいの高いベット、これらが本当に標準なくらいなのか?
「まあ、私達からしてみればこれが標準サイズだろうな。」
女の人はそういった。…私達?
何か棘と隠し事がありそうな言葉だった。
身体は何とか平衡感覚だけは何とかなっていたおかげで、身体はすぐ立てた。
まだ医師に手を握ってもらってる状態だったけど、なんとなくだけど一歩踏み出せそうな気がした。
そして気がしていたそんなときにはすでに無意識に一歩を踏み出していた。
「あれ?もう歩けるのかい?」
しょうもない一歩だった。まるで誤差のような距離、普通の人だったらちょこっと動いたの?みたいな一歩だった。でもそれでも、小さいけど確かな一歩だった。