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lesson.2 笑顔は基本

「おっはよー!」

「放課後ですよ、玲奈先輩」

 勢い良くドアを開けるといつもの日常。5年生きれるかどうかの私にはそれだけでとても嬉しく感じてしまう

 部室の奥のパソコンを触る沙織先輩、2つ繋げた長机の奥で難しそうな本を読むるい先輩。なほちゃんはその隣に座って昨日買ったであろうCDを眺めている

「あれ、美玖ちゃんは?」

「バスケ部の助っ人です。『桜路おうじ高校との試合終わったらすぐ行くッス!』って言ってました」

「あはは、似てる似てる」

 そう言いながら涙先輩の正面に座る。普段はセイラが座ってるけど別に席が決まってるわけじゃないしまあいっか

「ところでセイラ先輩は?」

「もうすぐ来ると思うよ。今日の掃除でゴミ捨て担当だから」

 なんて言ってる間にセイラは来た。私の隣に座って、パソコンを閉じた沙織先輩が長机の狭い方の席に腰を下ろし、アイドル談義が始まる

「さて、今日は何について語ろうか」

 各自持ち寄ったアイドル誌を適当に並べつつ吟味する。

 ……ん?

「あれ?このプリンセスボックス、発売前じゃないか?」

「だよね!日付感覚狂ったかと思った」

「ああ、お姉ちゃんから貰ったのよ。自分の特集があるからって見本誌を出版社から頂いてたらしいわ」

「お姉ちゃん?」

「そうか、まほちゃんは知らなかったか。涙のお姉さんは『神ファイブ』の氷室明日香ひむろあすかだよ」

「ええっ!?」

『神ファイブ』とは。メンバーによる完全オーディション制のSTAR☆BLUE(スターブルー)が年に二度行っている人気投票のトップ5のことで、神ファイブに入るとメディア露出が優先される。

 そんな残酷で厳しいSTAR☆BLUEの神ファイブに入り、センターをずっと務めるっていうことから数多の地下アイドル達からは『バケモノ』と称されるのが花咲このは。涙先輩のお姉ちゃん、氷室明日香はそれに次ぐNo.2。明日香さんもとても凄い人だと思う

「じゃあテーマは決まったかな。涙の姉も所属する神ファイブだ」

「遅れましたッス!」

「みくちゃん!座って座って!神ファイブ談義始まるよ!」

「了解ッス」

「ねぇ美玖知ってた?涙先輩のお姉ちゃん、『神ファイブ』の氷室明日香さんなんだって」

「ええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

 運動部出身は発声方法が違うね



「まず、神ファイブに入る人は天才か否か」

 沙織先輩が机の上の百円均一で買ったようなホワイトボードに記す

「少なくとも、お姉ちゃんはそうじゃない。間違いなく努力家タイプよ」

「そうなんスか?」

「アイドルは可愛いだけで成立するような仕事じゃない。歌唱力とダンス力の両方が同時に求められるのは分かるわよね?」

「もちろんッス」

「当然センスを求められることもあるけどそれは変わらないよね」

 私がバイトしてる執事喫茶にも、デビューして間もない男性アイドルがいる。日々のレッスンがキツすぎて倒れそうだと話を聞いたことがある。つまり、センス以上に努力が必要ってことだ

「私の家、地下に小さなスタジオがあってね。オフの日や用事がない時はそこに篭ってる」

「そこでひとり練習してるんですね」

『バケモノ』花咲このはに勝ちたい、その一心でレッスンを積んでいるとするなら――

「努力の天才、だね」

「でもそれ以上にそれが普通なんだと思う。明日香さんみたいな例は少ないと思うけど」

 ドキュメンタリー番組はもちろん、漫画やアニメでも練習のシーンはほぼ欠かさず描かれていたけれど、血反吐を吐いてまで、というのは流石に見たことがない。まぁ表現の規制とかの絡みかもしれないけど

 そんな辛さを知ってるから、笑顔の奥の努力を知ってるからセイラの一言が信じられなかった

「……ねぇ、私達もアイドルやってみないか?」

『え?』

 一体何が始まるんです?

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